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斉藤博貴の“タイ鉄道写真紀行” 第2回

あえて鉄道より「背景」を大きく撮ろう

2007年10月17日 18時00分更新

文● 斉藤博貴

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望遠レンズなら、小さな被写体と背後の大きな物体を同じ大きさに描写できる


人間と対比することで通過していく機関車の大きさがよく分かる

【作例6】人間と対比することで通過していく機関車の大きさがよく分かる写真。あわてて移動するのではないかと予想してAFに切り替えて連写しながら見守ったが、赤ちゃんをあやす母親がまったく動かなかったのは予想外だった。もちろん、機関車にまったく動じなかった赤ちゃんにも!(シャッター速度優先AE 1/250秒 +1EV ISO 100 AWB 実効焦点距離294mm)

ディーゼルカーに驚く少女たち

【作例7】ディーゼルカーは機関車牽引列車よりも加速性がいい。接近するまでまったく気付かなかった女の子たちが驚く様子。鉄道車両に驚く人がいることに少し安心した(シャッター速度優先AE 1/400秒 ISO 400 AWB 実効焦点距離260mm)

線路を横断する女性

【作例8】車両限界ギリギリのところに闘鶏を入れた篭が置かれている。鳩は列車の警笛に驚いて飛び去るが、人間はその限りではない。携帯電話で話しながら3本の線路を横断する女性は、警笛のおかげで通話が聞き取りづらくなったことに不快感を示しているようだ(シャッター速度優先AE 1/250秒 +1EV ISO 200 AWB 実効焦点距離368mm)

 望遠ズームレンズの良いところは、「撮影位置(立ち位置)」と「焦点距離」の2つを変えることで背景の描写を積極的に変えられることだ。例えば、手前の小さな被写体と背後の大きな物体を同じ大きさに描写することもできる。

 カメラのファインダーをのぞいてみて、背景をより狭く撮りたいと思うなら、撮影位置から一歩退いてズームで焦点距離を長くする逆に背景をもう少し広く撮りたいなら、一歩前に出て焦点距離を短くするだけだ。これさえ知っていれば技術的に難しいことは何もない(ただし、立ち位置を何度も変更するのは疲れるけれど)。

 仮に前ページの【作例5】を標準ズームを使って撮ろうとすると大変だ。カメラに近い人物を同じ大きさで描写することは難しくないが、機関車はどう頑張っても一回り小さく描写されてしまう。少なくとも、夫婦のピンチという演出はあきらめた方がいいだろう。また、【作例8】では、携帯電話で通話中の女性を同じ大きさで撮ったなら、背景は機関車でいっぱいになってしまい、牽引する客車はフレームからはみ出てしまいほとんど写らなかっただろう。

資材を運搬する女性

列車が通過する横で、自前の車両を用意して資材を運搬する女性。聞くところによれば、これらの資材を使ってちょっと離れた場所に小屋を一つ建てるそうだ。雨風さえしのげれば家として成立する南国らしい話だ

 午後5時過ぎまで撮影をして帰ろうと歩いていると、ボクを呼び止める声がする。振り返ると「タオル落としたよ」とサンダルと短パンを履いたタイ紳士が笑顔で手ぬぐいを渡してくれた。タイ語でやり取りをしたためか、彼はボクが「ガイジン」であることに気付くことなく立ち去ったようだ。インドでもそうだが、どうしてローカル扱いしかしてくれないのだろう? 日本でも日本人にガイジンと間違われる自分にはちょっとだけ不安を感じている。

 最後に、何の役にも立たない鉄道タイ語講座。タイ語で急行列車は「ロット・デュワン」、特急列車は「ロット・デュワン・ピセート」。


著者近影 斉藤さん

筆者紹介─斉藤博貴(さいとう ひろたか)


執筆から編集までこなす鉄道系カメラマン。タイとカンボジアの鉄道を調査するために1996年より約5年間バンコクに滞在した。特技は英語とタイ語で、ライフワークは海外鉄道の撮影。最近では世界遺産として登録されたインドの「ダージリン・ヒマラヤン鉄道」と「ニルギリ登山鉄道」に通うようになった。著書に「技術のしくみからデザインまですべて分かる鉄道 (雑学を超えた教養シリーズ) 」(誠文堂新光社)がある。



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