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Mr.ウォーカー玉置泰紀が厳選! おすすめスポット/アイテムベスト5 第34回

【決定版・日曜美術館50年展】大阪中之島美術館で見逃せない5つの至宝! 放送半世紀の歩みをたどる奇跡の美術体験

文●玉置泰紀(元角川アスキー総合研究所・エリアLOVEウォーカー総編集長、一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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【特別インタビュー(2)】鴻池朋子と語る、時代をつなぐ「皮緞帳」と美の系譜

鴻池朋子『皮緞帳』(2015年)。高橋龍太郎コレクション。600×2400cmの巨大な作品

 人間の営みと自然の猛威が交錯する、壮大なスケールの世界。

 第4章「災いと美」に出品されている鴻池朋子『皮緞帳』(2015年、高橋龍太郎コレクション蔵)は、高さ約6メートル、幅約24メートルにも及ぶ圧倒的な大作だ。牛革という生々しく、人間のコントロールを拒む素材を用い、傷や経年変化までをも作品の一部として取り込む。秋田の自然の中で育った鴻池が、震災を契機に出会ったこの素材は、単なる「画材」ではなく、生きた存在として画面に息づいている。

 絵画・彫刻・工芸といったジャンルの枠を軽やかに超え、地球規模の視点から「災い」と「美」を捉え直すこの作品は、日曜美術館50年の歴史のなかで、ジャンルの外にいた表現者たちをどう位置づけてきたかを象徴する存在でもある。大阪会場限定の特別展示として、その巨大な皮の壁の前に立ちながら、現代アーティスト・鴻池朋子氏と玉置泰紀による特別対談をお届けする。

玉置:今回は日曜美術館50周年展ということで、特に「災いと美」のセクションで、すごい作品が大阪に集まっていますね。この作品は大阪だけなんですよね。このテーマとこの作品の展示について、どんなふうに考えられていますか?

鴻池:今、大きな流れの中で見てみると、自分が生きている時代は、その人たちはその時代にしか見えていないんですけれども。こうして50年という時間を俯瞰して見ると、美術という少し限られた中で見ていくにしても、やっぱりバトンタッチしてつながっているんだなと思います。

 だから、戦争を知らない世代が何かをつくる、というのではなくて。先人たちの頑張った何かの痕跡をもとに、自分たちは知らず知らずその恩恵を受けながら、自由に楽しく暮らしつつ、そのときに起こる災いも噛み締めながら一緒に生きて制作をする、ということが、この大きな流れの中にはあると感じます。展覧会だからこそ、そういうことが結構見えてきましたね。

玉置:決して美術の体系ではつながっていなくても、ですね。

鴻池:そう、美術の体系ではつながっていなくても。大きな自然災害や地球環境といったものも含めて、もっと人間中心じゃなくて全部の地球の生き物として見れば結構ちゃんとつながっているし、これからも次の世代にバトンタッチしていかなきゃいけないと感じます。

 自分はそれぞれのタイミングでパッと感じて作っているんだけれども、やはりつながっている、つなげている感じがします。

玉置:鴻池さんの作品では、狼をはじめとする生き物がよく登場しますし、今回の素材も皮です。そういうアプローチや作品の質感に込められているものは、やはり大きいですよね。

鴻池:そうですね。もともと人間よりも、周りにいる野良犬や野良猫、それから秋田で育ったせいで自然環境が身近にあって、家の中の綺麗な色というよりは、自然の中で見るものすごくダイナミックで強烈な色が体の中に染み込んでいるんです。美術というよりは、自分が刺激を受けた「色」として作っている感じがあります。

 生き物、人間も含めて地球上の生き物としてつながっていく感覚が、私が育った環境の中では強かったのかもしれません。街というより山や里の景色が多い環境で育ったことで、もっと広く材料や素材と遊べる感覚が自然と身についていたと思います。

 画材屋さんに行って紙と鉛筆、絵の具とキャンバスを買うのではなく、「そこにあったらそれを使って描いてみよう」「これでこんな遊び方ができるんじゃないか」というふうになっていたのが、震災を期に少し息苦しくなったときに、逆にパッと出てきた感じですね。

 いろいろ試していく中で、牛革は気持ちいいな、と。昔から使われている素材ですし、描くとしっとりしているし、深い感じがあるし、傷がついているような生々しさもある。生身のような行ったり来たりがある感じが、怖いような気持ちいいような……それが次のシフトチェンジのために必要な材料だったような気がします。

 紙だと人間のコントロールが効きやすいんですけど、扱いにくい材料と出会ってやり取りしていると、一緒に遊んでいるような制作の感じがします。

玉置:少し変な質問かもしれませんが、日曜美術館50周年展ということで、実際に出演されたり取材を受けられたりする中で、日曜美術館ってどんな存在だと感じますか?

鴻池:やっぱり「美術という体系を守っていく」ような視点で作られてきたから、絵画・彫刻・工芸といったジャンルのセクショナリズムがどうしても出てきますよね。私たちのように、ある意味ジャンルの外にいたような人たち(写真もそうですけど)を、この50年の間にどう扱っていくのかが、かなり変化してきたと思います。

 そこが面白いところであり、変わるための、相互に変わっていくきっかけになるんじゃないかなと思います。メディアが美術体験の中に隠れていられなくなって、映像も出てくるし、アニメーションも出てくるし、漫画も出てくるし、手芸も出てくる。すべての生きる人や生き物が、生きるための喜びの活力となるようなものを扱っていかなきゃいけないとなると、大変だけど面白い、大きな一つのくくりになっていくんじゃないでしょうか。

 つまりそれは、観客がもはや人間だけではない、ということなんですよね。人間に向けてやってきた仕事が、それだけではいられなくなってきた。どうやったらいいのか私たちもわからないけど、それを今探っているのが、あと100年ぐらい続くんじゃないかなと思います。地球管理……みたいな。

 日曜美術館があと100年続いたら、どんな番組になっているんだろうと思いますね。「美」というのは、やっぱり人間特有の価値基準で世界を支配していくものだったわけですけど、それではもう立ち行かなくなってきたというのが、わかる感じがします。

玉置:ありがとうございます。久しぶりにお話を伺えて嬉しかったです。

鴻池朋子氏

⚫︎直接的な被災体験を描いたわけではない。それでも『皮緞帳』の前に立つと、人間が自然の猛威や社会の激変に対峙したとき、全身の感覚を総動員して世界を掴み取ろうとする表現の原点が、生々しく立ち現れる。牛革という素材が持つしっとりした深み、傷、ざらざらした感触、そして時間とともに変化していく「生きている」質感は、完成された絵画の表面を超えて、鑑賞者の身体感覚そのものに働きかけてくる。高さ約6メートル、幅約24メートルという圧倒的なスケールは、単なる大きさではなく、個人の視点を飲み込み、地球規模の時間と空間へと誘う装置だ。

 第4章「災いと美」のなかで、石内都の「ひろしま」シリーズやピカソの『ゲルニカ』高精細映像と並ぶことで、アートが歴史や災いとどう向き合い、次の世代へと何をバトンタッチしていくのかを、静かに、しかし力強く問いかけてくる。大阪会場限定のこの大作を、ぜひ空間そのものに身を置いて体感してほしい。なお、美術館2階パッサージュには鴻池朋子の「オオカミベンチ」も2027年1月5日まで設置されており、座ることで作品世界と身体的につながる体験も可能だ。

美術館2階パッサージュには鴻池朋子の「オオカミベンチ」がある

音声ガイド情報とナビゲーターのプロフィール

 番組の司会を務めた俳優の檀ふみさんと井浦新さんがナビゲーターを担当し、古今東西の“美”の魅力をあますところなく伝えてくれる。
*写真は内覧会のための無料貸し出し中。

会場レンタル版:700円

アプリ版:800円 ※展示替えを含めた全ガイドを収録予定

檀ふみ(2006年4月 - 2009年3月まで司会を担当)

プロフィール:東京都出身。作家の檀一雄を父に持つ。高校在学中に俳優としてデビュー。映画やドラマなど数多くの作品に出演。エッセイも好評で、『ああ言えばこう食う』(阿川佐和子との共著)で講談社エッセイ賞を受賞。NHKの名物クイズ番組だった『連想ゲーム』の名解答者として長年脚光を浴び、『N響アワー』『新日曜美術館』などの司会も務めた。大河ドラマ『春の波濤』、『花の乱』、『花燃ゆ』にも出演。また、『日めくり万葉集』の語りや連続テレビ小説『とと姉ちゃん』のナレーションでも高く評価された。そのほか出演作に、ドラマスペシャル『日本の面影』、BS日曜ドラマ『藏』、アメリカKCETとNHKとの共同制作ドラマ『エドとハル』(邦題)などがある。

井浦新(2013年4月 - 2018年3月まで司会を担当)

プロフィール:1974年生まれ、東京都出身。98年に映画『ワンダフルライフ』に初主演。『かぞくのくに』でブルーリボン賞助演男優賞を受賞。映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活躍。主な出演作に、映画『福田村事件』、『東京カウボーイ』、『徒花-ADABANA-』、『岸辺露伴は動かない 懺悔室』など。NHKは大河ドラマ『平清盛』、スペシャルドラマ『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す〜』、連続テレビ小説『なつぞら』などに出演。Eテレ『日曜美術館』の司会も務めた。2024年大河ドラマ『光る君へ』では、藤原道長の長兄・藤原道隆を演じた。

展覧会オリジナルグッズ・イベント

 大阪展の会場では、作品の魅力を身近に楽しめる多彩なオリジナルグッズが展開されている。石田徹也『飛べなくなった人』のマスコットキーチェーン(3,080円)などが販売されるほか、手ぬぐい(2200円)や全312ページの公式図録(3300円)も用意されている。

開催概要

展覧会名:NHK日曜美術館50年展

会期:2026年10月10日(土)〜12月20日(日) ※会期中、一部作品の展示替えがある。

休館日:月曜日、10月13日(火)、11月24日(火) ※10月12日(月・祝)、11月23日(月・祝)は開館。

開場時間:10:00〜17:00(入場は16:30まで)

会場:大阪中之島美術館 5階展示室

観覧料:

一般:2000円(団体1800円)

高大生:1200円(団体1000円)

小中生:500円(団体300円)

公式サイトhttps://nichibiten50.jp/

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