年功序列社会が崩壊し、1円起業が恒常化した現在、「起業」という働き方への注目が高まっています。SEとして、会社に残るのも一つの道ですが、起業という選択肢もあるのです。では、どうすれば起業できるのか。起業したその先は何を目指していけばいいのか。本連載では、SEのための起業成功法について、考えていきます。
そもそも、なぜ事業計画書が必要なのか?
起業を実現化するとき、必要なものの1つに「事業計画書」があります。よく名前は耳にしますが、この事業計画書とは、一体何のために必要なのでしょうか? 改めて整理していきたいと思います。
■事業計画書を作成する目的
1.自分の構想を客観視する
2.自分の構想を再認識する
3.問題点と課題をはっきりさせる
4.取引先や協力機関など第3者へ事業内容を説明するため
5.金融機関や出資者など第3者へ資金調達を仰ぐときに必要な書類となる
上記のように事業計画書を作成することで、自分の事業の経営理念や内容を明確にします。そしてこの事業計画書よって自分自身を納得させるだけでなく、第3者も納得させなくてはならないという目的があるのです。
書類作成までのウォーミングアップ 資金調達計画に潜む盲点とは
さて、事業計画書を作成する準備として、まずは事業の目的や役割、意義などを精査しておく必要があります。
実際に事業計画書を作成するまでの考え方を以下に紹介します。
■事業計画書作成に至るまでの考え方
1.事業のビジョンの確認
まずは事業の「6W2H」を確認します。
・Why(目的)……何のためにその事業を行なうのか、狙いはどこにあるのか
なぜその事業をやる必要性があるのか、必要としている人がいるのかを考える
・What(商品・サービス)……自分の事業でコアになる商品・サービスは何か
自分が手がけようとする商品やサービスが、対象としている顧客の購入動機を揺り動かせるものなのかをリサーチする
・Where(対象場所)……商品やサービスをどのような市場で売るのか
市場規模をリサーチした結果、商品やサービスが、どのくらい割合を占めることができるのか、市場シェアの分析
・Whom(市場・顧客体制) ……対象となる市場での顧客はどこか
性別、年齢層、ライフステージといった属性を明らかにし、顧客層を絞り込む
・How to(実現手段)……今後参入していきたい市場や顧客に商品やサービスを提供するときに、どうやって優位性や独自性を発揮するのか
競合先はどこか、競合先の強みと弱みは何か、競合先に勝つためにはどうすべきか
・When(実現時期)……開業スタート時期や資金や人材の投入時期
市場の将来的な動向や現状を分析しつつ、どの時期に事業をスタートするのかや、人材と資金を投入すべきかタイミングを図る
・Who(経営主体)……経営責任は誰が持つのか(誰がやるのか。誰とやるのか)
1人でやるのか、共同経営かなどを決める。またはパートナーとなるのはどんな能力を持った人材が必要かまで考える
・How Much(必要費用)……資金計画、資金調達法はどうすべきか
起業前、起業後、操業には、どのくらいの資金が必要になるのか
2.事業ドメインの確認から市場調査へ
今後始めようとする事業ドメイン(領域)を確認し、市場調査をします。ここでの市場調査とは市場規模の現状、将来性、競合先の存在、周囲の環境等のことを調査することです。
調査の方法にはいろいろありますが、
- アンケート調査
- 対象顧客層への面接調査
- SNSやBlogなどを使って口コミ調査
- 各種経済誌や経済関係のサイト、株価の動向などで同業他社の業績や将来展望を調査する
などが考えられます。
3.事業ビジョンの再確認をする
市場調査の結果をもとに、それまでの事業のビジョンを再度見直してみましょう。
事業ドメインを設定した市場がガリバー企業の寡占状態なのか、それとも市場の中に同規模の企業が乱立しているのか、また参入企業がほとんどいないのかによって、今後の戦略が変わってきます。
またこの段階では、自分の事業ビジョンをある程度信用できる人に見せ、意見をもらっていくのもよいでしょう。
4.資金調達計画を作成する
これまでの調査結果、経営方針、市場規模等をもとに、必要な「開業資金」をどう調達していくかをまずは考えます。ここで注意したい点は、開業資金が集まったらそれで終わりではないということです。なぜなら開業資金はいずれは底をつくもの。継続させるための「運転資金」をその後どうするかも考えなければなりません。
また、起業したらそこから約3年間は“利益が出ないというのが当たり前”ということも考慮しておくとよいでしょう。ちなみに私の会社も創業時の1990年の初年度は黒字、その後バブル崩壊を迎え、3年間は赤字が続きました。その間に銀行の融資を得て運転資金を調達し、乗り切ることができたのです。
そして、ここがポイントなのですが、金融機関と上手に付き合うノウハウも体得する必要があります。
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