AIへの「高い期待」と「低調な利用実態」ギャップ解消の鍵は? Dropbox国内実態調査
経営者はわかってくれない? 中間管理職の“AI業務活用”期待と悩み
「AIを業務で取り入れたい」という声が8割を超え、特に中間管理職層では期待の声が強い一方で、実際に「AIを業務で利用したことがある」のはわずか2割ほど――。Dropbox Japanが国内ナレッジワーカー1200名を対象に実施した「AI利活用に関する実態調査」では、そんな日本の“AI業務活用”の現状が明らかになった。
2024年7月23日に行われた記者説明会では、特に中間管理職層でAI業務活用への期待が強い理由、その背景にある「情報管理」業務の課題、そして日本でAIの業務導入が進まない「3つの原因」などが、Dropbox Japanの岡崎隆之氏から説明された。
さらに、東京大学大学院 工学系研究科 教授の川原圭博氏をゲストに招き、企業がこれからの“AI時代”に向けてなすべきこと、その可能性などが議論された。
「働き方の改善」につながると強い期待、ただし利用実態は低調
今回の調査は2024年3月、全国のナレッジワーカー(20~59歳、デスクワーク中心のフルタイム有職者またはフリーランス)1200名を対象に、インターネット調査で実施されたもの。「AIをまったく知らない」回答者はあらかじめ対象から除外されている。
まずは、現在の日本におけるAI業務活用の全体像から押さえておこう。前述したとおり、ナレッジワーカーのAI業務活用に対する期待値は高く、全体では83.4%が「AIを業務で取り入れたい」と回答した。なかでも、中間管理職(部長、課長、次長)では88.9%がそう回答し、特に強い期待を示している。
こうした期待値の高さとは裏腹に、利用実態は低調だ。「AIを業務で利用した経験がある」回答者は21.6%にとどまった。ただし「利用経験がある」回答者の84%は「現在も利用」しており、Dropboxでは「利用経験の有無が継続的な利用に大きな影響を及ぼす」と分析している。
なお「AI業務活用で改善すると思うこと」(上位3つを選択)という設問では、「労働生産性の向上」(83.5%)、「業務量の削減」(81.7%)、「労働時間の短縮」(81.0%)、「ワークライフバランスの改善」(80.9%)といった、これまでの働き方を改善する効果への期待が上位を占めた。
中間管理職はAIに雑務を任せて「本来の仕事」を進めたい
特に中間管理職がAI業務活用に強く期待する背景について、Dropboxでは「業務負荷が高く、本来の仕事を十分にできていない」ためだと分析している。ここで言う「本来の仕事」とは、「マネジメント業務」「経営方針/戦略などの検討/立案」「クリエイティブ業務」といった、中間管理職として付加価値の高い仕事を指す。実際に中間管理職が、AI業務活用で捻出した時間で行いたいとするトップ3がこれらの業務だった。
それでは中間管理職は、AI業務活用でどんな(付加価値の低い)仕事を削減したいと考えているのか。中間管理職が最も多く挙げた「AIに任せたい仕事」は、データ入力などの「単純作業」(71%)だった。また、議事録作成など「会議関連の仕事」(52%)という回答も、全体平均(38.6%)より10ポイント以上高かった。なお議事録作成については、平均では、一般社員よりも多くの時間を費やしているという。
「わたし自身も経験があるが、経営者層など高位の役職者が集まる会議では、中間管理職が議事録をまとめる担当になりがちだ。そういった作業をAIが代わりにやってくれれば、自分も会議に参加しやすくなるし、会議の生産性もより向上するのではないかという期待値がある」(Dropbox 岡崎氏)
もうひとつ、Dropboxでは「情報管理」にまつわる問題も指摘している。今回の調査によると、中間管理職は「複数の資料/ファイルを一つの資料にまとめる」(平均で28分/日)、「会議の議事録を作成」(同 23分)、「過去のファイルを再利用するための探索」(同 22分)といった情報管理業務に多くの時間を費やしている。情報管理業務全体を合計すると、中間管理職は回答者平均(1日3.7時間)より30分以上長い、1日4.3時間を費やしていた。当然、ここでもAI業務活用に対する期待は高い。
「たとえば営業活動の進捗、プロジェクトの進捗などは、それぞれの管理システムが導入されているケースが多い。ただし、たとえば何かトラブルが発生して、その原因を確認するといった細かな情報が必要になると、メールやチャットの履歴をさかのぼったり、ファイルを参照したりと、いろいろなツールに分散した情報を探してそれを要約することになる。中間管理職はこうした情報の収集と加工に、1日の就労時間の半分くらいを使っている」(岡崎氏)
なお中間管理職では、AI業務活用への期待として「稼働している時間を気にせず依頼できる」という声も、平均より多かったという(23.4%、回答者全体平均は16.3%)。岡崎氏は、意思決定を行ったり報告書を作成したりする場面で、部下に進捗などの情報を聞くタイミングを気にすることなく、自分自身のペースで仕事が進められるようになることへの期待だと説明した。
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