社歴もない、信用もない、ではどうしたら? 銀行より敷居の低い、資金調達先とは
資金調達というと、すぐに「銀行」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? ところが、創業時は「経営実績」という判断材料がないため、銀行での資金調達はハードルが高いというのが実情なので、今回は割愛します。
創業時、比較的借りやすいのが政府系の金融機関です。たとえば国民生活金融公庫は、全国に152の店舗があり、数十万円から数千万円の幅で、新規開業希望者へ融資を行なっています。「新創業融資制度」では、無担保・無保証人で基準利率1.2%、1000万円を限度に融資が受けることができます。起業を目指す人はぜひチェックしたい情報です。
また、他の政府系金融機関としては、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫などもあります。
紆余曲折の資金調達エピソード! 地方自治体が斡旋する指定金融機関から借りる
各都道府県で行なっている中小企業向けの融資は、自治体・民間の指定金融機関・信用保証協会の三者が連携して行なっています。スタートアップ時や起業して間もないころには考えてみたい融資制度です。
信用保証協会は、各都道府県に設置されている政府系の機関で、融資を希望する中小企業の保証人になります。もちろん申し込めばすぐに保証してくれるわけではなく、経営者の人間性、融資額の使途、返済能力などが審査の対象になります。通常は取引先となる銀行へ相談すると信用保証協会へ取り次いでくれることが多いようです。 たとえば私が創業したときを振り返ると、スタート時は自己資金と父からの借入金で始め、それから3年後にこの制度を使って融資を受けました。事業所が東京都大田区だったため、区が行なっている「小規模企業特別事業資金融資制度」を活用させてもらいました。 というのは、これに先立って都市銀行をまわってみたものの、30代前半で女性経営者というのは当時ほとんどいなかったため、ときには「事務員さんですか?」と言われ、まったくといっていいほど相手にしてもらえなかったのです。
社歴もない、信用もない、ではどうしたらいいのか。考えあぐねていたとき、たまたま手に取った「大田区報」から“小規模企業向けの融資がある”という情報を得ました。そこでさっそく区役所の融資担当窓口に向かったのです。 融資担当窓口では思いのほか熱心に話を聞いてもらえ、決算書を繰って一言「これなら会社を続けても大丈夫ですよ」と伝えられました。まさに全身から力が抜けたのを覚えています。
その後は事業計画書などの必要な書類への記載(窓口で書き方の指導もしていただきました)と印鑑証明書、登記簿謄本、決算書、納税証明書などを提出し、区の指定金融機関を斡旋してもらいました。そして信用保証協会の保証人つきの融資を受けたのです。まさに藁をもつかむ思いで探し当てた情報のおかげで、会社の一命をとりとめることができました。必要な情報は、自らが強く求めていけば、絶対に手に入るものなのです。
賢く利用したい! 返済不要の○○金
補助金と助成金には明確な違いはありません。官公庁の会計上はどちらも「補助金」とされており、官公庁により行なわれる「事業名」として「○○助成金」と記載されることがあるようです。
通常、助成金は労働者の保護を主たる目的とするもので、厚生労働省の管轄に入ります。補助金は、産業振興を主たる目的とするもので、経済産業省管轄となるケースが多いようです。助成金・補助金が融資と大きく違うところは、「原則返済不要」ということです。
出資を受けるとは
融資は結局のところ、返さなくてはならない借金です。しかし出資は、投資したいというところからお金であり、つまり借金ではありません。ただし出資を受けることはリスクも伴います。たとえば株式会社の場合、ある程度成功が見えてきたときに、ほとんどの株は外部投資家が所有していて、創業者が追われるというシナリオも、ままあります。 ※連載第3回参照
つまり出資を受ける場合、「経営権の確保」ができるかどうかが大きなポイントになります。また出資してくれるところは、エンジェル(注2)やベンチャーキャピタル(注3)だけとは限らず、友人や知人でも構いません。
私も友人と共同経営しているITコンサルタント会社がありますが、この会社は大田区の女性起業家有志5名からの出資で作りました。もちろん事業計画書を作って事業ドメインや経営ポリシー、収支計画などを納得してもらった上で出資を仰ぎました。今のところ大きなトラブルにも見舞われず継続しています。
注2:エンジェル
創業間もないベンチャー企業に対して、資金提供や事業支援を行なう個人投資家のこと
注3:ベンチャーキャピタル
ベンチャー企業(未上場企業)などに投資を行なう企業やのそのための資金のこと。
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