サプリだと思ってた「ラクトフェリン」が“効く薬”として注目され始めている話
「敗血症」って何? 夏の体調不良が命に関わることも
夏場に多い体調不良。熱が出たり、だるさが続いたりして、「風邪かな?」「熱中症かも?」と自己判断してしまいがちだ。だがその症状、もしかすると敗血症(はいけつしょう)という命に関わる疾患の兆候かもしれない。
敗血症とは、感染症をきっかけに体の免疫が過剰反応し、全身に炎症が広がってしまう状態。悪化すると、わずか1日で命を落とすこともある。しかも、原因となるのはインフルエンザや膀胱炎、軽いケガなど、ごくありふれた感染症。日本では年間10万人以上が発症しているが、あまり知られていない「静かな死因」だ。
副作用リスクで“薬が使えない人”がいる現実
敗血症に限らず、感染症治療で使われる抗菌薬には副作用のリスクがある。中でも高齢者、妊婦、乳幼児といった免疫力の弱い人たちにとっては、薬の選択肢が限られてしまうことが多い。「治療したいのに、薬が使えない」というジレンマが医療現場には存在する。
「気休めじゃないの?」ラクトフェリンを“薬”に変える挑戦
そんな課題に挑んでいるのが、東京科学大学・筑波大学発ベンチャーの株式会社S&Kバイオファーマだ。彼らが着目したのは「ラクトフェリン」という成分。聞き覚えのある人も多いだろう。サプリや乳児用ミルクに含まれる、あれだ。もともとは赤ちゃんを守るために、母乳に含まれている自然由来のタンパク質。抗菌・抗炎症・免疫調整など、感染症に対して多面的に働く機能を持っている。
正直、「気休め程度でしょ?」と思ってしまったが、同社は、このラクトフェリンを“栄養補助”ではなく、“医薬品”としてきちんと設計し直そうとしているのだ。ラクトフェリンの弱点は、血中で安定しにくいこと。この課題を克服するため、同社は安定性を高めるタンパク質を融合させた2種類の改良型シーズを開発しており、現在、脊髄損傷や敗血症の動物モデルを用いた実験でPOCを行っている段階だ。
多機能さが敗血症治療の可能性を広げる
敗血症は、発症から重症化に至るまで複数のメカニズムが関与する複雑な疾患だ。しかし、現在開発中の治療薬の多くは、こうしたメカニズムの一部にしか対応できないという課題がある。
S & Kの開発するラクトフェリン由来のシーズは、現在知られている敗血症の主要な病態すべてに作用する可能性があるという。もちろん、臨床応用にはさらなる研究が必要だが、これまで手が届きにくかった妊婦や小児、高齢者などに“使える薬”を届けるための、価値あるチャレンジといえるだろう。















































