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「HPE Discover Barcelona 2024」からみる最新戦略

HPEからも“脱VMware”の提案 ジュニパー買収によるネットワーク革新にも意欲

2024年12月03日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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HPEを牽引する「HPE GreenLake」の3大クラウドとの違い

 HPEの好調さについてネリ氏は、「顧客のニーズに、独立した技術ではなく、構造的かつ統合された方法で対応しているから」と分析する。ハードウェアベンダーからクラウド時代のシステムベンダーに転身すべく、HPEが導入したのが「HPE GreenLake」だ。2018年にローンチして以来、サービス範囲を拡充している。

HPE GreenLake

 ネリ氏は、GreenLakeは「第4のクラウド」だと紹介する。つまり、Amazon、Microsoft、Googleに続くクラウドというわけだ。

 他のクラウドとの違いは“ハイブリッド性”にある。「GreenLakeはオープン。さらに設計段階からハイブリッドで、パブリッククラウドインスタンスの管理機能も体験の一部として含まれている」とネリ氏。加えて「ネットワーク、ストレージと様々なアプローチで体験は始まるが、その体験は全て同じHPE GreenLakeとなる」と強調する。また、サーバーにおけるライフサイクル管理など、ソフトウェア側の分離を進めることで、キャパシティと性能のそれぞれを最適化できる。

 現在のHPE GreenLakeの顧客は3万7000社。「この1年の間、四半期ごとに3000社を新規獲得するペースで増えている」とネリ氏。さらには「(GreenLakeで)管理下にあるデバイスの数は400万台。最も誇っているのは、顧客に代わって我々が管理しているデータ量。現在2.5エクサバイトを超えている」と胸を張った。データがあれば、そこにAIを適用できる。これはHPEと顧客にとって重要なポイントになる。

ネットワークの革新に拍車をかける ― Juniper CEOが登場

 今回のイベントで印象的だったのが、ネットワークスイッチへのフォーカスだ。

 もともとHPEは、Hewlett Packardからエンタープライズ向け事業として分社化し、その後は不要な事業を削ぎ落として(売却して)いった。その後、新たに必要な事業として買収したのがAruba Netrworksだ。

 ArubaはWi-Fiアクセスポイントなど無線通信のスタートアップで、HPEの下でArubaブランドでエンタープライズ向けのスイッチなど製品を拡充してきた。しかし、ネリ氏はこれまでにも、「ネットワークで革新が起こっていない」と口にしていた。

 そして2024年年始に発表したのがJuniperの買収計画だ。現在、規制当局の審査を受けており、2024年末から2025年に取引が完了する見込みだ。買収金額は140億ドルと報じられている。

Juniperの買収が間もなく完了

 ネリ氏は「サーバーやコンピューティングでは大規模なシフトが起きている。ネットワークが追いつく時だ」と述べる。AIの時代には、大量のデータを運ぶための“巨大なパイプ”が必要となり、ハイパースケーラーはデータセンター間を繋ぐネットワークに投資しているところだ。「ネットワーク分野は、ドットコムブーム前後の15年程度はイノベーションが起きていた。コンピューティング側のイノベーションに合わせるためには、迅速に変わらなければならない」(ネリ氏)。そして、最大手であるシスコを暗に示しながら「顧客は選択肢を必要としている」と続けた。

 Juniperは、高性能のルーティングとスイッチの技術を持ち、顧客企業にはトップ20のグローバルサービス事業者、トップ30のクラウド事業者が含まれる。さらに、AIを活用したネットワーク運用を実現する「Mist AI」では、「AIネイティブオペレーションでは、どこよりも先駆けている。これを利用してネットワーク運用をシンプルにでき、信頼性、スケールを得られる」と評価した。

 JuniperもHPEも、Gartnerのエンタープライズ向け有線/無線インフラのマジック・クアドラントでリーダーに位置付けられており、「統合することで、ネットワークのイノベーションを加速する。モダンなアプリケーションとワークロードのニーズを満たすネットワーキングソリューションを提供できる」という。AI向けのネットワーク、AIを使ったネットワーク運用の両方で、技術革新を続けていく、と述べた。

 6月の米国Discoverイベントではあまり触れなかったが、今回の基調講演では、JuniperのCEOであるラミ・ラヒム(Rami Rahim)氏も登場。欧州のパートナーや顧客の前で、HPEとJuniperが統合する強みについてアピールした。

HPEのアントニオ・ネリ氏(左)Juniperのラミ・ラヒム氏(右) ラヒム氏は買収後、HPEのネットワーキング事業を統括すると発表されている

 ラヒム氏はAIによりネットワークの重要性が高まっているとし、「AIアプリケーションのトラフィックは2年ごとに10倍、クラスタの規模は4倍成長すると調査会社(Dell’Oro)が予想している。また、AI検索は通常のインターネット検索の10倍の電力を必要とすると電力研究所(EPRI)が発表している。つまり、顧客は信じられない規模のトラフィック増加に対応しつつ、AIが消費する電力需要も管理しなければならない」と語る。そして、「我々は、AIデータセンター向けとして800Gのイーサネット対応ルーターとスイッチを最初に発表した」と強調した。

 これに対し、ネリ氏は「AIワークロードと複数のレイヤーでの接続のために設計されたネットワークアーキテクチャが必要になる。セキュリティを含む包括的なネットワーキングスタックが求められている」と述べた。

 買収が完了していないことから具体的な製品計画には触れなかったが、両氏はネットワークの性能だけではなく、AIOpsなどの技術を使ってネットワーキング展開・運用・管理を自動化することの重要性も強調した。

 AI時代にHPEがリードできるというネリ氏の確信の根拠の1つが、スパコンだ。11月18日に発表されたスパコンランキングの「TOP 500」では、HPEのスパコンが1~3位をフィニッシュを独占した。(1位「El Capitan」、2位「Frontier」、3位「Aurora」)

 「スパコンと生成AIは別と思うかもしれない。ワークロードは異なるかもしれないが、土台のアーキテクチャは全く同じだ」とネリ氏。スパコンで試され、培ったIP(知財)を生成AIにどのように適用するかが腕の見せ所だという。ここでもネットワークを強調し、「高いレベルの性能を実現する理由のひとつで、中核になるのが、HPE独自のネットワーキングファブリックだ。我々の技術は、大量の処理を大規模に支援できる。さらにオープンなので、どのようなシリコンでも利用できる」と述べた。

展示ブースは「ハイブリッド」「AI」「ネットワーク」と3区分となり、「ネットワーキングのHPE」を印象付けた

スーパーコンピューター「HPE Cray EX4000」の展示

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