メルマガはこちらから

PAGE
TOP

銅の高騰が止まらない!“銀のかわり”がスマホやEVで本命になる理由

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

投資マネーが金属に殺到。そして今、銅がアツイ

 戦争、政情不安、脱炭素バブル。世界がざわつくと、まず買われるのが「金」だ。リスクヘッジとして投資マネーが集まり、価格は右肩上がりを続けている。最近では、銀や銅など“実需のある金属”にもその流れが波及し、軒並み値上がりしている。

 中でも注目されているのが銅だ。スマホやパソコン、自動車、データセンター、そしてEVや再生可能エネルギーの送電インフラまで──あらゆる電子機器に不可欠な素材でありながら、鉱山の新規開発は遅れており、供給が追いつかない。都市部では銅線狙いの盗難事件まで相次ぎ、「新時代の石油」とまで呼ばれるようになってきた。

 そんな貴重な銅をもっと有効に使える技術を開発しているのが、東北大学発スタートアップの株式会社マテリアル・コンセプトだ。

きっかけは太陽電池。「銀」の代わりに「銅」

 屋外で長く使われる太陽電池の電極には、腐食に強く、長期間にわたって安定して電気を流せる銀ペーストが使われてきた。ただし銀は高価で、製造コストがネックになる。そこでマテリアルコンセプトは、銀に代わる「銅ペースト」の開発に乗り出した。

 銅は空気に触れると酸化しやすく、精密な加工も難しいという性質がある。そこで同社は、粒径20ミクロン程度の微細な銅粒子を均一に分散し、印刷後に高い導電性・密着性・耐久性を持つ配線を形成できる技術を確立。微細パターンに対応した焼成プロセスなど、複数の特許技術を組み合わせている。

世界初、量産対応の銅ペースト特許技術

 マテリアルコンセプトの銅ペーストは、太陽電池に使われてきた高価な銀ペーストの代替として開発されたものだ。腐食に強く、高い導電性を持つ銀に代わり、銅でも同等の性能を発揮できるようにするために、同社は粒子分散・焼成プロセスなどの技術を組み合わせ、独自の配線材料を実現した。

進化する銅配線がスマホからEVまで広がる

 さらにこの銅ペーストは、従来の銅箔エッチング方式と異なり、必要な部分にだけ印刷して配線を形成できる。材料のロスを大幅に削減できることから、太陽電池だけでなく、スマホのフレキシブル基板やIoT機器、EVの電子モジュールといった、さまざまな電子部品や機器にも展開可能だ。

 限りある資源である金属の価値が、今後下がることはおそらくないだろう。だからこそ、製造の段階からムダを省き、長く使えるような技術への移行が始まっている。そして、それを支える回収・再利用の仕組みも、少しずつ整ってきているようだ。1ユーザーとして、こうした流れに置いていかれないように、今後も最新情報をキャッチしていきたい。

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー