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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第126回

【JSTnews9月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業ERATO 佐藤オルガノイドデザインプロジェクト

小腸がんにつながる新たな遺伝子変異を発見、診断・治療に期待

2026年09月28日 12時00分更新

文● 中條将典

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 がん患者全体の5年相対生存率が60%を超えるのに対し、全小腸がん患者では35%前後と不良です。小腸がんは前がん病変である小腸腺腫から発生すると考えられています。しかし、小腸腺腫の90%前後にAPC遺伝子変異が認められる一方で、小腸がんでは30%前後であり、APC遺伝子変異を伴わない小腸がんの成り立ちはほとんどわかっていませんでした。

 慶應義塾大学医学部の佐藤俊朗教授らの研究チームは、大部分の小腸腺腫は平坦な見た目をしているのに対し、一部の小腸腺腫は隆起型の形態をしていることに着目。次世代シーケンサーで隆起型腺腫3例のゲノム配列を分析しました。その結果、3例全てでAPC遺伝子には変異がないものの、COPA遺伝子に変異があることを発見しました。がんの典型的な発症機序は異常な細胞が除去されずに増殖することであり、これまで世界中で行われてきた研究の結果、典型的な「がん遺伝子」の多くは直接増殖を促すことが知られています。しかし、COPAは細胞内でたんぱく質を運ぶ分子であり、まったく異なる働きを持ちます。研究チームは、COPA遺伝子変異を正常な腸の培養組織に導入することで、腫瘍化につながることを実証。さらに、COPA遺伝子変異を持つ腫瘍の一部は小腸がんへ進行しやすいことや、COPA遺伝子変異腫瘍は特殊な増殖因子への依存性を示すことも発見しました。

 小腸の腺腫ががんに至る新たな経路を発見した今回の成果は、新しい診断法や治療法につながることが期待されます。また、COPA遺伝子変異を導入した小腸組織細胞は今後、さまざまな研究での利用が見込まれます。

APC遺伝子に変異がある平坦型小腸腺腫(左)と、APC遺伝子に変異がない隆起型小腸腺腫(右)の肉眼および病理形態の違い。

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