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エンジニア魂が燃えたぎる!生成AI開発イベント「AI Challenge Day」 第9回

第4回AI Challenge DayはECサイトをAIエージェントで未来にシフト

便利なのに楽しくないネット通販 エンジニアたちが次の買い物体験を真剣に考えてみた

2025年07月18日 13時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: 日本マイクロソフト

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個人情報や人とのAIの役割分担まで踏み込んだヘッドウォータース

 8社目はヘッドウォータース。普段はAIを用いて顧客や社会の課題を解決しており、ベテランから今回最年少と思われる22歳のメンバーまで含めて5人が参加した。リモートワーク主体のため、今回も集合写真は生成AIで作成。「2割増しでかっこよく、私は3割増してプロンプトを作っています」(竹川氏)とのことだ。

ヘッドウォータース 竹川智貴氏

 さて、エージェントのスコアは180.789点で、一気にトップに立った。「今回すごい数サブミットしました。そうしたらAzureのアラートが鳴りまして、あやうく評価対象外になりかける」(竹川氏)というピンチをかいくぐって得た点数だという。

 アーキテクチャとしては、Azure Well-Architected Frameworkを採用。「ただ、AIエージェント時代には、Azure Well-Architected Frameworkになにかしらの要素が必要なのではないか」という議論を社内で行なった。具体的にはEntra Agent IDによる識別や認可、最小権限の原則、Microsoft Purview DSPM for AIによるガバナンスやアクションログの可視化といったエージェントの権限管理が必要だという結論になった。

 「今回はRAGでデータをとってきていますが、今後は個人情報など機密性の高いデータにアクセスします。こうしたところでエージェントの権限管理はしっかりやっていかなければならない」(竹川氏)とのことで、マイクロソフトでの機能強化を前提にアーキテクチャを設計しているという。具体的にはAutoGenでマルチエージェント、マルチモーダルを実装し、MCP連携も図った。こだわりは「データの前処理」で、全員でデータを検証し、方向性を決定したという。

 また、今回はGraphRAGにも挑戦した。きっかけは月曜日に出された新しいルールで、属性情報を使って良いと言われたこと。「これをどのように管理したほうがよいかを悩みました」(竹川氏)。加えて違和感があったのは、なぜ今回SQL Serverではなく、PostgreSQLなのかという点だ。ここからBuild 2025で発表されたPostgreSQL向けのAIエージェント向け拡張で実現できるGraphRAGのナレッジグラフに行き着く。具体的には過去の対話履歴から抽出されたユーザー属性情報からパーソナライズなナレッジグラフを構成し、この結果が高スコアに結びついたのではないかと分析した。

 カスタマーストーリーに関しては、やはり「探す」と「迷う」が課題。情報量と選択肢の多さがユーザーのストレスになっているため、これをエージェントに「託す」というのが今後のECサイトのあるべき姿というのがヘッドウォータースの提案だった。「RAGやエージェントの技術革新が進む中、エージェント中心のECサイトは本当に実現できるのではないか」と竹川氏は語る。

探すのではなく、託すというのが今後のECサイトでは?

 ただ、大事なのはそこに人をいかにからませていくか。バーチャルとリアル、AIエージェントと人間をうまく組み合わせて、顧客の購買フローをうまく設計していくのが重要だという。店舗側で人がやるべきことは、AIエージェントの“人事”を担い、提案精度や対応品質を定期的にチューニングし、育成を続けることでエージェントは自律的に進化する。「今回作ったナレッジグラフも作れば作るほど、お客さまのパーソナルな情報をとれることがわかった。AIエージェントを育成していくことが大事なのかなと思いました」(竹川氏)。

 UIはGenerative UIを使い、コンテキストに応じてUIを自動生成してくれる。「買い物に楽しさを持っていきたい」と竹川氏は語る。マルチモーダルに関しては、現時点ではテキストと画像に対応しているが、今後はVoice Live APIを用いた音声にも対応していきたいという。最後まさにコンテキストごとにUIが変わるデモを動画で披露し、セッションを終えた。

 日本マイクロソフトの花ケ﨑氏は、「非常に深読みがすごいなと(笑)。特にデータベースに関しては、そこまで考えて採用したわけではないのですが、そこを考えて属性情報をナレッジグラフとして持つというところまで行き着いたのは感動でした。また、エンタープライズ基盤での利用を考えたときに、Buildの最新情報をキャッチアップし、Entra IDとの組み合わせを訴求していただいた。Why Microsoft? Why Azure? というところでEntra IDを訴求してくれたのはわれわれとしてはありがたい。UIもチャットベースながら、とてもリッチなデザインで、商品検索してみたいなと思わされました」とコメントした。

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AIアバター採用 未来の買い物を披露した野村総合研究所

 9社目の野村総合研究所(NRI)は流通本部のメンバー5人で構成されたメンバーで参加。青木耀平氏は、まずは「おつかれさまでした」と参加者をねぎらうコメントからプレゼンをスタートした。

野村総合研究所 青木耀平氏

 今回NRIチームが目指した次世代の顧客体験は、カスタマー視点では「顔が見え、会話できるEC」を目指した。「今はECサイトで買い物をするときに当たり前のようにパソコンでキーボードとマウスを使っています。これが次世代では『対話』になると思っています」と青木氏。そして、店舗側の視点では「店員ゼロでも対面接客」。これを実現するソリューションがアバターAIとエージェントAIを用いた新しい顧客体験だった。自然な会話でアバターAIが商品をオススメしてくれるというデモ動画も披露された。

 カスタマーストーリーでは、ハイパーパーソナライズした接客提案、自然な会話を通じた情報のやりとり、人手不足で確保できない接客人材の課題解決などが目的となる。これを実現すべく、多様なデータソースの情報を参照し、会話UIを介した自然な購買体験を提供し、店舗側の人手不足を補完するというのが、今回のソリューションになる。

アバターAIによる接客のデモを披露

 エージェントのスコアは182.6点で、この時点でトップに立った。アーキテクチャとしては、アバターAIにStatic Web AppsとSpeech Serviceを採用。エージェントはAppServiceにホストしており、データ検索にはAI Searchを採用した。

 また、信頼性、セキュリティ、コスト最適化、オペレーションエクセレンス、パフォーマンスなどの要件を満たすWell-Architected Frameworkをベースとしつつ、多くの顧客アクセスが予測されるECサイト独自の非機能要件にも対応。具体的には低遅延、スケーリング、セキュリティなどの対策を追加している。「サイトの表示が0.1秒遅れると、売上が1%下がるというデータもある」と青木氏は指摘する。

 エージェントに関しては、LangGraphを用いて全体構成を整理。ユーザーからのリクエストをオーケストレーターが受け、最適なプランニングを計画し、各エージェントはこのプランに則って処理を実行。最後に回答生成を行なう。「エージェントを個別化し、小さくしていくことで、性能の向上を図りました」と青木氏。ユーザー情報取得のエージェントを呼び出し、顧客のパーソナライズ情報を取得。データに対して画像のテキスト化、テキストのベクトル化を施しつつ、チャンキング、ベクトル化、リランキングなどの処理で検索精度の向上を図っている。

 実運用における課題も深掘りした。たとえば、今回は購買に至るまでに、ユーザーエージェントに対して、クレジットカード番号や住所、年齢などを聞くというフローがあったが、「これは実運用においてはリスクがあると考えている」と青木氏は指摘する。エージェントが意図しない動作を実施したり、個人情報の漏洩につながる可能性があるためだ。そこで、NRIチームでは、エージェントが決済システム側のフォームを呼び出し、エージェントに情報を収集しないような実装を提案。また、対話履歴を保存する際に、個人情報をマスキングするといった処理が必要になると指摘した。

エージェントで情報を収集しない実装を行なった

 今回は店舗以上の接客をECサイトに実装するというコンセプトでエージェントを開発したが、このシステムをARに載せれば、店舗でもAIのサポートを受けられる。また、ロボットにシステムを搭載すれば、棚卸しや在庫確認まで実現することが可能になるという。「このような未来をみなさんといっしょに作っていきたいと思っています」と語った青木氏。「今回は楽しく学習できる機会を与えてくれてありがとうございます」と運営側への感謝のコメントを残して、登壇を終えた。

 審査員のスキルアップNeXt 小縣氏は、「実店舗とECサイトの連携は本当に大事だと思っていて、うちのお客さんからも相談を受けたことあります。今回、この配信を見たら、これがうちにほしいとおっしゃると思います。最後のエージェントと決済システムの分離という話も、これも考えないといけないなと思いました。ソリューションとして、両者の分離はやるべきことだなと感じたし、すごく大事な視点。今回私は投稿数をモニタリングしていたのですが、NRIさんは投稿数もとても多くて、1週間に52回も投稿している。たまに低いスコアが出てきているので、なにか戦略的にやっていたんですか?」と質問。これに対しては、青木氏は、「メンバーごとにエージェントを分けていたので、メンバーごとに採点してもらっていました」と回答した。

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