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【空気の錬金術】燃焼・冷却・浄化・シールドを生み出す「超高濃度ガス」精製技術

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

空気はただ吸うだけじゃない

 私たちが毎日吸っている空気。その中身は、酸素が約21%、窒素が78%、二酸化炭素がわずか0.04%ほど。というのは学校でも習うが、この酸素や窒素の割合を変えるだけで、燃焼効率が爆上がりしたり、モノを冷やす力が増したり、浄化や保存の効果を生み出せる。今回は、そんな“超高濃度ガス”を自在に生み出すフィルター技術に注目したい。

超高濃度ガスってなに?

 空気の成分を濃縮して「特化した気体」に変えると、すさまじいパワーを発揮する。例えば、酸素を多めにすれば燃焼の炎は一気に強力に。逆に窒素を多めにすれば、冷却効果が得られる。さらに、成分調整した空気は浄化や殺菌にも使えるし、特定の成分を減らした「シールド空気」で腐食や劣化を防ぐバリアにもなる。

 燃焼・冷却・浄化・シールド──なんだかファンタジーの魔法みたいだが、現実の工業・医療の現場で応用が始まっている。

秘密は「分離膜」にあり

 京大発スタートアップ、株式会社OOYOO(ウーユー)は、この超高濃度ガスを作り出す高性能な「ガス分離膜」を開発している。この膜は、酸素を通して窒素を通さない“窓”のように機能し、高速かつ省エネでガスを分離できるのが特徴だ。 酸素を濃縮した「酸素リッチ空気」も、窒素を濃縮した「窒素リッチ空気」も自在に取り出せる。

 この技術の応用例のひとつが、ポータブル酸素濃縮器(POC)と呼ばれる医療機器だ。従来は据え置き型が中心だったが、OOYOOの分離膜を利用すれば、小型かつ高性能な携帯型デバイスの展開が見込まれている。

OOYOOの高濃度ガス活用法

 巨大な分離装置に比べて小型・省エネであり、例えば食品の鮮度保持、タイヤの窒素ガス充填、製鉄所の酸素高炉など、産業用途への広がりも期待できそうだ。

燃やす・冷やす・守る――空気が変わる

 高濃度酸素や高濃度窒素が手軽に作れるようになれば、工場の燃焼炉は省エネで高効率に、食品や医薬品の保存はよりクリーンで長持ちになる。そこらじゅうにある空気が、社会を動かすエネルギーやシールドになるなんて、まさに「空気の錬金術」だ。

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