ゲーム特化の生成AIサービスも登場
そんななか、ゲームに特化した生成AIサービスを提供している企業も登場してきています。Scenario(シナリオ)というクラウド生成AIサービスの米スタートアップは、Unityなどと連携して使えるような、特に2Dアセットの開発用ツールを用意しています。
画像を生成する基本機能から、LoRA作成、テクスチャ・マテリアル生成、ピクセル化といった特殊スタイル生成などの基本ツールが用意されています。それを使うことで、アドベンチャーゲームに使うようなキャラの立ち絵から、表情のバリエーションの作成、背景、アイテムのアイコンなどを作成できるというわけです。
共同創業者のEmm氏は、Scenarioを使った新しいアセットの開発法をXに多くポストしていますが、最近では、話題のFLUX.1に対応したノウハウの提案をしています。
This is wild!! Flux Pro generated the full set of UI elements in a single go. 🤯🔥
— Emm (@emmanuel_2m) September 8, 2024
Even with just one super long prompt (199 words), the adherence is almost 100%!
Check it out: here's the full prompt, with each element detailed in the thread below for easy visualization:… pic.twitter.com/ua2XXs7zsh
△FLUX.1を使ったアイコンの作成プロンプトの紹介
Seriously, Flux is incredible. Blown away by these detailed design sheets, and the consistency in all the elements. All from the base model. Absolutely mind-blowing 🤯.@robrombach you guys really need to rename 'Black Forest Labs' to 'Black Magic Labs' 🙃🧙🏻♂️. This is wizardry! pic.twitter.com/o1odhfVWE2
— Emm (@emmanuel_2m) September 21, 2024
△FLUX.1で、一貫性を持ったキャラクターデザインシートの作成方法
カナダのRed Meat Gamesは、スマホやタブレット向けアドベンチャーゲームの「Moriarty」という最新ゲームに、Scenarioの環境を実験的に使って自社のアーティストのデータを学習させた上で利用して、スタッフとの共同作業に有効に使っていることを明らかにしています。
Red Meat Gamesの「Moriarty」。同社の講演を紹介するブログより
一方、ChatGPTのような大規模言語モデル系で注目されているのはInworldという会社で、インタラクティブなNPCを実現するエンジン環境を提供している企業です。6月に発表したNVIDIAとの共同開発したデモでは、ゲーム内のNPCと人間のような会話ができるということをアピールしていました。
ただ、これを本格的に使ったゲームはまだ出ていません。
APIをゲームエンジンに組み込み、会話をさせるということ自体はかなり簡単にできるのですが、会話を1回するたびにAPIの利用料金がかかってしまうことと、AIが“考える時間”をとるために会話にタイムラグが出てしまうことが大きな課題です。この課題を解決するには、ゲーム機(エッジデバイス)側に小さなAIモデルを入れるなどの工夫が必要になります。この2つのボトルネックが解消しないと、なかなかゲームでの本格利用が広がることは難しいと考えられます。
「面白いゲーム」を作るのは、AIではなく人間の仕事
「生成AIを使ってゲームを開発する」という切り口でニュースが報じられることがありますが、ゲーム業界にとって最大のインパクトは少人数でも作れるゲームの幅が広がった点で、1年前と大きく変わったとは言えません。ただし、様々な生成AIの環境が整ってきていることもあり、特定の目的に絞るならば、使い勝手がよくなってきているとは言えます。それが粗製乱造を増やす可能性もあるとも言えますし、激しい競争のなかから優れたゲームを登場させる確率も上げたとも言えます。まだ、正確な評価は難しい段階です。
そもそも、インディゲームのスタジオに生成AIが広がっているのは、開発リソースがないからです。そこを補うために、世界中で利用されるケースは増えていくことは間違いないでしょう。ただ、生成AIをゲームデザインに組み込むとしても、生成AIを使ったからと言って、そのゲームが面白くなることは何も保証されていません。むしろ、品質をコントロールするにはより人間のセンスが必要になっていると感じられます。そして何よりゲームの面白さは、人間が作り出さなければなりません。この点は、1年前から何も変わっていません。
「プロンプトを入れれば、AIが何から何までやってくれて、面白いゲームができあがる」といった未来は、まだまだ当分訪れることはなさそうです。

この連載の記事
-
第144回
AI
わずか4秒の音声からクローン完成 音声生成AIの実力が想像以上だった -
第143回
AI
AIエージェントが書いた“異世界転生”、人間が書いた小説と見分けるのが難しいレベルに -
第142回
AI
数枚の画像とAI動画で“VTuber”ができる!? 「MotionPNG Tuber」という新発想 -
第141回
AI
AIエージェントにお金を払えば、誰でもゲームを作れてしまうという衝撃の事実 開発者の仕事はどうなる? -
第140回
AI
3Dモデル生成AIのレベルが上がった 画像→3Dキャラ→動画化が現実的に -
第139回
AI
AIフェイクはここまで来た 自分の顔で試して分かった“違和感”と恐怖 -
第138回
AI
数百万人が使う“AI彼女”アプリ「SillyTavern」が面白い -
第137回
AI
画像生成AI「Nano Banana Pro」で判明した“ストーリーボード革命” -
第136回
AI
画像生成AIの歴史を変えたNano Banana “一貫性の壁”が突破された2025年を振り返る -
第135回
AI
実在感が恐ろしいレベル 画像生成AIの常識をひっくり返した「Nano Banana Pro」 -
第134回
AI
“AI読者”が小説執筆の支えに 感想を励みに30話まで完成 - この連載の一覧へ








