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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第133回

【JSTnews10月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業さきがけ 研究課題「脳半球の対称性を崩す多感覚受容」/創発的研究支援事業 研究課題「シナプス構築から探る大脳新皮質の構造原理」

利き手を切り替える脳の仕組み、脳内スイッチの正体を解明

2026年10月26日 12時00分更新

文● 中條将典

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 ヒトは右利きと左利きに分かれており、利き手は左右の脳の機能的な差を反映していると考えられています。左利きを右利きに矯正する慣習は歴史的・文化的に広く見られましたが、利き手が切り替わる際に脳内でどのようなメカニズムが働くのかは、十分に解明されていませんでした。

 新潟大学脳研究所の岡本和樹講師と順天堂大学大学院医学研究科の日置寛之教授らの研究チームは、マウスが隙間の先に置かれた餌を手で取る課題を用いて個体ごとの利き手を判定。マウスに利き手を切り替える訓練をさせながら、脳内で記憶・学習・覚醒などに関わる神経伝達物質であるアセチルコリンに着目して切り替えの仕組みを調べました。研究チームはまず、脳半球の左右それぞれで、特定の神経細胞を除去したり、光を用いて神経活動を操作したりして、訓練する手の反対側の脳半球へのアセチルコリンの作用が利き手の切り替えに必要であることを実証しました。次に、生体センサーによる測定で、脳半球におけるアセチルコリン量の変動に左右差があり、訓練する手の反対側で高くなることを発見。薬剤の作用で特定の神経細胞の活動を操作することにより、脳半球間におけるアセチルコリン活動の一時的な左右差が利き手の切り替えに重要であることを示しました。

 今回の成果は、利き手の切り替えを支える神経基盤の理解に新たな知見をもたらすものです。脳の左右差形成や運動学習の仕組みの解明のほか、利き手が使えなくなった患者の新たなリハビリ手法の開発にもつながる可能性があります。

(左)左利きのマウスを右利きに切り替えさせる際、訓練する側(右手)の反対側の脳半球の神経細胞を除去してアセチルコリンの作用を阻害すると切り替えが起こりにくくなる。(右)実験マウスにおける、訓練する手と同じ側(右脳)および反対側(左脳)の脳半球。μm(マイクロメートル)は100万分の1m。

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