ゲームでは予想外の失速
では実際の検証に入るが、全体的な方針として、解像度はフルHD固定、画質も最低またはそれに近い設定とすることで、GPU側にボトルネックが発生しないようにしている。GPUの仕事を極力軽くして、CPUが負担する毎フレームごとの処理負荷を高める、というのが狙いである。
●『ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー』公式ベンチ
まずはファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシーの公式ベンチマークだ。画質は“標準品質(ノートPC用)”に設定。ただしFPSに連動する動的な調整機能は使用せず、レンダースケールは100%(RS=100%)とした。ベンチマーク終了後に出るスコアーのほかに、レポートで出力されるフレームレートも比較する。
CINEBENCH 2024ではあれだけ輝いていたCore Ultra 200Sシリーズが、FF14ベンチでは前世代の同格CPUよりスコアーもフレームレートも出ない。前述のAPOが影響している可能性もあるが、APO対応は“暁月のフィナーレ”であり、今回の“黄金のレガシー”よりも古いシステムだ。ここでの最速はRyzen 7000X3Dシリーズであり、Core Ultra 200Sシリーズはこれらゲームキングに大きく引き離されてしまっているのは残念でならない。
●『Overwatch 2』
Overwatch 2の画質はプリセットの“低”を選択、レンダースケールは100%、フレームレート制限は上限の600fpsとした。マップ“Eichenwalde”におけるbotマッチ観戦中のフレームレートを計測した。これ以降のフレームレート計測はすべて「CapFrameX」を利用している。
ここでもFF14同様にCore Ultra 200Sシリーズは前世代の同格モデルに及ばない。それどころか格下モデル(Core Ultra 7 265KならCore i5-14600K)にすらフレームレートで負ける。CPUコア数をあまり必要としないゲームであるため、PコアのSMT非対応は原因であるとは言えない。アーキテクチャーとこのゲームが上手く噛み合っていないか、前述の電源プラン(高パフォーマンス設定)でも回避できない不具合が(BIOSやOS側に)潜んでいるのか、断言できる材料はない。
これらのフレームレート計測中、CPUやシステム全体でどの程度の電力が消費されたのかをHWBusters「Powenetics v2」を用いて計測してみた。システム全体の消費電力とは“ATX/EPS12V×2/PCIe 8ピン×3(最終的に16ピンへ変換)/PCIe x16スロットに流れた電力”を、CPUの消費電力は“2系統のEPS12Vケーブルを流れた電力”をそれぞれ直接計測している。また、値はベンチマーク期間中の平均値である。
フレームレートではパッとしなかったCore Ultra 200Sシリーズだが、消費電力の点では優秀。Core i9-14900KはもちろんRyzen 9000シリーズよりもCPUの消費電力が小さい。しかしこれは“CPUが仕事をしていない(させてもらえていない)”せいであるという考え方もできるため、Core Ultra 200Sシリーズにはまだまだ改善が必要(BIOSやドライバー含む)だろう。
ただ、CPUの消費電力10Wあたりのワットパフォーマンスを計算してみると、Core Ultra 200Sシリーズは10Wあたり70~74fps、Coreプロセッサー(第14世代)では29~40fps、Ryzen 9000シリーズでは46~55fpsとなっており、電力効率的には改善されている。ただこういう計算方法だと消費電力の絶対値が低いだけでワットパフォーマンスが強くなるため、参考程度に捉えていただきたい。
●『Witchfire』
Witchfireは画質“Low”に設定。マップ“Island of the Damned”で一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
ここでもCore Ultra 200SシリーズはCoreプロセッサー(第14世代)よりも平均フレームレートベースで約8~16%下どまりである。Ryzen 9000シリーズに対しても平均フレームレートでは勝てていないが、最低フレームレートという観点ではCore Ultra 200Sシリーズは安定して高い、といえる。
特にRyzen 7 9700Xや7800X3D、Ryzen 5 9600Xといった絶対的なコア数の少ないCPUと比較した場合、最低フレームレートにおいてCore Ultra 200Sシリーズは若干有利である、という点は見逃すことができない。これはCore Ultra 200Sシリーズのメモリークロックの高さが関連している可能性もあるものの、何かの理由があってフレームレートが伸びきらないCPUである、という可能性を残している。
CPUの消費電力が前世代やライバル(Ryzen 9000シリーズ)に比して大幅に減っているというのは先の検証でも見た通り。ここでポイントになるのはRyzen 7000X3Dシリーズとの対比だ。
Ryzen 7000X3DシリーズはCPUの消費電力がやたらと低い(大容量L3キャッシュのおかげでメモリーアクセスが抑制されるため)が、システム全体の消費電力はRyzen 9000シリーズ並、つまりGPU(RTX 4080)がより頑張れる環境であることを示している。
その一方でCore Ultra 200SシリーズはCPUの消費電力はRyzen 7000X3Dシリーズよりやや高いにも関わらずシステム全体の消費電力は控えめ。つまりGPUの仕事量が減っていることを示唆している。
●『Black Myth: Wukong』(ベンチマーク)
Black Myth: Wukongでは専用のベンチマークアプリを使用。画質は“低”、レイトレーシングは無効、アップスケーラーはFSR 3だがレンダースケールは100%とし、フレーム生成も無効化。ベンチマークシーン再生中のフレームレートを計測した。
Black Myth: Wukongの描画システムはGPUがボトルネックになりやすい。Ryzen 7000X3Dシリーズがまったく優位性を出せていないことからもわかる通り、CPUパワーの差が出にくいゲームなのだ。今回の検証でも平均フレームレートはどのCPUも似たり寄ったり。強いて言えばCore Ultra 200Sシリーズの平均フレームレートは他よりも3fps程度低めと言えるかもしれない。ただ最低フレームレートに関しては他のCPUよりやや上だ。
Core Ultra 200SシリーズはRyzen 7000X3Dシリーズに次いで消費電力が小さい。ちなみにCore i7-14700Kの消費電力が突出しているが、これは筆者の過去の検証でも度々観測されてきたことと合致する。
●『F1 24』
F1 24の画質は“超低”、異方性フィルタリングは16x、アンチエイリアスは“TAA&FidelityFX”に設定。ゲーム内ベンチマーク(条件は“モナコ”+“ウエット”)再生中のフレームレートを計測した。
ここまで見てきたゲームと似た傾向だが、Core Ultra 200Sシリーズは前世代に対しあまり差がないと言える程度に差を詰めている。ここで重要なのはCore Ultra 200SシリーズとCoreプロセッサー(第14世代)が似たような性能であるという点である。ならワットパフォーマンス対決もよりわかりやすくなるというものだ。
Core Ultra 200Sシリーズの消費電力、特にCPUは前世代よりも圧倒的に低い。Core Ultra 9 285Kに関しては、Core i9-14900Kの半分どころか4割強の電力しか消費していない。それでいてフレームレートがやや劣る程度であれば、ワットパフォーマンスが高い、というインテルの主張は“一応正しい”といえる。
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