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ASCII Power Review 第205回

0.1mm精度で最高250mm/秒です

家庭用3Dプリンター「AnkerMake M5」実機レビュー = 高精度で高速で初心者にもおススメです!

2023年04月04日 10時00分更新

文● 写真 ジャイアン鈴木 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 アンカー・ジャパンは同社初の家庭用3Dプリンター「AnkerMake M5」を発売した。プリントの速さと品質の高さが最大の特徴で、一般的な家庭用3Dプリンターの約5倍の速度を実現し、0.1mm単位の高精度プリントが可能だ。

 記事執筆時点ではオンライン販路では在庫切れとなっているが、今後在庫は復活する予定とのこと。本記事では、セットアップ、印刷手順など使い方の解説から、速度、音量、品質などを検証するので、在庫復活を待ちつつ購入を検討いただければ幸いだ。

アンカー・ジャパン「AnkerMake M5」9万9990円

0.1mm精度なのにプリント時間を約75%短縮できる
高速3Dプリンターだ

 AnkerMake M5はFDM(熱溶解積層法)方式を採用した3Dプリンターだ。フィラメントは1.75mm径のPLA、TPU、ABS、PETGに対応。強力なモーターとダブルベルトによる「PowerBoostテクノロジー」により、50~250mm/秒のプリント速度を実現している。

 アンカーによれば、プリント速度50mm/秒の3Dプリンターと比較して、プリント時間を約75%短縮できるとのことだ。

 プリント精度はプラスマイナス0.1mm、プリントサイズは235×235×250mm。49ポイントで自動調整するオートレベリング機能が搭載されており、ノズルとヒートベッドの高さを手動で合わせることなく、ワンタッチで水平調整できる。

 アプリケーションはスマホ用(Android、iOS対応)と、Windows、Mac用が用意されている。対応形式はSTLとOBJだ。

 スマホ用アプリからは、本体の1080pのカメラで印刷中の様子をリアルタイムでチェックしたり、タイムラプス映像を撮影、記録可能。また「AI検知」機能により、底面の接着不良、モデルの接着不良、ノズル詰まりなどを即座に検知できる。なお4.3インチのタッチスクリーンが用意されており、直接の操作も可能だ。

 本体サイズは約50.2×43.8×47cm(フィラメントホルダーを除く)、重量は約12.6kg。詳しくはあとで触れるが、比較的シンプルな構造となっており、約15~20分ぐらいで組み立てられる。なお本製品はむき出しの構造となっているので、ホコリなどの付着を避けるために、未使用時には保護カバーなどをかぶせることをオススメする。

製品本体のフレームはアルミニウム合金製。サイズは約50.2×43.8×47cm、重量は約12.6kg

背面には電源スイッチと電源端子が用意

左側面。フレームはいかにも剛性が高そうだ

右側面に空いている穴にフィラメントをロードする

長さ17mmの専用ノズル(0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm)を採用。汎用ノズルは利用できない

約4.3インチのタッチスクリーンの左側にAI検知対応の1080pカメラが装備されている

タッチスクリーン上部にはUSB Type-C端子が用意されているが、マニュアルにはなんのためのものか記載がなかった

本体の組み立てが必要だが、15~20分で完了

 セットアップの流れは、本体の組み立て、スマホアプリのインストール、ヒートベッドのレベリング、フィラメントのセット、PCまたはMacへの「AnkerMakeスライサー」アプリのインストールとなる。

 かなり重量がある精密機器ということで、本体の組み立てについては、梱包材などを使用して、強い力を加えたり、衝撃を与えないように作業するように指示されている。

 とは言っても、注意すべきはプラットフォーム(土台)とフレームの取り付け時ぐらい。あとはネジ締めとケーブルの接続は迷うことはない。各パーツは精密に作られているので、はめ込みやネジ締めで異常な抵抗を感じることはなかった。筆者のように写真を撮影しながらでなければ、約15~20分で組み立ては完了するはずだ。

左上からプラットフォーム、フレーム、フィラメントホルダー、M5×18ネジ、M2.5×12ネジ、M4×12ネジ、電源ケーブル、フィラメント、工具入れ、説明書

ケースのなかには組み立てやメンテナンスに必要な工具が一通り入っている。しかし3Dプリンターに必須とも言える「スクレーパー」が含まれていない。他社製でよいので一緒に購入しておこう

マニュアルは10言語対応。もちろん日本語も含まれている

組み立ての最難関はプラットフォームとフレームの接続。フレームに無理な力がかからないように、梱包材を土台にして組み立てる。詳細はマニュアルを参照してほしい

組み立てはこれで完了。フィラメントホルダーは本体横に取り付けることも可能だ

 残りの作業は、言語設定、スマホアプリのインストール、オートレベリングの実行、フィラメントのロード、PCまたはMacへの「AnkerMakeスライサー」のインストールとなる。

 このなかで筆者がちょっと詰まったのがフィラメントのロード。フィラメントの先端を45度にカットして、少しずつ挿入する必要があるのだが、力加減がわからず何度も挑戦しなければならなかった。

 「エクストルーダー」に届くまでフィラメントを挿し込んだあと、レバーを押してからさらに挿入する必要があるのだが、このときの力加減が初回は難しいと思う。強く入れすぎて壊してしまったら元も子もない。少しずつ力を強めて、適切な挿入方法を覚えよう。

まず言語設定からスタート

プレートの清掃、適切な室温設定の説明が表示されたあと、アプリのインストールを促される

今回はスマホアプリ「AnkerMake」をiPhoneにインストールした。アプリを起動したら、アカウントの作成、サインインを済ませてから「デバイスを追加」を押して、AnkerMake M5を登録する

Bluetooth経由でAnkerMake M5と接続する。PINコードを入力してペアリングしたのち、Wi-Fi(2.4GHz帯)に接続し、最後にデバイスに名前を付ける

この画面が出たらスマホアプリのセットアップは完了

最後にPCまたはMacへ「AnkerMakeスライサー」アプリをインストールする。インストールプログラムは製品公式サイトから入手可能だ

PC、Mac用「AnkerMakeスライサー」でもサインインする必要がある。IDとパスワードを用意しておこう。これですべてのセットアップ作業は完了だ

「AnkerMakeスライサー」はUIがわかりやすくて楽しい

 AnkerMake M5での3Dプリントは基本的にPC、Mac用「AnkerMakeスライサー」を使って行なう。本製品単体でもプリント可能だが、細かな設定を快適にできるることを考えると、PC/Macを使ったほうが効率はいい。

 実際の印刷は、対応ファイル(STL、OBJ)の読み込み、スライス(3Dデータを3Dプリント用に変換)、プリント……という流れになる。異なるフィラメントを使ったり、パラメーターを変更しないのであれば、秒で作業は完了する。まだベータ版だがインターフェースはわかりやすかった。これから機能が充実していくのだろう。

今回はテスト用のデータを「Thinkverse」(https://www.thingiverse.com/)から入手した。「Popular All Time」でソートすると、人気の高い3Dプリンター用データを入手できる

「AnkerMakeスライサー」を起動後、「ファイル→開く」と進み、目的の3Dデータを選択する

3Dデータが開かれたら「スライス」を押す。特に設定は必要ない

これは3Dデータが3Dプリント用にスライス(変換)された状態。今度は「プリント」を押す

最後に使用するプリンターを選択して再度「プリント」を押すと、データがAnkerMake M5に送られて印刷がスタートする。あとはプリントが終了するのを待つだけだ

印刷が完了するとヒートベッドが前方に出てくる

印刷終了と同時にスマホに通知が表示される。ずっと3Dプリンターの前で待っている必要はない

AnkerMake M5に装備された1080pカメラで、リアルタイムにプリント状況をチェックできる。録画やスクリーンショットも撮影可能だ

印刷速度、音量、温度、品質を細かくチェック
高精度なのに高速で印刷してくれた

 まず印刷速度だが、「3DBenchy」(フィラメント12g)は実測49分36秒、「Cute Mini Octopus」(フィラメント22g)は1時間36分24秒、「Wireframe Skull Pencil Holder」(フィラメント12g)は2時間6分33秒、「Fully assembled 3D printable wrench」(フィラメント17g)は54分19秒となった。

 3Dプリンターのレビューはここでは初なので数値的な比較対象はないが、他社の3Dプリンターが動いている様子と比較すると、エクストルーダーの動きが明らかに速い。3Dプリンターを持っている方は、同じデータをプリントアウトしてぜひその速度を比較してみてほしい。

左手前が「3DBenchy」(フィラメント12g)、右手前が「Cute Mini Octopus」(22g)、左奥が「Wireframe Skull Pencil Holder」(12g)、右奥が「Fully assembled 3D printable wrench」(17g)。印刷時間はフィラメント量だけでなく、エクストルーダーの移動量にも大きく左右される

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