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おとなの社会科見学 Web版 第2回

企業における情報セキュリティ術を富士ゼロックスに学ぶ

2007年05月23日 00時00分更新

文● 山崎マキコ

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月刊アスキー 2007年4月号連動記事

富士ゼロックス新社屋

富士ゼロックス引越しの様子

新名所・東京ミッドタウンで
情報セキュリティを学ぶ

 どうもこんにちは、山崎です。今月は、あの東京ミッドタウンに富士ゼロックスがお引越しする現場にお邪魔してきましたよ。東京ミッドタウンってなんじゃいという方のために念のため説明を加えておけば、防衛庁の広大な跡地に出来た巨大なビル群です。東京にひとつ新しい街が出現って感じ。どえらいもんができたもんです。

 さて、お引越しといえばどさくさ、どさくさといえば泥棒、ってどういう連想だっていわれるかもしれないが、冗談ではない。かなり昔のことだけど、まだアスキーが南青山に本社があったころのほのぼのとした時代、ある日、バイトの男の子らしき人物が修羅場の編集部でせっせとマシンを外に運び出していた。社内の人間はみんな、

「お、若い子が頑張ってるなあ」

と、ほほえましく見ていたわけだが、なんとソイツは、修羅場のどさくさにつけこんだ、

「単なる泥棒」

 だったのが後日判明したという話があって。被害総額いくらだったか忘れたけど、当時はパソコンが高かったこともあってかなりの損害を受けてしまったという、実に間抜けな事件。

 そういうわけでわたしは、今回、大企業のお引越しということで、

「スキあらば」

 と狙っているヤツがどこかにいるんじゃないかと思ってた。よく考えると産業スパイをやるなら最高のどさくさなんだよね、お引越しって。まあ、産業スパイは映画の見過ぎだとしても、マシンの一台や二台は行方がわからなくなるとか、あるんじゃないかとにらんでましたさ。

 だってね、本社の人員を3回に分けて引っ越すっていうんですけど、最初の一回目で一気に約800人も引越しするんだよ? すなわち最低でも、

「パソコン800台分」

は運ばなくちゃならないって寸法ですよ。

 引越しで物がなくなるのは読者のみなさんも経験してると思うけど、これだけ大規模だとなにが起きても不思議じゃない。そんな修羅場。

 果たしてどんな模様だったのか? というあたりは本誌のほうで確認して欲しいんだけど、わたしが一連の作業を見学して痛感したのは、一流企業といわれるようなところはやっぱり情報セキュリティに対する取り組み方がまったく違いますねえ、ということ。

「会社の情報資産を社外に持ち出す際は、所定の手続きにより、事前に指揮命令者の承認を得ること」という社則があるというあたりからも、情報漏洩を防ぐ意識がものすごく高いことが伺えるのではないでしょうか。今回のお引越し手順も、「情報セキュリティ部」という専門部署が引っ越し業者と共に考案したものらしい。

 運び出しは本誌に書いた通りで、金曜日のうちに約800台のパソコンをすべて新社屋の講堂に搬入し、施錠。この段階で全体数のつじつまが合っているか確認済みなのはもちろんのこと、段ボールにバーコードが張られていて、一台一台を個々に識別してあるという念の入れよう。

 そして週明けの月曜、各部署の責任者が講堂に赴き、自分の部署のパソコンを10台ずつ確認して、引越しを取り仕切る業者さんとのあいだに授受簿を交わし、サイン。部署にパソコンが運び込まれ、各自の机にそれぞれのパソコンを届けたところで再度サイン。

 当然、確認やらサインやらで、作業員の業務量は完全に増加するんですわ。ぶっちゃけ時間や費用の面から見ると、ちょっとありえないほどの負担増。それでも、セキュリティを取る。 この徹底ぶりに、

「なるほど、これが一流企業か~」

と感嘆したのでした。

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