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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第160回

2022年、デジタル社会はどこまで進む? 政府が「重点計画」発表

2022年01月03日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 新しい年が明けた。2022年はどんな年になるだろうか。

 この連載のテーマ「規制とテクノロジー」関連では、2021年9月にデジタル庁がスタートしたのが、前の年の大きな動きだっただろう。

 2021年12月24日、政府が「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を公表した。

 政府が目指す「デジタル社会」の姿と、その実現に向けてどのような取り組みを進めていくかを示す報告書だ。

 報告書は、本編125ページ、付属資料も合わせると281ページで、幅広い分野をカバーする内容になっている。

 注目点をピックアップして紹介する。

6つの方針

 まず、政府が掲げるデジタル社会のあり方は、次のようなものだ。

 「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」

 行政や産業のデジタル化を進めるだけでなく、デジタル化によって個人の幸せな暮らしを実現しやすくなる。そんな姿を目指すと理解してよいだろうか。

 若干バラ色にすぎる印象も受けるが、こうした社会の姿を目指すうえで、以下の6つの方針に重点を置くという。

1. デジタル化による成長戦略
2. 医療・教育・防災・こども等の準公共分野のデジタル化
3. デジタル化による地域の活性化
4. 誰一人取り残されないデジタル社会
5. デジタル人材の育成・確保
6. DFFTの推進を始めとする国際戦略

 まず、説明が必要なのが、6番の「DFFT」だろう。言葉としては新しいものではない。

 データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(Data Free Flow with Trust、信頼ある自由なデータ流通)の頭文字を取った言葉で、2019年1月に当時の安倍晋三首相がダボス会議での演説で提唱した。

 共通のルールと信頼をベースに、国際的に自由にデータを流通させる枠組みをつくり、ビジネスや社会課題解決の促進につなげていこうという考え方だ。

政府が考える「暮らしのデジタル化」

 上記の6つの方針をベースに、次の6つの施策を進めていくというのが、報告書の立て付けだ。

1. 行政サービスのデジタル化
2. 暮らしのデジタル化
3. 規制改革
4. 産業のデジタル化
5. デジタル社会を支えるシステム・技術
6. デジタル社会のライフスタイル・人材

 2番目の「暮らしのデジタル化」は、民間企業が政府よりかなり先を走っている分野だと思われるが、政府は、生活と密接に関連していて、国の関与が大きい8分野を、「準公共分野」に指定。この8分野における、データの連携などを重点的に進めていく考えだ。

 準公共分野とされるのは以下の8分野だ。

1. 健康・医療・介護
2. 教育
3. 防災
4. こども
5. モビリティ
6. 農業・水産業・食関連産業
7. 港湾
8. インフラ

 8分野すべてに触れることは難しいため、例として「健康・医療・介護」のデジタル化を取り上げる。

 健康・医療・介護の分野は、高齢化の進展で、利用者側は引き続き増加が見込まれるものの、深刻な担い手不足が指摘されている。

 このため報告書は、デジタル化とデータの活用による、負担軽減が重要な課題だとする。

 個人の生活に関係が深い保健医療に関連して、マイナポータルを使って情報を閲覧できる仕組みの構築が進められている。

 学校や会社などでの健康診断の結果、手術などの医療情報が、2022年度以降、マイナポータル経由で閲覧ができるようになる。

 医療機関の間で個人の電子カルテを共有する仕組みについても、今後、2022年度までに結論を得るとする。

DX企業の認定制度

 この2年ほど、さまざまな場面でDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を目にするが、この報告書にも「産業全体のデジタルトランスフォーメーション」が登場する。

 企業の取り組みを後押しする施策として挙げられているのは、企業の認定制度だ。

 「DXの推進原則に適合した企業を認定」「優れたDXの取り組みを行う上場企業を選定」といった取り組みとともに、デジタル関連の投資に対する税制措置も打ち出している。

 厳しい国際競争にさらされている日本の大企業のDXは、「待ったなし」とまで言われているが、大企業のDXが進むことで、中小企業との格差が広がりそうだ。

 このため、「中小企業のデジタル化の支援」も盛り込んでいる。

 ホームページの活用、現場向けグループウェアの活用といった、デジタル化を支援していくという。

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