多くの大企業で導入されているVDI(Virtual Desktop Infrastructure)がその長い歴史の終焉を迎えつつある。ネットワーク経由でPCのデスクトップだけを呼び出すことで、セキュアな仕事環境を実現するVDIだが、多くの企業から「もうVDIをやめたい」という声が挙がっている。
きっかけはコロナ禍。仕事場所を選ばず、どこでもデスクトップを呼び出せるVDIはテレワークに最適かと思いきや、正直テレカンでの使い勝手が致命的だった。考えてみればわかるが、本来ケーブルでつないで表示させるデスクトップ画面をわざわざネットワークを表示し、その画面にVDIサーバーで処理されたネットワーク経由のテレカン画面が映るのである。当然、音声・映像含めて、使い勝手に不満が出てくる。仮想デスクトップにvGPUを搭載したり、端末から直接Web会議を使う仕組みも導入されているが、VDIの仕組み上、遅延は避けられない。
ダメ押しがVDIベンダーの値上げだ。VDIは四半世紀近くシトリックスとVMwareの二強で構成されてきた市場で、OSの一部としてマイクロソフトがリモートデスクトップ(RDP)を提供してきた。しかし、ブロードコムによる買収による戦略変更でVMwareのライセンス料は実質値上げとなり、シトリックスもその流れに追従した。サーバーを自前で保有するオンプレ型VDIの場合、迅速なリプレースも難しく、ライセンス料の値上げに応じるしかない。冒頭の「もうVDIをやめたい」の怨嗟の声があふれるのも当然といえば当然だ。今後、クラウド型のDaaSに移行するのか、はたまた別のソリューションに移行するのか、動向が注目される。
文:大谷イビサ
ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。