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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第131回

【JSTnews10月号掲載】NEWS&TOPICS 創発的研究支援事業 研究課題「人類最後の共通祖先からサピエンスへの進化史」

ネアンデルタール人と現生人類、貝殻の化石が明かす交流の真実

2026年10月22日 13時40分更新

文● 中條将典

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 現生人類ホモ・サピエンス(サピエンス)は約20万年前にアフリカで誕生しました。サピエンスの進化を考える上では、ユーラシアに生息して約4万年前に絶滅した、最も近縁な人類種であるネアンデルタール人の存在は欠かせません。DNAの分析から、ネアンデルタール人とサピエンスは交雑し、子孫を残していたことがわかっていますが、どのようにこの交雑がもたらされたのか、具体的な行動は謎とされています。

 京都大学大学院理学研究科の森本直記准教授らの研究チームは、トルコ共和国のウチャーズリⅡ洞窟の発掘調査で、単一の遺跡からネアンデルタール人とサピエンスの化石を発見しました。年代測定と地質調査の結果、ネアンデルタール人は約7.7万~5.9万年前、サピエンスは約5.9万~4.7万年前のものであり、同時代に生活していた証拠が見つかったわけではありません。しかし、石器や食物の化石に混じって、サピエンスが装飾品としてよく用いていたことが知られている「アフリカタモト」という貝殻が、両方の堆積層から見つかりました。研究チームは、多種多様な自然物の中から、食用ではなく「役に立たないが美しい」貝殻を選択的に収集していたことは、種を超えた価値観の共有と、両者間の交流の可能性を示すものだとしています。

 この洞窟が位置する中東のレバントと呼ばれる地域は、約6万年前にサピエンスがアフリカからユーラシアに本格的に広がる際に通過した回廊地帯に当たります。この時代のサピエンスの化石記録は極めて乏しいため、今回の発見はその空白を埋めるものとして非常に重要です。

ウチャーズリⅡ洞窟でネアンデルタール人と同じ層から出土した貝殻の化石。非常に小さな貝に精密な加工が施されている。この貝はこれまで、装飾品としてサピエンスだけが用いると考えられていた。

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