実現すればエコかつ安全な発電装置に
晴天が恋しい季節になりました。僕らのお日様は、雲に隠れようが隠れまいが、いつでも地球に光とエネルギーを無償で届けてくれています。
莫大なエネルギーを放つ太陽、その生成方法は“核融合反応”です。核融合、つまり水素がヘリウムに変換される反応ですが、この反応で莫大なエネルギーが得られるのであれば、なんとなーく科学の力を使ってできそうです。無論、核融合反応の真逆である“核分裂反応”は既に“原子力発電”として、我々の生活にも利用されています。核を分ける技術があるのであれば、くっつけることもできそうなものです。
地球上での核融合、実はすでに実験や研究が始まっていて、その実用化のひとつである“核融合発電”は21世紀中ごろかも? と言われています。太陽のエネルギー生成と同じ方法をとることから、核融合発電は“地上の太陽”とも呼ばれています。
現在、世界的にはフランスにある『ITER(イーター)』と呼ばれる施設で、実用に向けての研究や実験が進められており、日本にも『JT-60SA』という実験装置が、今年の3月に茨城に完成しています。なお、このJT-60SAは後継機で、その前は“JT-60”という実験装置が1985年から2008年まで運用されていました。意外と30年以上も前から研究をしているんですね。
はてさて、地上に太陽と同じ仕組みを作るとなると、エネルギーの暴走や、核といえば切っても切り離せない“放射能や放射線”の心配がよぎります。現に、核分裂反応を伴う原子力発電では、反応の暴走による事故が史上たびたび起こり、使用済み核燃料の問題などがあります。同じ核の反応なら、同じような問題を抱えてしまうのでは……とよぎってしまいますが、なんとこの核融合発電、暴走の心配もなく、現在の原子力発電で出てしまうような、高レベルの放射性廃棄物があまり出ない、とされています。しかも、燃料には、水に含まれている“重水素”を使うことから、基本尽きることを気にせず使えます。これはざっと聞いただけでも、かなりエコで安全です。しかし、長い間色々試験的なことをやっているのなら、もうできてもおかしくなさそうですが……この核融合発電、利用するために“ある課題”が立ちふさがっているのです。
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