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エンジニア魂が燃えたぎる!生成AI開発イベント「AI Challenge Day」 第9回

第4回AI Challenge DayはECサイトをAIエージェントで未来にシフト

便利なのに楽しくないネット通販 エンジニアたちが次の買い物体験を真剣に考えてみた

2025年07月18日 13時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: 日本マイクロソフト

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店舗とECとの連携、エージェントのメディア化など小売目線が光るアドインテ

 2社目はアドインテの髙松築氏。同社はオンラインとオフラインをつなぐDX支援を提供する「Adinte DMP」を提供し、現在はメディア事業に注力するリテールのプロ集団だ。「最新の気合い(KiAI)を搭載したマルチエージェント」を謳う平均年齢27.6歳の若手メンバーを揃え、今回のイベントに臨んだという。

アドインテ 髙松築氏

 エージェントのスコアは155.611点と最高得点の74.1%という高得点。「けっこういい得点だと思いますが、伸び悩んだ部分もあります。特にタスク5は対話内容、トークン数、セキュリティなどは高評価だったんですが、購買につながるトークフローになかなかなりにくかったのが次の課題」と高松氏は語る。

 アーキテクチャはAzure Well-Architected Frameworkに準拠。注目はECサイトのみならず店舗との連携を意識したところだ。「小売店さんは店舗を重視します。その意味で、今回のアーキテクチャは横展開が効く。Webチャットボットやサイネージ、ポイントアプリとの展開も想定している」と髙松氏。リテールを知り尽くした企業ならではの顧客のニーズに寄り添ったシステムと言える。

 技術的には「今時MCPだろう」とのことで、MCPを全面採用。リテールで重要なデータ基盤も用意したほか、エージェントを制御できるCMSを用意した。「今後、このエージェントはメディアになっていくと思っている。ただのクロスセル、アップセルだけではなく、広告商材の提案までこのエージェントが担ってくれる。まさにエージェントがインフルエンサーのような立ち回りをしてくれる。そんな世界観まで想定した」と髙松氏はアピールする。

アドインテのアーキテクチャ。MCPも全面採用

 エージェントの開発に向けては、AutoGenの「Magentic-One」という最新のフレームワークを採用。また、Build 2025で発表されたAzure AI Searchの新機能をふんだんに利用し、Agentic RAGを実装した。クエリ計画を策定し、必要に応じて並列にクエリを実行し、マージすることで、高精度なRAGの実装を目指したという。また、プレビューの「マルチモーダル検索」や「ドキュメントレイアウトスキル」も活用。オーケストレーター、画像検索、DB検索、ナレッジ検索、ECサイトのアクションなど、それぞれのエージェントで適切なGPTを使い分けているという。

 データのクレンジングにも配慮されている。今回はECサイトのバックエンドDBが用意されているが、花ケ﨑氏が用意したデータは精度のばらつきがある。「みなさん、気がつきました? 今回のデータはキログラムとグラムが混在しているんです。でも、不正なデータってパターンは多岐に渡るので、クレンジングは大変でした」と髙松氏は語る。

 これに対してアドインテはAzure DatabricksのAI Functionsを用いて、動的にクレンジングできる仕組みを構築した。実は「インベントリテーブルにある在庫はマイナス1個」(髙松氏)という“花ケ﨑氏の罠”にも気づき、在庫の値はゼロに修正。「データの品質を担保することが、エージェントの品質を担保すること」とアピールした。

 UIに関してはマルチチャネル戦略を採用。Webチャットはもちろん、LINEやポイントアプリ、店頭サイネージなど複数のチャネルで一貫したユーザー体験を重視している。Webチャットではクロスセル、アップセル、買い物かごへの追加などをカバー。ポイントアプリではあれば、家でポイントを見ていたら、在庫のある近所の店舗をオススメするエージェント、店頭サイネージであれば、お客さまとの対話からオススメ商品を提案してくれるコンシェルジュなどが作れるとのこと。「お客さまが欲しがっているモノの動画を動的に生成することも可能になる」と髙松氏は語る。

マルチチャンネル戦略でポイントアプリとの連携も実現する

 最後「Human-Agent Collaboration」を掲げたスライド。KiAI、Azure AI Stack、Development Copilot AIなどにより、マルチエージェントが人と共存する世界がまさに現実になってきていると髙松氏はアピール。「まさにAI Challenge Dayはマイクロソフトのプラットフォームで成り立つイベントだと思うので、今後も挑戦を続けていきたい」と語り、セッションを終えた。

 審査員のASCII編集部 大谷イビサは、「8分間の情報量がすごかった。印象的だったのは、店舗とオンラインの連携をとても意識しているところ。リテールすごくやっている感を感じた。われわれも今お店に行くと、LINEの登録を勧められるが、こういう連携を意識して本気で作ってきやがったなと思いました。『MCPで全部やってやろう』とか、『エージェントがメディアになる』とか、『欲しいものが動画で出てくる』とか、買い物の仕方自体を変える取り組みがいっぱいで、すごくよかった」と熱くコメントした。

■関連サイト

人手不足の店舗を救うマルチエージェントを意識したBIPROGY

 3社目のBIPROGYは2回目の参加となる。プレゼンテーターの高場雄太氏は、「若手を集めたのですが、先ほどのチームの方が若かった(笑)」と、生成AIで作成した集合画像を披露。エージェントのスコアは157.024点と前の2社よりさらに上げてきた。「(タスク5の)エージェントがすごく難しくて、RAGのパートで得点を稼ぐようにした」というのが戦略だった。

BIPROGY 高場雄太氏

 続いてユーザー側のカスタマーストーリーを披露。現在のECサイトでは、「商品名がわからない」「商品の使用感がわかりにくい」「複数の商品にまたがる問い合わせがしたい」などのニーズがあるという。ここにAIエージェントを用いることで、対話から買いたい商品を推測して提案してくるだけではなく、SNSやレビューの情報を総括して提案してくれるという。また、複数の商品情報を整理して、商品をオススメすることが可能になる。

 店舗側のカスタマーストーリーも披露された。店舗側は人手不足で、コンシェルジュがいなかったり、需要の多様化商品数の増加などが課題となる。「店舗の人手すら、どこにどんな商品があるかわからないこともある」と高場氏は指摘。また、多言語やクレームへの対応も必要。こうした課題に対しても、AIエージェントがあれば接客、多言語対応、クレーム対応などを行なうことで、店舗の負担を軽減できる。さらに専門のエージェントは、商品の評価や知識を持っているので、店舗スタッフの顧客対応や商品のプロモーションにも活用できるとアピールした。

店舗側のカスタマーストーリー

 続いて、これを実現するためのアーキテクチャの説明。一般的なアーキテクチャではあるが、BLOBストレージにエージェントに指示出しするためのコンフィグファイルが格納されているのが特徴だ。高場氏は、「AIエージェントは思ったのと違う動きをするので、設定を微妙に変更する必要が出てくるが、そのたびにコンテナを再起動してデプロイするのは手間がかかる。コンフィグファイルを外出しすることで、簡単にエージェントを更新できるようにした」と説明。運用時のメンテナンス性を高めている点が特徴だ。

 マルチエージェントは、Semantic Kernelで構成。前述の通り、コンフィグファイルを一元管理し、プロンプトの調整を設定ファイルから簡単に行なえるようにしている。UIはECサイトにチャットメニューを設定しておき、開くとテキストだけではなく、ドラッグ&ドロップで画像を登録することも可能だ。また、チャットの会話から商品ページを開けるので、チャットをしながら商品内容や値段を確認することも可能になっている。高場氏はデモを披露し、登壇を終えた。

チャットしながら商品や値段を確認できるBIPROGYのUI

 日本マイクロソフトの花ケ﨑氏は、「カスタマーストーリーでは、顧客側と店舗側でロジカルに課題を挙げていると思いました。特に店頭の顧客対応にエージェントを利用できるという点が優れており、店員さんが顧客対応に時間を費やしてもらって、バックエンドのデータ分析やリコメンデーションはAIエージェントに任せようという点に役割分担が感銘を受けました。戦略面では、エージェントで点数を取るのが難しいということで、RAGにシフトしたのがよかったのかなと。あとは信頼のSemantic Kernelを使っていただき、ありがとうございます。プロンプトを一元管理し、継続的に精度を上げるアーキテクチャになっていたのもよかった」と語る。

■関連サイト

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