望遠レンズなら、小さな被写体と背後の大きな物体を同じ大きさに描写できる
望遠ズームレンズの良いところは、「撮影位置(立ち位置)」と「焦点距離」の2つを変えることで背景の描写を積極的に変えられることだ。例えば、手前の小さな被写体と背後の大きな物体を同じ大きさに描写することもできる。
カメラのファインダーをのぞいてみて、背景をより狭く撮りたいと思うなら、撮影位置から一歩退いてズームで焦点距離を長くする。逆に背景をもう少し広く撮りたいなら、一歩前に出て焦点距離を短くするだけだ。これさえ知っていれば技術的に難しいことは何もない(ただし、立ち位置を何度も変更するのは疲れるけれど)。
仮に前ページの【作例5】を標準ズームを使って撮ろうとすると大変だ。カメラに近い人物を同じ大きさで描写することは難しくないが、機関車はどう頑張っても一回り小さく描写されてしまう。少なくとも、夫婦のピンチという演出はあきらめた方がいいだろう。また、【作例8】では、携帯電話で通話中の女性を同じ大きさで撮ったなら、背景は機関車でいっぱいになってしまい、牽引する客車はフレームからはみ出てしまいほとんど写らなかっただろう。
午後5時過ぎまで撮影をして帰ろうと歩いていると、ボクを呼び止める声がする。振り返ると「タオル落としたよ」とサンダルと短パンを履いたタイ紳士が笑顔で手ぬぐいを渡してくれた。タイ語でやり取りをしたためか、彼はボクが「ガイジン」であることに気付くことなく立ち去ったようだ。インドでもそうだが、どうしてローカル扱いしかしてくれないのだろう? 日本でも日本人にガイジンと間違われる自分にはちょっとだけ不安を感じている。
最後に、何の役にも立たない鉄道タイ語講座。タイ語で急行列車は「ロット・デュワン」、特急列車は「ロット・デュワン・ピセート」。
筆者紹介─斉藤博貴(さいとう ひろたか)
執筆から編集までこなす鉄道系カメラマン。タイとカンボジアの鉄道を調査するために1996年より約5年間バンコクに滞在した。特技は英語とタイ語で、ライフワークは海外鉄道の撮影。最近では世界遺産として登録されたインドの「ダージリン・ヒマラヤン鉄道」と「ニルギリ登山鉄道」に通うようになった。著書に「技術のしくみからデザインまですべて分かる鉄道 (雑学を超えた教養シリーズ) 」(誠文堂新光社)がある。
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