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斉藤博貴の“タイ鉄道写真紀行” 第2回

あえて鉄道より「背景」を大きく撮ろう

2007年10月17日 18時00分更新

文● 斉藤博貴

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「タイ国鉄列車撮影編」

~望遠レンズでタイ国鉄を背景にして人物を撮る!


 クルンテープ駅(バンコク中央駅)の北にあたるボーベー地区で撮影することにした。この撮影地を選んだのは、タイ国鉄の鉄道車両とタイの人々の日常生活を一緒に写すのに最適だからだ。今回の撮影で主役になるのはタイの人々で、鉄道車両はむしろ背景に近い扱いだ。たとえ、ピントが合わせられていたとしても、鉄道車両はあくまでオマケという意図で撮影してある。

線路を遊び場とする少女

ボーベー地区の線路を遊び場とする少女。バンコク都心では路地裏も車とバイクであふれる状態で、広場はゼネコンが何かを建設中だ。子供たちがレールの側に集まってくるのは、下町地区では、安全な(?)広い場所と言えば鉄道施設内くらいしかないという事情がある

ボーベー地区

お気に入り撮影地のボーベー地区。タイの人々の生活ぶりを取り込んだ鉄道写真を撮るには最適な場所だ。老舗デパートのマーブンクローン(MBK)から市バスで5分、歩いて20分。訪問の際は往来する鉄道車両に十分ご注意願いたい。もちろん、起こりうるあらゆるトラブルは自己責任でよろしく

 日本のJRでは鉄道施設内は絶対立ち入り禁止だが、南国のタイ国鉄ではその限りではない。そこは道であり、ゴミ捨て場であり、作業場であり、家族団らんを楽しむ庭でもある。線路間のスペースでは、軍鶏(しゃも)が飼育され、倉庫として利用され、当然のように子供も遊んでいる。なお、田舎に行けばトイレにもなるという事実はどうか秘密にしておいてほしい。

 この撮影地は、線路を囲う柵がないので鉄道車両に接触してしまうほどに近付ける(怖い!)。だから、ここでは敢えて望遠レンズを使用して、線路や鉄道車両から十分に離れて撮影したい。もちろん撮影者の安全のためなのだが、実は巨大な鉄道車両と相対的に小さい人間を無理なく同じフレームにまとめるに遠くから撮った方が有利という事情もある。

線路を歩く夫婦

【作例5】妊婦をいたわるように連れ添って歩く夫という美しい風景。「線路の枕木を渡り歩くなんて不安定なことはやめて、一般道を歩けば」というツッコミはなしだ。2人の背後からは車両入れ替え作業中の機関車が迫っている。撮影しながら得られるハラハラ感こそがタイらしさなのかも知れない(F4 1/200秒 ISO 200 AWB 実効焦点距離316mm)

 カメラの設定を終えると、優しい夫に支えられて線路伝いに歩く妊婦さんが視界に入った。しかし、同時に後方から客車を牽引した入れ替え用機関車が接近中であることに気付いた。この2人の幸せは、実は大ピンチにあるのではないのだろうか? と心配しながらシャッターを切った。

 日本の感覚では「あぶないなあ」と思うが、タイではそう考えるボクの方が非常識である。良い悪いではなく、この手の判断は「郷に入れば郷に従え」なので「こんなもんかな」と思うことにしている。

 タイにとっての鉄道は、日本人のそれと違ってとても生活に近い。彼らは年少のころから当り前のように鉄道と共存してきたという事情もあり、危険回避についてはわれわれには想像できないほどのスペシャリストなのだ。

タイの鉄道うんちく(2)

 タイ国鉄の車両の大きさはレール幅で計ってフレーミングできる。レールの幅は1mなので、車幅はレールの約2.2倍、車高は約3.1倍だ。これが分かっていれば、シャッタータイミングさえ間違えなければ確実に思い通りの写真が撮れる。

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