AWS Summitで紹介、全社体制のデータ活用を支えるプラットフォームとデータガバナンス
ANAグループ4万人が“データの民主化”を実現した「14の秘伝」
2024年07月08日 16時00分更新
データ活用の人財における秘伝:多様なコミュニティ展開と100時間を超えるデータ教育プログラム
ここからは人財とガバナンスにおける秘伝を紹介する。「仕組み(ここまで紹介したようなツール)については、コストはかかるが、ナレッジや事例が色々と公開されているため取り組みやすい。一方で、人財とガバナンスを通じた文化の醸成は、いくらやっても難しく感じる」(丸山氏)
秘伝9:多様なチャネルを駆使したコミュニティ
人財の秘伝のひとつ目は、コミュニティの形成だ。「BlueLake DataCircle」というデータコミュニティを設けており、その特徴は活動の多様さだという。
社内向けイベントをとっても、BlueLakeやBlueLake Appsの説明会から、「そもそもデータとは何か?」から入る初心者向けのイベント、データ活用に興味を持ってもらうための社外との交流イベントまで用意している。
丸山氏が「変わった取り組み」と紹介したのは、データに特化した社内報「ドリブン通信」だ。データ活用のポイントや社内のデータ活用事例を、ポータルサイトを通して定期配信している。
秘伝10:100時間を超える内製のデータ教育プログラム
コミュニティは、全社に向けた啓蒙と文化の醸成を担うが、データの専門家を育成するためのプログラムも内製で展開する。データサイエンティストとして活用するメンバーが講師を務めることで、業務を理解したデータ担当者を養成、プログラムは100時間を超えるという。
データ活用のガバナンスにおける秘伝:DMBOKをANA流に落とし込む
最後は、データ活用のガバナンスにおける秘伝だ。
秘伝11:ANAが着目した8つの項目
チームでガバナンスに着手した際には、データマネジメントの知識体系ガイドである「DMBOK」の輪読から始めたという。どうANAのガバナンスとして落とし込むか悩んだ末に、以下の8つに絞ってANAのデータガバナンスとして採用した。
1.データの民主化への方針
2.体制と役割
3.プライバシー保護とセキュリティ
4.データ活用ルールとSLA
5.データモデルとアーキテクチャー方針
6.データ品質管理
7.アカウントと権限管理
8.利用料および契約
秘伝12:ANAのデータスチュワードは2種類
データガバナンスにおける「体制と役割」では、データスチュワード(データの管理責任者)を定義している。ANAでは、データガバナンスおよびデータマネジメントの視点で開発運用を統制する「BlueLakeデータスチュワード」と、社内のデータ利用者より開発・活用案件を集約して、優先度などを決める「業務データスチュワード」の2種類を設けた。
定期的にデータスチュワードシップ会議を開き、両者でANAにおける“データのありたい姿”を模索しているという。
秘伝13:安全に価値を創出するためのルール
全社的にデータ活用する上で欠かせないのが、グループ横断でのルール作りだ。データガバナンスの「利用料および契約」において、データやツールの利用に関する規定や国内外の個人情報関連の法令への対応方針などを定めている。
システムやデータの利用料や契約面の設定までルール化しており、「契約や利用料の調整は非常に大変。しかし、グループ全体で、安全にデータから価値を生み出していく上では必要不可欠」と丸山氏。
秘伝14:BlueLake DataManagement
ここまでの秘伝を通じて説明された、仕組み・人財・ガバナンスの取り組みは、「まさにデータマネジメントで考えなければいけないこと」だと丸山氏。ANAでは、すべての秘伝を「BlueLake DataManagement」として体系的にまとめて文章化。これに沿って、データ基盤をデザインして、データの民主化のための土壌を整備しているという。
最後に丸山氏は、「本日話した秘伝は、データを民主化するための手段に過ぎず。データの民主化もまた、目的にはならない。デジタルとデータを活用したビジネス変革を通して、お客様の体験価値を向上させ、4万人の社員の働き方に変化をもたらし、そして企業の持続性とESGを両立した価値創造を推進していきたい」と語った。
この連載の記事
-
クラウド
食糧不足や医療危機などの社会課題に、今あるAIで立ち向かうテクノロジストたち -
ビジネス・開発
AWSのAIが実現する「JR東海のリニア新幹線」と「電通デジタルの次世代マーケティング」 -
ネットワーク
「1億台の常時接続」を実現せよ! Nintendo Switchのプッシュ通知システム全面刷新の裏側 -
ビジネス・開発
ゼネコン現場社員が3年でここまで開発、戸田建設の内製化は「外部頼みでいいのか」から始まった - この連載の一覧へ