“プラットフォーム”をキーワードに変貌を遂げる老舗ネットワーク企業
インターネットブームを支えたシスコ、AI時代の新たな役割は? ― 幹部の言葉をひもとく
2024年11月22日 17時30分更新
かつてのインターネット同様、AIインフラで存在感を示す
「プラットフォーム」がシスコの今後の方向性を示すキーワードとすれば、ギレス氏の基調講演では「シリコン(チップ)」と「AI」というキーワードが直近の注力領域として挙がった。
シリコンについて言うと、シスコは独自チップである「Cisco Silicon One」を開発している。Silicon Oneは、シリコンとシステム、ソフトウェアを組み合わせることで「超信頼性のあるソリューション」に繋がっているという。「Silicon Oneにはかなりの投資をしてきたが、その価値が出ている。今後も継続して改善していく」とギレス氏。
AIについては、「コンピューティング」「モデル」「データ」「ネットワーク」「セキュリティ」と5つの要素を揃えているという。データは、Splunk買収により、インフラやテレメトリーのデータもさらに豊富になった。ネットワークについては、「チップが高速になり、ネットワークの供給がさらに重要になる。ネットワークがボトルネックになってはならない」(ギレス氏)と強調する。
シスコのHyperFabric、AI PODsといったAIインフラは、大きく2つの特徴を持つ。
ひとつ目は、高性能なコンピューティングやネットワークなどを活用したスタックを構築して、すぐに顧客が利用できること。2つ目は、AIベースのアプリケーションに対応するネットワークセキュリティを充実させていることだ。
これに加えて、シスコ自身も製品にAIを取り入れていく。代表的なのは、チャットボットである「Cisco AI Assistant」だ。このAI機能は、ネットワークやセキュリティ、オブザーバビリティ、コラボレーション領域のデータをソースに、「XDR」「Firewall」「Secure Access」との連携を、“スキル”として提供する。
今回、「Meraki」「SD-WAN」が新たにスキルに加わった。これにより、シスコのXDRを利用して特定のノートPCで不審な振る舞いを特定、その情報をAI AssistantがMerakiコンソールを利用するネットワーク管理者に通知し、”ランサムウェア攻撃の疑いがあるが、このマシンを隔離しますか?”といった、製品をまたいだ提案ができるようになる。「プラットフォームアプローチによって、統合的なAIを実現する」とギレス氏。
デ・ベルナベ氏は、現在をインターネットに次ぐ大きなシフトが起きている時代と評しながら、「我々はAIを今後2~3年の動きとは見ていない。10~15年のスパンで大きな変化が起きると見ている。シスコはインターネット時代に大きく貢献し、当時インターネットのトラフィックの約90%がシスコを介していた。そしてAIで再び、シスコは大きな役割を果たす。AI時代を支えるインフラになる」と強調した。
AIを活用したアプリケーションやソリューションの開発が推進されるにつれ、シスコのAIインフラの需要が高まる、という見立てだ。