第83回
「かまいたちの夜」の魅力をたっぷりと詰め込んだ贅沢な一本!
シリーズ30周年記念作『かまいたちの夜×3』プレイレビュー!極上のミステリーとホラーに、ちょっぴりのギャグも添えて……
「こんや、12じ、だれかがしぬ」
このメッセージに聞き覚えのある人、もしくはトラウマを思い出した人は大勢いるのではないだろうか? これは、チュンソフト(現スパイク・チュンソフト)が製作した『かまいたちの夜』の有名なメッセージである。
『かまいたちの夜』は、1994年に発売されたチュンソフト産のサウンドノベルゲーム。テキストベースで進行するゲーム性に加え、殺人事件の犯人を突き止めるミステリー要素、トラウマ必至のホラー要素、捧腹絶倒のギャグが本作の特徴だ。
『かまいたちの夜 特別編』(1998年)を含む第1弾に続き、第2弾の『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』(2002年)、第3弾にしてシリーズ完結編の『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』(2006年)が発売された。他プラットフォームの移植版や派生作も発売されるなど、「かまいたちの夜」は現在も根強い人気を誇っている。
そんな「かまいたちの夜」シリーズは、今年で30周年を迎えた。本シリーズの生誕30周年を記念して、2024年9月19日より『かまいたちの夜×3(トリプル)』が販売中だ。対応プラットフォームは、Nintendo Switch、PlayStation 4、PC(Steam)。
メーカーより本作のPC(Steam版)のコード提供を受けたので、そのプレイレビューをお届けしたい。
30周年を迎えたサウンドノベルの名作!
極上のミステリー3作品を一気に楽しめるのがイイ!
『かまいたちの夜×3(トリプル)』は、2006年に発売された第3弾の移植版だ。オリジナルの第3弾と同様、本作には「ペンション“シュプール”編(第1弾)」「監獄島のわらべ唄編(第2弾)」「三日月島事件の真相編(第3弾)」の3本が収録されている。
第1弾と第2弾はメインシナリオのみで、第3弾はメインシナリオと隠しシナリオを体験できる。3本のメインシナリオ+隠しシナリオ(第3弾のみ)が入っているため、“至れり尽くせり”という言葉が似合うだろう。
本作の主な特徴は、解像度が向上した背景や視認性が増した文字デザインの採用など。背景や文字などのビジュアルが現行機向けにアップグレードされたことで、新鮮味のある最新作として楽しめるようになっている。
そのほかにも、懐かしのドット文字に変更できたり作中のBGMを試聴できたりと、ファン必見のおまけ要素もなかなかに魅力的だ。
「かまいたちの夜」三部作をひとつのソフトで楽しめるのは、ある意味「出血大サービス」と言ってもいいだろう。懐かしさと新しさのバランスがちょうど良く、古参プレイヤーも新規プレイヤーも満足できる内容に仕上がっていると感じた。
個人的には第1弾と第2弾の隠しシナリオもプレイしたかったが、第3弾の移植版である以上、我慢するしかない。それでも各メインシナリオと第3弾の隠しシナリオのプレイ時間、ならびにトライ&エラーの時間を含めると、プレイボリュームは非常に高めだ。
参考までに、筆者が3本のメインシナリオをクリアした時点で、プレイ時間は10時間以上に達していた。10時間以上も遊べると考えれば、本作は長く遊べること請け合いの一本と言えるだろう。
気分はミステリー小説の名探偵!
シナリオを読み解いて真相を突き止めろ
「かまいたちの夜」シリーズの目的は、画面上に表示されるテキストを読み解き、真犯人とトリックを解明すること。殺人事件の真相を突き止めればトゥルーエンド(クリア)だが、真相を突き止められなかったらバッドエンド(ゲームオーバー)となる。
本シリーズは、「選択肢を選んでトリックを証明する」「犯人の名前を入力する」といったミステリーゲームらしい遊びもある。文章をしっかり読み込んで自身の力で謎を解いてもらうゲーム性が本シリーズの醍醐味。ミステリー小説の名探偵になった気分で、本作の世界に没入できるはずだ。
これから本作をプレイする人に伝えておくと、初見での攻略ははっきり言って難しい。なぜなら、プレイヤーを誤解させるミスリードが非常に多いからだ。ミステリー作家・我孫子武丸先生が関わっているためか、ミスリードの誘い方が上手い。
シナリオを進めると登場人物全員が怪しく見えてきて、次第に「Aが一番怪しいんだけど、Bも気になるんだよな……。でもCもなんか怪しいな」と自分の推理も怪しくなってくるのだ。殺人事件に巻き込まれた登場人物たちと同様、プレイヤーも疑心暗鬼に陥ってしまう。
しかしミスリードという罠をかいくぐって、自力で犯人を突き止めたときの達成感は格別以外の何物でもない。
「あーでもない、こーでもない」と試行錯誤したあとに自身の推理を披露し、犯人を屈服させる。推理が見事当たった瞬間、言葉では言い表せないほどの快感が得られるのだ。「名探偵になってみたい」と思っているミステリーファンにとって、本シリーズはまさに理想のゲームと言えるだろう。
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