月刊アスキー 2007年4月号掲載記事
ヒューレット・パッカード(HP)は1月、アジアンパシフィック地域のコンシューマPC における事業戦略発表を韓国にて行った。その冒頭で、同社のエイドリアン・コーシュ氏 はこう述べた。
「コンシューマにおけるPCの使われ方は、ここ数年でずいぶん変わった。(本日発表す る)新製品のコンセプトはHPが次のステップに進むことを示すもの。PCでこれまでにな かった体験をユーザーの手に届けることだろう」
その日、HPはスマートフォンやノートPC、デスクトップPC含む十機種以上のラインナップを発表。その中でも、目玉であるタッチパネル搭載の液晶一体型製品「HP TouchSmart PC」の説明に、多くの時間を費やした。
HPはこの機種でコンシューマPCのシェアを一気に拡大する目論見だ。秘密兵器は、独自に搭載されたアプリケーションにある。 一見すると、単なる付箋紙+カレンダーソフトのようだが、HPはタッチパネルでの操作を軸にインターフェイスを考え、誰もが簡単に使える製品に仕上げた。マイクロソフトと共同で、2年半かけてじっくりと開発したという。
多くのPCメーカーが、コンシューマ向けにテレビ映像やオーディオ性能を上げるためのハードウェアへ注力する一方、ソフトウェアを重視するHPの方針には理由があった。「現在のコンピュータが持つ性能を、日常生活に活かしたい」その結果、若者だけでなく幅広い年齢層のユーザーを獲得するというのが同社の狙いだ。その目標を達成するには、最新ハードウェア技術よりもインターフェイスの工夫で直感的に操作できるようにする、ソフトウェアの開発力が物を言う。
このソフトウェア重視の開発体制は、業界ではアップルが一足早く取り組んでおり、iPod という形で成功を収めている。HPもそれに続くことができるか、ひとつの試金石になりそうだ。