OTセキュリティ人材育成の施策、エンジニアリング/開発も含めた日本への投資姿勢
全国自治体の50%超が利用するOPSWAT、CEOに「日本の重要インフラ保護」の課題を聞く
2024年07月17日 08時00分更新
2024年7月、重要インフラ向けIT/OTセキュリティベンダーのOPSWATが、東京に日本法人の新オフィスと「CIPラボ」を開設した。ここを拠点として、重要インフラ保護(CIP:Critical Infrastructure Protection)ソリューションの国内展開を一層強化していく構えだ。
また同日には、地方自治体(合計1718団体)におけるOPSWAT製品の利用率が50%を超えたことも発表している(※利用率にはOPSWATのエンジンを組み込んだパートナーソリューションを含む)。
今回来日した米OPSWAT創業者でCEOのベニー・ザーニー氏、OPSWAT Japan社長を務める髙松篤史氏に、日本の重要インフラ保護をめぐる現状や課題、日本市場における今後のOPSWATのビジネス展開を聞いた。
今後3年間でおよそ2倍の成長が目標、その成長要因は
――CIPラボの発表会では、重要インフラ分野の顧客社数がグローバルで1700社を超えたと紹介されました。そのスライドをよく見ると、2026年には「顧客社数3000社」という目標を掲げています。つまり“これから3年間で2倍近くまで成長する”計画ですが、そうした強い成長を牽引する要因(ドライバー)は何でしょうか。
ザーニー氏:いくつかの成長要因があると考えている。
まずはOPSWAT自身の組織強化、具体的にはセールス、マーケティングチームの強化だ。もともとOPSWATはエンジニアリング中心の会社であり、開発への投資を重視してきた。しかし現在は、グローバルに4名のセールス担当VPを配置するなど、セールスとマーケティングへの投資の強化、人員の増強を図っている。
2つめの要因は、各国において、重要インフラ保護に関するレギュレーションやガイドラインの整備が進んでいることだ。たとえば、重要インフラのOT環境におけるデータフローの制限(ITからOTへのデータ流入の禁止など)、取り扱うファイルの脅威除去や無害化処理といった対策が、各国政府によって義務化、あるいは推奨され始めている。OPSWATでは、インダストリアルファイアウォール、Deep CDR(コンテンツ脅威除去&再構築)といったソリューションで、こうした需要に応えられる。
3つめは、OPSWATのソリューションが“プラットフォームとしての統合力”を持っている点だ。OT向けのファイアウォール、無害化処理、アンチウイルスやサンドボックスなど、バラバラに(ポイントソリューションとして)提供できるメーカーは多くあるが、OPSWATならばそれらをすべて統合的に提供、サポートできる。
最後に、「OPSWAT Academy」という重要インフラセキュリティに携わる人材のトレーニングコースを提供していることも挙げておきたい。このトレーニングコースを受講して、認定資格を得た人材は、すでに30万人を超えている。
――最後のOPSWAT Academyですが、これまで一般的に提供されているセキュリティ人材トレーニングとの大きな違いはどこにありますか。
ザーニー氏:セキュリティトレーニング、セキュリティ認定資格は世の中に数多くあるが、重要インフラ保護、CIPにフォーカスしたトレーニングや認定資格はOPSWAT以外にはない。
CIPに携わる人材には、これまでのITセキュリティとは異なる知見も要求される。たとえば、PLC(産業機械の制御装置)を組み込んだOTネットワークのレイヤーごとの構成、インダストリアルファイアウォールを使ったエアギャップ環境など、そうしたことも理解している必要がある。一方で、もちろんITセキュリティの知見も必要であり、それらすべてを包括的なトレーニングを通じて知見を得てもらう必要がある。
――なるほど。ただ、日本ではIT分野のセキュリティ人材でさえ「人材不足」が叫ばれています。その中で、OTセキュリティの知見も持つ人材を育成、確保していくのは大変なことではないでしょうか。
ザーニー氏:そのとおりだ。その課題を緩和するために、OPSWATでは重要インフラ保護のハードルを低くするような取り組みも行っている。
まずOPSWAT Academyでは、ビデオを使ったオンライントレーニングなど、無料で受けられるコースを充実させている。まずは、セキュリティにあまり詳しくないという人でも受講できるように、ハードルを低くしているわけだ。
もうひとつは製品面での取り組みだ。製品の導入や運用を誰でも簡単にできるように、ユーザーインタフェースなどの工夫を行っている。たとえば、同じセキュリティ製品で「ITモード」「OTモード」のビューを切り替えられるようにしたり、稼働状態が正常か異常か、異常がある場合はどこに問題があるのかを一目でわかる「ニューラライザー」というシンプルな監視画面を備えたりしている。こうした製品面での取り組みも、ハードルを低くするうえでは重要だと考えている。