年次カンファレンス「NetApp INSIGHT 2024」で発表
NetAppがブロック専用ストレージ「ASA Aシリーズ」投入、CEOが語るAI時代の戦略とは
2024年10月15日 09時00分更新
NetAppが2024年9月下旬、米国ラスベガスで年次カンファレンス「NetApp INSIGHT 2024」を開催した。同イベントでは、オールフラッシュSANストレージの新製品「NetApp ASA(All SAN Array) Aシリーズ」を発表し、ブロックストレージ市場への注力姿勢を強めている。
ストレージベンダーとして“AI時代”にどう向き合うのか、なぜASA Aシリーズを発表したのか。NetApp INSIGHTの会場で、同社CEOを務めるジョージ・クリアン氏がインタビューに応じた。
よりインテリジェントなデータインフラを目指すNetApp
――昨年のイベントから、NetAppは自社を“インテリジェントデータインフラストラクチャ・カンパニー”だとアピールしています。その意味するところは何でしょうか。
クリアン氏:「インテリジェントデータインフラストラクチャ」とは、統合されたデータストレージと、その上にあるデータとワークロードについてのインテリジェントなサービスを組み合わせたものだ。
NetAppは創業以来、ユニファイドデータストレージを構築してきた。特にこの10年は、ユニファイドデータストレージの定義を広げ、パブリッククラウド環境やSDS(Software-Defined Storage)環境との統合も含むようになった。
こうした拡大の過程で、顧客からは「自社のシステムにどのようなデータがあるのか知りたい」「さまざまな種類のデータのセキュリティを管理したい」といった要望が聞かれるようになった。つまり、ストレージに格納されたデータの“近く”で、セキュリティなどの機能を実装したいというニーズだ。
そこで数年前から、インテリジェントなデータサービス、インテリジェントな運用サービスを開発し、顧客が簡単に使えるようにしてきた。これにより、NetAppのストレージは単にデータを保存するだけでなく、データを最も効果的に活用するためのサービスも備えることになった。そのことを示すために「インテリジェントデータインフラストラクチャ」という言葉を使うことにした。
――現在は「AIの時代」になりました。企業がAIを実装するにあたって、データを格納するストレージのメーカーとして、課題をどのように見ているのでしょうか。
クリアン氏:は、(1)データ管理、(2)AIシステムとデータシステムの隔たり、という大きく2つがある。
(1)は、サイロ化されたデータから統合されたデータへ移行するにあたっての課題だ。高度なデータ分析やAI活用で先行している企業は、データの統合と適切なカタログ課、機密データのセキュリティと管理、データのライサイクル全体の把握といったことが実現できている。興味深いことに、大企業よりも中堅企業のほうが、またライフサイエンスなどの規制業界のほうが、こうしたデータ管理が進んでいることが多い。
(2)については、多くの組織が現在構築しているAIシステムは、専用チップ(GPUなど)と特殊なネットワークを必要とするために、(既存の汎用システムとは切り離された)サイロを構成しているという課題だ。そのため、社内にあるさまざまなデータへのアクセスが難しくなっている。
実は、この状況はクラウドの初期段階にも似ている。当時、クラウドと社内システムは別々に構築されていたが、NetAppではデータファブリックを通じてその2つの世界を統合し、マルチクラウド環境での運用を容易にした。
AI時代にも同じことを実現していく方針だ。NetAppは「AIをデータに近づける」ことで、データインテリジェンス時代の問題を解決する。
AI時代の課題を解消するために「AIをデータに近づける」
――「AIをデータに近づける」ために、NetAppでは具体的にどのような技術革新を行っているのですか。
クリアン氏:データがオンプレミス、クラウドのどこにあっても、どんな種類でも、AIを安全かつアジャイルに適用できるように「NetApp AI Data Engine」を導入する。同時に、AIのユースケースを支援するインフラ側の機能開発も進めている。モデルの追跡、データのバージョニング、さらに、ベクトルデータベースなどのAIを支援するアプリケーションへデータを効率よく移動する技術などだ。
ほかにも、AI環境に関するインテリジェンスとセキュリティに注力している。
インフラやその上にあるデータに対してインテリジェンスを適用し、データ資産を探索/理解したり、AI実験に必要なデータを素早く選択できるようなツールを提供する。またセキュリティでは、データのライフサイクル全体に対してセキュリティ、プライバシー、管理ができる仕組みを提供する。たとえば、機密データに対してセキュリティポリシーを設定している場合、AIシステムやアプリケーションがそのデータを読み込む際にもポリシーが維持される、といったものだ。
NetAppはクラウドベンダーと長年の協力関係にあり、AIに向けた取り組みでもこれが大きな価値をもたらしている。各クラウドベンダーもAIとデータのプラットフォームを構築しており、それとNetAppの技術が統合することで、顧客はNetAppのデータ管理、インテリジェントデータインフラのツールを使うことができる。
――AIをデータに近づけるというアプローチにおいて、パートナーはどのような役割を果たすのでしょうか。
クリアン氏:NetAppは常に、パートナーが自社の顧客にサービスを提供するのを可能にするイネーブラーだと考えている。
たとえばクラウド分野において、NetAppはAWSのクラウドマイグレーションフレームワークに参加しており、クラウドへの移行やハイブリッドクラウドの導入を簡素化し、クラウド移行ツールも提供している。これにより、パートナーは自分たちの顧客と共にクラウドの設計に関するワークショップ、クラウドに向けた準備を見るアセスメントを行うことができる。
同じような取り組みをAI分野でも行っていく。今回のINSIGHTで発表したデータ分類などのツールを使って、パートナーは顧客のAI導入を支援できる。
ブロックストレージ市場に本格参入するうえでの戦略は?
――今回はオールフラッシュSAN「NetApp ASA Aシリーズ」を発表しました。ブロックストレージをプッシュしていますが、この市場における競争をどう見ていますか。
クリアン氏:NetAppでは、以前から以前からユニファイドストレージソリューションの一部としてブロックストレージを提供してきた。実はブロックストレージの顧客数も2万社以上を数え、実績がある。
その一方で、ブロックストレージとファイルストレージの担当者が異なる企業が多いため、新たにブロックストレージ専用の製品を開発することにした。これにより、それぞれの担当者の要求を満たすことができる。これがASAを開発した経緯だ。
ASAは市場において、魅力的な選択肢になっていると自負している。データ管理機能で差別化が図れており、価格性能比でも優れている。
ブロックストレージ市場のトレンドとして、旧来のフレームアレイ(コントローラーが独立した大規模向けストレージシステム)に対するニーズが減少し、ミッドレンジのブロックストレージシステムがハイエンドからシェアを奪っている。そして、NetAppはミッドレンジで強力な製品を構築している。
――今後の注力事項や目標を教えてください。
クリアン氏:新しい会計年度が始まったが、4つのビジネス機会があると見ている。うち2つは市場全般に関わるビジネス機会、「AI」と「フラッシュストレージ」だ。残る2つは「ブロックストレージ」と「クラウドストレージ」で、これらはNetApp独自のビジネス機会と言える。
先ほども触れたとおり、ブロックストレージはすでに参入していたが、ASA Aシリーズは市場でのポジションを確立するにふさわしい製品だと考えている。またクラウドストレージについては、クラウドネイティブに動くストレージを構築するというわれわれの取り組みが実を結ぶと見ている。
世界は「データとインテリジェンスの時代」に突入した。今日のデータ分析ツールはパワフルであり、ビジネス、そして世界をより良いものにすることができる。NetAppは顧客がデータを統合して、ビジネス上の成果を得るためにデータを管理できるよう支援していく。そのためのポートフォリオを、継続的に強化して行きたい。