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「AWS Summit Japan 2024」レポート

AWSの内製化支援と“サーバーレス 三種の神器”でここまでやれる

ゼネコン現場社員が3年でここまで開発、戸田建設の内製化は「外部頼みでいいのか」から始まった

2024年08月01日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、2024年6月、国内最大の年次イベントである「AWS Summit Japan」をハイブリッドで開催。150を超えるセッションが展開された。

 本記事では、戸田建設によるセッション「プログラムを書けないゼネコン社員が、3年でどこまでやれるのか ~戸田建設の技術的自立と現場力の向上~」をレポートする。登壇したのは、コーポレート本部 ICT 統轄部 DX推進室 室長の佐藤康樹氏だ。

 戸田建設が注力するのが内製化の推進による、現場力の強化だ。IT未経験の同社社員が、AWSの支援サービスや“三種の神器“と呼ぶサーバーレスの基本サービスを活用して、自らシステム開発ができるようになった背景が語られた。

戸田建設 コーポレート本部 ICT 統轄部 DX推進室 室長 佐藤康樹氏

最前線の社員が開発した、現場の課題を解決するプラットフォーム

 戸田建設が、DX推進課を新設して、内製化に注力し始めて約3年。その成果のひとつとして生まれたのが、業務効率化プラットフォーム「ToLabel(トラベル)」である。開発したのは、ヘルメットを被っていた現場社員、土木で積算を担当していた社員、構造設計を担当していた社員、現場事務をしていた社員の4名だ。

 2024年4月より、“2024年問題”と呼ばれる時間外労働の上限規制が始まった。対象となったのは、運送業、医師、そして建設業であり、戸田建設でも残業が常態化していたという。特に残業が多かったのが現場の事務業務であり、「デスクワークを細切れにしてアウトソースしたらよいのでは」という発想で生まれたのがToLabelである。

 同プラットフォームでは、外勤社員の抱える業務を、付箋(カード)を貼るような手軽さで外部委託できる。各依頼におけるファイル送付やチャットなどのコミュニケーションは、カードに紐づいて行われ、カレンダー形式でスケジュールを俯瞰することも可能だ。

「ToLabel」のサービス画面

依頼(カード)に紐づきファイルの送付やチャットができる

 管理者側のメニューも用意され、全国の現場の状況が把握でき、ダッシュボードで依頼や作業時間を分析することや、KPIを追うこともできる。分析結果をみると、運用1年で、現場から2万時間ほどの業務が委託され、依頼する社員は残業が多い20代・30代が中心。まさに同社の課題を解決したソリューションだといえよう。

ToLabelのダッシュボード

 ToLabelは、フルマネージドなサーバーレス構成で開発され、現在も月2回のペースでアップデートが続いているという。最前線の現場社員が、どうやって、ここまで作りこまれたシステムを開発できるようになったのだろうか。

ToLabelのアーキテクチャー

全部外部頼みでいいのか?危機感を持つ自身らでこそPoCを

 同社が内製化に注力し始めたのは、ユーザー企業としてテクノロジーとの向き合い方に疑問を抱いたからだ。

 佐藤氏は、ガートナージャパンのディスティングイッシュトバイスプレジデントである亦賀忠明氏の言葉を紹介。「ゴルフクラブを持っていても練習しなければ上達しない。要は、“ツールが使えるのか”ではなく、“あなたが使えるのか”が問われている」という言葉だ。佐藤氏自身もずっと「全部外部頼みでいいのか」と思い悩んでいたという。

ガートナージャパンの亦賀氏の言葉

 佐藤氏は、「今までと違う、新しいことに挑戦するには試行錯誤が必要」と強調する。当然上手くいかないことも多いが、試行錯誤の段階から“外部頼み”では、お金がいくらあっても足りない。加えて、コストをかけるほど失敗が許容されづらくなる。

 「建設のことも、デジタルのこともわかる人間が試行錯誤しなければいけない。業界の課題を肌で感じて、危機感を持っている人間が、PoCレベルまでできるようになることが一番良い」(佐藤氏)

 この肌感覚や危機感は、外部から雇うIT系の人間では持ちえないものだ。そこで同社が始めたのが、最前線の事業部門の社員をデジタル人材に変える「人財DX」である。

 佐藤氏は、ここまで人財DXに取り組んできた中で、必要だとわかった8つの要素を挙げた。

 最も重要なのは「(1)学習意欲」で、「これがないと話にならない。やれと言われてやるのではなく、いかにやりたいという社員を見つけるか」と佐藤氏。学習意欲がある社員に対しては「(2)没頭する時間」と、気持ちが折れてしまわないよう「(3)共に歩める同志」を与える。

 「(4)旬な教材」「(5)自由に使えるクラウド環境」「(6)頼れる教師」も欠かせないという。教材に関しては、そのつどネットで調べることもできるが、体系立てて学べるように、オンライン講座のUdemyや大学のリカレント教育のプログラムを利用した。

 そして、現場の社員は実データの価値を知っているので「(7)アプローチ可能な業務データ」を与える。そして、最後は「(8)実務的課題」。現場出身者であれば既に課題を抱えており、いきなり核心に迫るアプローチをとることができる。佐藤氏は「これらの要素が揃うと、人財は一気に成長する」と語る。

人財DXに必要な8つの要素

 また「頼れる教師」「実務的課題」においては、AWSおよびそのパートナーの支援も受けている。

 「内製化支援推進AWSパートナー」に技術支援を頼み、不明な点があればすぐ聞けるような体制を築いた。2021年には、実務的課題に対するアプローチを学ぶべく、AWSの内製化支援プログラムである「Angel Dojo」に参加。Amazon流の“顧客起点でのサービスデザイン”の考え方である「Working Backwards」を学びながら、プロトタイピングまで実践するといった内容で、「これが実にためになった」と佐藤氏。

 手ごたえを感じた同社は、翌年2022年には「デジタルイノベーションプログラム(DIP)」に参加。同様の支援プログラムを複数のチーム単位で受けられるもので、参加したチームのひとつが、上述したToLabelの開発に至っている。

 このように、実践的な取り組みを交えて学んでいくと「必然的に資格がバンバンとれる」(佐藤氏)という。現在、戸田建設のAWS認定資格者は、ASSOCIATE以上が19名、取得しているバッジの数も21に上る。

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