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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第88回

1枚の画像から、歩き回れる“世界”ができる 来年のAIは「ワールドモデル」がやばい

2024年12月16日 07時00分更新

文● 新清士

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AIチップのEtchedもワールドモデルに着手

 ワールドモデルを使って実験的なサービスを開始した事業者もいます。11月にAI開発企業のEtched(エッチト)とDecart(デカルト)は、「OASIS」をデモ版として公開しました。ユーザーのキーボードとマウスのインタラクションを通じて、インタラクティブな反応が起きるオープンワールドが実現されています。

 「物理演算やゲームルール、グラフィックスを内部でシミュレートし、フレームごとにゲーム映像を生成」するとしており、学習データには、OpenAIが公開しているオープンソースの「マインクラフト」の動画のデータセットを使って学習しており、その再現に近いものになっています。

OASISでは様々なマインクラフト的な動きが再現できることが紹介されている(OASISの技術レポートより)

 デモ版では5分間という制限がありますが、20FPSでリアルタイムに生成される世界を動き回ることができます。草を刈ったり、土を掘ったりといったマインクラフトのようにプレイすることができます。もちろん、見えていない部分の一貫性は担保されておらず、後ろを向いたりすると、山がなかったのに山ができていたりと、その度に違った地形が生成されるといった限界が現在はあります。

 このデモは、Etchedが6月に発表したAI技術のアーキテクチャーに特化したチップ「Sohu」に最適化しており、今後、劇的な高速化が見込めるとしています。そして、今後インターネットのトラフィックの70%がビデオデータになるとしており、それらを支える技術になるとしています。

 DecartはOASISを「より複雑なインタラクティブな世界への最初の進出」とし、「生成インタラクティブ体験(Generative Interactive Experience)」と呼ぶものを垣間見せるものであるとしています。「この新しい技術は、ユーザーがリアルタイムで操作できるインタラクティブな動画を作成することで、さまざまな体験を変える可能性があります。AIモデルがエンターテイメントをよりパーソナライズする世界を想像してみてください。AIモデルは、ユーザーの好みに基づいてコンテンツを即座に作成できます」(DecartのXへのポストより)

 世界そのものをユーザーが望む設定で自由に生成し、その世界のインタラクションを実現するという未来を目指している事がわかります。

▲筆者がOASISのデモをプレイしている様子。マインクラフトが再現されているのがわかると同時に、回転するとまるで違う空間の画像が出ている

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