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「初日300アクセス」から月間33億PVへ──魔法のiらんど爆発的成長の裏側

モバイル黎明期に女子中高生を虜にした"奇跡のサービス"はどう生まれたか──谷井玲氏インタビュー

2025年07月22日 09時00分更新

文● 遠藤 諭

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渋谷のギャルサーとホームページ

―― 女子高生が、魔法のiらんどにあれだけ惹かれた理由をどう見ていましたか?

谷井 その求心力の1つには、「ギャルサー」という存在にあった部分があります。当時、渋谷を中心に、女子高生の頂点に立つギャルのサークルがあって、彼女たちが魔法のiらんどで自分たちのホームページを作り始めたんです。私たちはギャルサーについて詳しく知るため、社員に原宿の喫茶店で女の子たちの会話を聞いてもらったりしました。

 そして、ギャルサーのリーダー的存在だった志穂ちゃんのところに直接会いに行きました。彼女のグループには100人ほどのメンバーがいて、そのうち98人が魔法のiらんどでサイトを作っていたんですね。青山に一緒に行ったり、実際に交流を深めていきました。

 ユーザーの女の子たちに会議室に来てもらって、お菓子を食べながら意見交換をしたりもしていましたね。最初は女の子たちの意見を聞いても、なかなか活かせそうなアイデアは出てこなかったんですよ。でも、私たちが裏原宿やゴスロリの流行を実際に見に行って、毎日のように若者文化に触れていたんですね。技術系の会社なので最初は全然わからなかったのですが、そうやって現場に通い続けることで、少しずつ理解が深まっていきました。「この人が好き」「あの人は嫌い」「この服がいい」といった生の声を聞くことができましたからね。

―― なるほど女子高生をリサーチしていたと。

谷井 それで、渋谷や青山の頂点にいるギャルサーの頂点で109をリードしているような、その子たちが魔法のiらんどを使っているとですね。関東近辺からこっちに来る子から、修学旅行で来る子から、もうみんな憧れになっちゃうんで、そうやって魔法のiらんどというブランドが確立されていきましたね。

―― 雑誌との関係はどうだったんですか?

谷井 雑誌との連携も大きな役割を果たしていました。

―― 原宿の文化は雑誌を通じて神保町で再構成されるような構造があったと思うんですが。

谷井 雑誌で魔法のiらんどのホームページが紹介されると、トレンドや志穂ちゃんのページなどが取り上げられて、URLが掲載されるんですね。そうすると読者がそのURLから魔法のiらんどに入ってくるという流れができていたんです。

 そうして、これ自分もやってみようってなりますからね。ボタンを押して簡単にやれるわけですから。特に小説の投稿文化が活発でしたね。読者同士で「頑張ってね」「ありがとう」「勇気をもらったよ」といったコメントを交換し合い、「私も小説を書いたから見に来てね」という呼びかけも。そうやってお互いの作品を読み合って、「一緒に小説を書こう」といった交流も生まれていきました。そういった動きを雑誌も取り上げてくれましたね。

――  なるほど。

谷井 ターゲットを明確に絞り込んで開発を進めたわけですね。それと同時に、ユーザーの声に耳を傾けることを大切にしていました。日本全国の大量な掲示板や日記の書き込みをモニタリングしながら、そこからヒントを得て新機能を開発していきました。とにかく素早く開発して、すぐにリリースするという方針でした。失敗を恐れずに、たくさんの機能を試してみましたね。使われなくなって消えていった機能もたくさんあります。

2008年iPhone上陸直前の「女子高生にSNSとプロフは必須。その他のサービスも積極的!」という図(『月刊アスキー』2008年6月号より)。


志穂ちゃん:藤田志穂(ふじた しほ)氏。19歳の時に"ギャル革命"を掲げ起業。若者と食や社会課題にも取り組んでいる。

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