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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第132回

【JSTnews10月号掲載】NEWS&TOPICS 創発的研究支援事業 研究課題「テンソルネットワーク法と量子シミュレータで切り拓く新奇量子多体現象」

「異常トンネル効果」を実証! クラウド実験が開く新時代

2026年10月23日 12時00分更新

文● 中條将典

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 日常で目にする物体の運動では、物体が自身の持つエネルギーよりも高い障壁をすり抜けてしまうことはありません。しかし量子力学では、原子や電子などの粒子が障壁にぶつかる時、粒子のエネルギーが障壁より低くても障壁の向こう側へすり抜けて到達する「トンネル効果」という現象が一定の確率で起こります。ダイオードやフラッシュメモリーにも応用されるトンネル効果では、通常、粒子のエネルギーが低いほど障壁をすり抜けにくくなります。しかし、電気的に中性な原子気体を極低温まで冷やした「ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)」を伝わる音波では、音波のエネルギーがある値より小さくなると、逆に障壁をすり抜けやすくなる「異常トンネル効果」が起こることが20年前に予言されました。ですが、この現象はこれまで実験で観測されていませんでした。

 近畿大学理工学部の段下一平教授らの研究チームは、米企業が提供する最先端の物理実験装置のクラウドサービスを利用。BECをわずかに揺らすことで生じる振動モードのエネルギーが低いほど、最もエネルギーの近い振動モードのエネルギーと近づくのに必要な障壁が高くなること、つまり、より低いエネルギーを持つ振動モードほど障壁を感じにくいことを確認しました。間接的に、異常トンネル効果の影響を捉えたのです。

 異常トンネル効果は磁石などの物質でも起こると考えられており、そのような普遍的な効果の影響が実証されたことに本研究成果の意義があります。また、理論研究者がクラウドサービスを利用して自ら実験するという新たな研究スタイルを提示するものです。

赤い丸は第1振動モード、紫色の四角は第3振動モードの実験値。紫色のひし形は第1振動モードが、十字型は第3振動モードが最も近い固有振動モードの周波数の値と近づく目安の障壁の高さを示す。この2点を比べると、周波数の小さい第1振動モードの方がより高い障壁で最も近い周波数に近づくことがわかる

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