週替わりギークス 第186回
劇団ノーミーツ第二回公演「むこうのくに」技術監修が知る限りのことを書き記す:
7000人が観た「Zoom演劇」役者も裏方も会わない芝居のギークな舞台裏
2020年09月11日 12時00分更新
みなさんは、「劇団ノーミーツ」という一度も会わずにリモートで演劇を行なう団体をご存じだろうか。「劇団ノーミーツ」の第2回長編公演が(もちろんリモートで)7月23日(木・祝)〜7月26日(日)4日間行なわれた。さらには8月1日、2日の2日間で追加公演も行なわれた。
今回「劇団ノーミーツ」第二回長編公演「むこうのくに」に筆者が技術監修として関わった。約7000人が鑑賞した本公演について、筆者が知る限りのことを書き記していきたいと思う。
●リモート演劇とは
リモート演劇とは何か? 見たことがない人に伝えるのはとても難しい。
筆者は、落合陽一さんの「むこうのくに」鑑賞後の感想noteが的を射ているように感じる。
「ライブなのか? 映像なのか? それともジャズセッションなのか? わからなくなることの感じは心地が良い.(中略)舞台を見に行くあの感覚とはまるで違う.ただしnetflixで映像を見ているあの感覚ともまるで違う.確かにライブ感があるがライブ感は薄く,確かに映像感はあるが映像感は薄い.油断していると訳がわからなくなる.(中略)このなんだか言語化できないものを多く含むものを発見するときの喜びはなかなかのものだ」
技術的に説明すれば、演者はZoomを繋いでリアルタイムで演技をして、そのZoomの映像をOBS(Open Broadcaster Software)でリアルタイムに編集して特設サイトに流している、となる。
Zoomで演劇をしている話をすると、必ずと言っていいほどタイムラグの話題が出る。このリモート演劇においてのタイムラグについての演者の考え方は今回バトラー役を演じた鍜治本大樹さんのブログが興味深い。
「ラグはラグのまま受け入れてもいいんじゃないか、ということ。(中略)ラグがありながらコミュニケーションをとっている状態、そしてそれに戸惑うなら戸惑っている状態が、あくまでも生身の人間としての真実なわけで、それを完全になくしてしまうことは、ないんじゃないかと考え始めた」
今回はZoomに加えて、OBSのタイムラグも発生する。そのラグに対しての対応がすごいとしか言いようがない。「音ではなく、動きのリアクションでラグを吸収する。(中略)声で邪魔しないように、かつラグが空いていた時の、無駄な空白を少しでも自然な形で埋めるには、と考えて、相手役が喋っている間に、次のセリフをいう動機になりうるものを、少し早いタイミングで見つけて、それに対するリアクションを身体で取り始めるというもの」
台詞より身体の動きを先に出すことで、OBSで生じるラグを違和感なく見れるように演技してくださっていたのだ。役者さんってすげー……。
と、ここまで引用が長くなってしまった。ここからは、実際の技術監修としての裏側を記していきたいと思う。
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