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独立すれば、キラリと光る SEのための起業塾 第6回

第6回 起業に必要な「発想力」を鍛える! “レモン”や“メガマック”の柔軟性を養おう

2007年07月24日 00時00分更新

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四則演算で発想法を考える

 さて、「発想力」は、四則演算で考えることができます。簡単に言うと「足す」「引く」「掛ける」「割る」の4つです。

 「美しいラッピング紙で包装して購買意欲をそそり、1個110円で売る」「アニバーサリー用としてメッセージカードを添えて書き込むサービスをし、1個110円で売る」は、「足す」発想です。これは既存の商品やサービスに何かを足していくという考え方です。たとえば「量を増やす」「時間を長くする」「人数を増やす」なども「足す」発想法です。

 それに対して、「1個100円のレモンに対して3杯のレモネードを作れると計算し、1杯50円で販売する」は、「割る」発想です。1つの商品を分割することによって、別の商品を生み出し、新たな価値創造を生み出す方法です。「割る」は数や量の増減ではなく、「1つのものの形を変容させることによって、異質なものを作り出す」ことを表します。分割、圧縮、凝縮、伸縮などがこの発想法です。  たとえば「ADJUST Prime Time(時間帯指定広告)」という考え方がありますが、これはオンラインショッピングが活発になる午後10時から深夜1時までの間に広告を掲載するやり方です。従来は24時間フルに広告を出すところを、時間を「凝縮」させて最大の効果を得られる時間帯だけに集中する、という方法です。これも「割る」発想の1つです。

 では「引く」とはどういう発想法でしょうか? これは既存の商品やサービスに何かを引いていくという考え方です。たとえば「量を減らす」「時間を短くする」「人数を減らす」など。たとえば最近、店舗数を飛躍的に伸ばしている10分1000円カットの美容室などは、従来のサービスとしてあった、洗髪や髭剃りなどを減らすことによって、時間とコストを大幅に削り、カットのみに特化させた「引く」発想法の典型的な例と言えるでしょう。

 また、「掛ける」とはどういうことでしょうか? これは2つ以上のものを融合させることによって、異質なものを作りあげることです。特に異質なもの同士を掛け合わせると、一種の化学反応を起こして、まったく新しい価値創造になることもあります。

 たとえば「イチゴ大福」というものは、従来の「大福の中にはアンコのみ」という常識を覆し、今まで考えも及ばなかった大福とフルーツを掛け合わせることによって、まったく新しい食感を生み出し、ユーザーの共感を呼んだヒット商品となりました。以来、「コーヒー大福」「トマト大福」など、掛け合わせ効果の類似商品が多く登場しました。

四則演算の組み合わせで効果を得る ITコンサルタント会社起業のエピソード

 また、「足す」「引く」「掛ける」「割る」だけではなく、たとえば「足して引く」「掛けて割る」などの組み合わせも考えられます。

 たとえば、私は2000年に大田区の異業種交流会のメンバーの女性起業家有志5名の出資を得て、株式会社イーテスという会社を興しました。

 この会社の事業目的は、「大田区およびその周辺地域の中小製造業並びに商店のIT化支援」としました。ITコンサルタント会社は全国的にも数多くある中で、ターゲットを大田区およびその周辺地域に絞ったのは「引く」発想です。なぜならば、中小製造業が集積する大田区に事業所を置いたため、「大田区モデル」としてIT化支援の実績を積むことが、全国的にもアピールする度合いが高いと判断し、あえて地域を限定したのです。さらには近隣地域への支援に限定したことによって、1日のうちに指導に回れる企業数を多くし、時間的なパフォーマンス向上も睨んでのことでした。

 また、アナログによる暗黙知の世界の典型と言われる「ものづくり」と対極にある「IT」を「掛ける」ことによって、中小製造業の経営課題の解決法を導き出すことができました。

 ここ最近、効果をあげているものの1つに、中小製造業のCMSサイトの構築サポートがあります。「CMS」(コンテンツ・マネジメント・システム)は、ホームページのテキストや画像、レイアウト情報などを一元的に保存・管理し、ホームページを構築したり編集したりできるものです。

特徴としては、

1.開発及び更新コストを削減できる
2.更新管理が簡単に行なえる
3.リアルタイムに情報更新ができる
4.検索エンジンにヒットしやすい

などの点が挙げられます。

 これを中小製造業に導入した結果、ホームページからの問い合わせが飛躍的に伸び、大幅な受注増につながった企業も現れました。このように「引いて掛ける」ことによって、効果を生み出すことに成功したのです。

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