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酷暑でもおいしいお米はどれ?異常気象の裏で加速する品種改良技術

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

ご飯は「見た目」でもおいしさが変わる

 炊き立ての白ご飯。つやつやと光っているだけで、なんだかおいしく感じる。逆に、白く濁った粒が混ざっていると、ちょっとテンションが下がる。この“白濁り”は、高温の影響でデンプンがうまく詰まらず、すりガラス状になる現象だ。味そのものには大きな影響はないらしいのだが、見た目の印象で「おいしそう」に差が出てしまう。

障害のないお米(左)と高温障害で白濁したお米(右)

 今夏も猛暑と大雨で気候はめちゃくちゃだったが、それでも米は豊作だった。ただし、この白濁り米が増えたのも事実だ。一方で、「にじのきらめき」「新之助」といった高温に強い新品種が出てきて、おいしさもちゃんと守られている。

フェノタイピングってなんだ?

 なぜこんなに気候が荒れているのに“強い品種”が出てくるのか。それは、品種改良のスピードが上がっているからだ。とはいえ、その現場では、何千何万という苗の中から「残すべき種」を選び抜かなければならない。従来は、研究者や農家が目で見て判断してきたが、高温に強いとか、干ばつに耐えるとか、大きいとか、味がいいとか、その指標は複数ある。膨大な候補の中から優れた個体を探すのは骨が折れる作業だった。

 そこで登場するのが、「植物フェノタイピング」という技術だ。これは、葉っぱの形や色、成長スピード、水分の利用効率といった特徴をカメラやセンサーで数値化し、AIで解析する仕組み。「この株は暑さに強い」「この株は水を効率よく使う」といった適性を客観的に判断し、その選抜をデータで効率化できるわけだ。

 例えば、名古屋大学発スタートアップの株式会社フィトメトリスクは、こうした解析技術を武器に研究機関や企業に向けて受託開発を行い、裏方として品種改良の現場を支えている。

お米だけじゃない、食卓全体を守る

 もちろん、この技術はお米に限らない。例えばトマトやレタスにも応用できる。猛暑や大雨で「作りにくい作物」がどんどん増えていく中で、強い品種をデータでサクサク選抜できるのは心強い。今日も普通においしいご飯が食べられるのは、こうした研究者やスタートアップの努力のおかげである。気候変動に負けない農業の挑戦は、まだまだこれからも加速しそうだ。


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