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独立すれば、キラリと光る SEのための起業塾 第3回

第3回 新会社法施行後の新発想 独立形態の選択は、起業の成否を分ける

2007年06月05日 00時00分更新

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独立すれば、キラリと光る SEのための起業塾

年功序列社会が崩壊し、1円起業が恒常化した現在、「起業」という働き方への注目が高まっています。SEとして、会社に残るのも一つの道ですが、起業という選択肢もあるのです。では、どうすれば起業できるのか。起業したその先は何を目指していけばいいのか。本連載では、SEのための起業成功法について、考えていきます。


どの独立形態を選択するか?

 起業を目指す場合、独立形態を選択する必要があります。自分は個人事業で起業するのか、それとも法人にするのか。2006年5月に新会社法が施行されてからは、有限会社が株式会社へ一本化され、最低資本金も撤廃されるなど、起業を取り巻く環境がドラスティックに変わっていきました。今回は、それぞれの独立形態を比較説明していきます。じっくり自分にあった起業の方法を検討してみて下さい。

「個人事業」と「法人」の違い 個人事業のメリットとデメリット

 独立して事業を始めようと思った場合、会社という法人を作らなくても、個人事業でビジネスを行なうことも可能です。

 個人事業のメリットは、1つに「自分のスキルに見合った正当な評価で、年収アップが望める」ということや、「自身の考えるキャリアプランに合わせて仕事を選択できる」ということがあるでしょう。

 また、個人事業は、その設立の手続きが簡単です。法人設立に比べて登記の必要もないため、起業における時間とコストがかかりません。さらに、帳簿付けなどの会計管理も、法人に比べるとずっとシンプルです。

 しかし、個人事業にはデメリットもあります。たとえば、税金に関していうと、個人事業は所得税として最高税率は合計37%までの「累進課税」となります。それに対して株式会社を立ち上げたときにかかる法人税は、その年間所得が800万円以下なら22%まです。また、800万を越える所得にはいくら高くても30%の「一定税率」となります。つまり、個人事業は利益が多くなると、それとともに税金も上がる制度ということです。ある程度の収益が見込めるようになれば、法人にすることが節税対策になる場合もあるのです。

 さらに、個人事業は「無限責任」です。無限責任とは、事業がうまくいかなくなったときに、負債の責任をすべて事業主個人が持つことを言います。つまり、会社が倒産した場合は私財を投げ打ってでも、借金の返済にあたらなくてはいけなくなるということなのです。一方、株式会社などの法人は「有限責任」であり、株主それぞれが出資金の範囲内で責任を負うという仕組みとなります。

  • 個人事業のメリット
  • ・年収……自分の能力次第でアップ
  • ・事業内容の選択……自由にできる
  • ・設立手続きや会計管理……設立の登記不要など簡単である
  • 個人事業のデメリット
  • ・税金……利益に応じて上がる
  • ・負債責任……すべて事業主個人が背負う無限責任

最初は個人事業でやったほうがいい? 独立形態の見極めは、起業成功へのキーポイント

 多くの人が「まず、個人事業でやってみて、順調にいったら法人化しよう」と考えるようです。確かに、SEの起業としてSOHO的な身の丈起業をするには、個人事業が向くとも言えますが、その前にもう少し具体的に個人事業のリスクを把握しておくとよいでしょう。

 個人事業のリスクとしてまずあるのが、株式会社のような会社組織にしておかないと「取引・融資・投資・人材」という事業継続上の大変重要な要素を得ることが難しくなる点です。そうなると、最初に考えていた「順調にいく」ことそのものが困難となります。

 個人事業では、大きく分けると下記の4つの事業継続上のリスクがあります。

1.個人事業では、法人との取引が難しい
2.個人事業では、投資をしてもらうことが難しい
3.個人事業では、金融機関の融資が得にくい
4.個人事業では、良い人材が集まりにくい

 まず、1つ目。個人事業だと、なぜ法人との取引が難しいのでしょうか?

 たとえば株式会社などの法人には、債権者(会社と取引をする人)への保護が規定されています。会社が解散して会社財産を分配するときには、まず債権者が配分を受け、その後、残余財産を社員で分配するというルールがあるのです。要は、会社解散前に社員に対して財産を流出させ、社員を債権者よりも事実上優先させてしまうようなことを防止するのです(会社法781条2項、779条 参考:法務省民事局「会社法」の概要)。

 しかし、個人事業にはこのような規定がありません。つまり、個人事業主と取引する法人にしてみれば、「自分の会社への支払は、大丈夫だろうか」と心配しなくてはならなくなるのです。法規定の明文化の「ある」「なし」は、法人にとって取引上大きな意味を持つことになり、個人事業とそもそも取引をしない法人も多くあるのが現実なのです。

 次いで2つ目。個人事業には、そもそも「出資(注1)」という概念がありません。ノウハウやアイデアがあっても他の人に投資をしてもらうことが難しいのです。

 3つ目。一般的に銀行は、法人でないとなかなか融資(注2)をしてくれないというのが現状です(個人事業に融資をする機関として、国民生活金融公庫などもありますが)。

 最後に4つ目。個人事業は原則的に、1人ないし少人数で行なうため、良い人材(戦力)が集まりにくいと言えます。

 このように、個人事業にはリスクがあります。しかし、これらのリスクがあっても支障がでないのが、自分の力でできる範囲の仕事ができるマイクロビジネス(=SOHO)ともいえるのです。

 一方、いわゆる“起業家”を目指し、多少なりとも事業を拡大していきたいと考えるのであれば、資金集めが難しいなどの個人事業ではなく、法人化する必要があります。

 要は、個人事業にも、株式会社などの法人という形態にも、一長一短の特徴があるということです。まず、そこを見極めてください。

注1:出資
出資とは、事業のために必要なお金を提供すること。会社を作るときは、まず発起人が必要であり、発起人は1人以上であれば何人でも構わないません。会社の基本財産である出資金は、発起人各自が最低1株以上を引き受けることになっています。この出資金の合計が会社設立時の資金いわゆる資本金となります。“出資してもらう”ということは、株主になってもらうことであり、資金提供者が株主として経営に口出しする権利があります。
注2:融資とは
融資とは、銀行などの金融機関が利息を得る目的で、会社などに資金を貸し出すことを言います。融資を受けた側は、それを資金として業務を行ない、営利活動から出た利益の一部を利子として支払います。融資とはつまり借金のことですが、出資とちがい経営に関して口出しされることはありません。

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