宇宙で巨大化する柔軟構造物技術 日本大学理工学部発スタートアップ「cosmobloom」
日本でも宇宙開発に対する期待が高まっている昨今、特に重要視されているのが独自の技術を持つスタートアップだ。中には世界をリードする技術、類を見ない知見を持つスタートアップも存在し、今後の活躍に大きな期待が寄せられている。
日本大学理工学部航空宇宙工学科を前身とする「cosmobloom」は、日本はもちろん、海外からも大きな注目を集めているスタートアップのひとつだ。
今後の宇宙開発で重要な柔軟構造物を研究
cosmobloomは2023年4月に設立されたスタートアップ。日本大学理工学部航空宇宙工学科 宮崎研究室(現JAXA宇宙構造物システム研究室)で行なわれていた研究を基に、柔軟構造物(ゴッサマー構造)の解析から設計、開発をしている。
柔軟構造物は、膜、フィルム、ケーブル、メッシュの布といった、名前のとおり柔らかな構造物のこと。柔軟であるだけでなく、軽くて小さく収納でき、さらに大きく展開できるといった特徴を持つ。
cosmobloomの福永桃子代表取締役CEOは、こうした柔軟構造物ならではの特徴が「宇宙開発では非常に重要な要素」だと話す。
「今後、宇宙開発を進める中で、居住モジュールや通信アンテナなど巨大な構造物を作ることになります。その場合、例にあげたような構造物を地球から打ち上げることになりますが、ロケットで打ち上げられるものの大きさや重さは限られているため、それらをできるだけ軽く、小さくすることが求められています。小さく軽量な柔軟構造物が注目されているのです」という。
例えば、巨大なシートでも、折りたたむことで小さくすることができ、再び宇宙空間で広げることで、巨大になる。軽い柔軟構造物を「折り紙工学」を組み合わせることで、宇宙で必要な材料を小さくして運ぶことが可能になる――ということだ。
世界で唯一のシミュレーションツールをコア技術に持つ
規模は小さいものの、柔軟構造物の宇宙開発での活用は海外でも研究が行われている。その中でもcosmobloomが世界中から注目を集めている要因が、柔軟構造物の数値解析、設計技術だ。
同社の数値解析、設計技術は、cosmobloomの共同創業者・CTOの宮崎康行氏が開発した数値解析のシミュレーションツール「NEDA」をコアとしている。
「NEDA」は2010年にJAXAが打ち上げ、世界で初めて惑星間航行に成功した小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の開発に活用された技術。NEDAを用いて柔軟構造物の数値解析を行うことで、地上にいながら「宇宙空間で正しく展開するのか」といったシミュレーションを高精度で行うことができる。
IKAROS運用時には、14m×14mの柔軟構造物を宇宙空間で広げること成功しており、現在でもこの数字は塗り替えられていない。福永CEOによると、こうした柔軟構造物について日本は世界のトップランナーだという。
宇宙ゴミ削減に寄与する「デオービット装置」
現在cosmobloomでは、NEDAを活用した解析サービスの提供のほか、「宇宙ごみ対策」にも取り組んでいる。
宇宙開発で問題視されているのが、使用されなくなり宇宙ゴミとなった人工衛星。地球の周囲には数えきれないほどの宇宙ゴミが漂っており、その回収や処理が求められている。そんな中、cosmobloomは使い終わった小型衛星を「宇宙ゴミにしない」というアプローチを行っている。
具体的には、衛星本体に巨大な膜を小さく折りたたんで収納した装置を備えておき、小型衛星の使用が終わった段階で、膜を大きく展開。膜を広げて大気抵抗を増やし、軌道高度を徐々に下げることで、大気圏に突入させて燃やして処理する――という仕組みだ。
この装置は「デオービット装置」と呼ばれており、特にヨーロッパを中心に大きな注目を集めている。このような装置を、超軽量、小型化することは技術的な問題で実現が難しかったが、cosmobloomにはそのパイオニアとして大きな期待が寄せられている。デオービット装置は実際に設計が完了しており、2026年中での実証実験が予定されている。
日本独自の衛星通信システムで日常をもっと楽しく
他にも、cosmobloomでは宇宙空間での太陽光発電システムや、衛星通信向けのアンテナの開発も視野に入れている。
福永CEOは「衛星通信システムはぜひ実現させたいです。例えばアメリカのスターリンクなどが有名ですが、日本独自の低軌道衛星コンステレーションによる通信網は未確立です。そこで、柔軟構造物を活用し、衛星通信が可能な巨大膜面アンテナを宇宙空間で展開すれば、より手軽にインターネットが楽しめる社会になるはずです」と話す。
衛星通信システムが確立すれば、普段のインターネットはもちろん、災害時など地上のインターネット基地局が使用できない状況や、地上での電波が届かない場所でも利用できる。
現代人にとって「どこでもネットができるようになる」ことは何よりも魅力的だといえる。加えて、宇宙空間での太陽光発電システムによって、「宇宙からエネルギーが供給できるよう」になることも、エネルギー不足の解消はもちろん、災害時にも役立つだろう。
「宇宙での柔軟構造物の展開技術」と聞くと、一般には縁がなさそうな技術に思えるが、「どこでもインターネットが楽しめるようになる」など、実は私たちの日常に大きく貢献する可能性を秘めている。
2026年中での実証実験が予定されているデオービット装置はもちろん、衛星通信システムや太陽光発電システムなど、cosmobloomの今後の取り組みに注目したい。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります



































