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「AWS Summit Japan 2024」レポート

AWS Summit Japan 2日目基調講演で語られた最新事例

AWSのAIが実現する「JR東海のリニア新幹線」と「電通デジタルの次世代マーケティング」

2024年06月25日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、2024年6月20日と21日、国内最大の年次イベントである「AWS Summit Japan」をハイブリッドで開催。150を超えるセッションが展開され、現地では250を超える展示が設けられた。

 2日目の基調講演では、米本社の生成AIおよびAI/MLマーケット戦略担当 バイスプレジデントであるラフール パサック氏より、来場したビルダー(開発者)に対して、同社の生成AIサービスの最新動向や活用事例などが披露された。

 同氏は「今こそビルダーになる絶好の機会。互換性部品やトランジスタ、インターネットなど、これまでも画期的な発明が世界を一変させてきた。(AI時代を迎え)ビルダーが作り上げたものが、様々な業界や世界を変え、多大な影響をもたらす発明になる可能性を秘めている」と来場者に呼びかけた。

Amazon Web Services 生成AI および AI/ML マーケット戦略担当 バイスプレジデント ラフール パサック氏

 ここからは、基調講演で披露された、JR東海のリニア実験線および電通デジタルの次世代マーケティングにおける、AI・機械学習(ML)の最新事例について紹介する。

JR東海:AWSのIoT・MLでリニアの保守業務を効率化、データドリブン運営を目指す

 JR東海が計画を進めるリニア中央新幹線は、東京-名古屋間を最速40分、東京-大阪間を最速67分で結ぶ、最高時速500キロの高速鉄道だ。

 ビデオ登壇したJR東海 中央新幹線推進本部 リニア開発本部長の寺井元昭氏は、「リニアによる圧倒的な時間短縮効果は、ビジネスやライフスタイルを大きく変え、日本社会のさらなる発展の可能性をもたらす」と説明する。

 このリニアの運転は、システムで自動化され、加速からブレーキまで遠隔制御される。さらに、運行に関するすべての情報はデータ化され、リアルタイムで監視される。そのため「多くのシステムが常に正確に連携することが、リニア運行の前提になる」と、リニア開発本部 副本部長である水津亨氏は説明する。

東海旅客鉄道(JR東海) 中央新幹線推進本部 リニア開発本部 副本部長の水津亨氏

 JR東海では、これらのデータを活かす「データドリブン運営」を目指しており、そのためには業務のあり方やシステムを根本から変革する必要があった。そこで大方針として、業務に精通するJR東海がシステムの全体設計から個別の機能設計まで内製化していくこと、過去のやり方に固執することなく継続して最新技術を採用していくことを決定した。

 「システムの進化にはクラウド技術の活用が必須。IoTや機械学習などの先進的なサービス、幅広いパートナーネットワーク、国内外の採用実績といった点で魅力を感じ、AWSの支援を受けて、リニア山梨実験線におけるPoCを進めている」(水津氏)

 このPoCによる成果の一部として、リニアの機械や電気設備におけるリアルタイムの状態監視、故障予知の取り組みについて紹介した。

 ひとつ目は、保守用車のIoT化だ。沿線の設備を検査する保守用車の状態を、「AWS IoT サービス」を活用してリアルタイムに監視する。蓄積したデータを分析して、故障の予兆検知や故障時の早期対応を実現しているという。

保守用車のIoT化

 2つ目は、機械学習による電気設備の異常検知だ。リニアは、線路沿いの地上コイルに電流を流すことで車両が走行する仕組みだが、コイルへの送電をオン・オフする際には動作音が発生する。この動作音をインプットデータとし、「Amazon SageMaker」を中心とした機械学習サービスを用いて、正常と異常を識別。重篤な故障に至る前に検知を可能にする成果が得られているという。

機械学習による電気設備の異常検知

 これらの取り組みで蓄積したノウハウを活かし、他の設備にも、IoT化や機械学習モデルの適用を広げていく予定だ。水津氏は、「私たちは、常に世の中の成長技術を取り入れるチャレンジを続けてきた。リニア中央新幹線への皆さまの期待に応えるべく、リニアをより良いものに作り上げるプロ集団として全力で邁進していく」と締めくくった。

AWSの伴走のもと、データドリブン運営を目指していく

電通デジタル:データと対話型AIの融合で実現する次世代マーケティング

 続いては、AWSの生成AIサービスを用いた電通デジタルの事例だ。

 電通デジタルは、「クリエイティブ×テクノロジー」を強みとして、成長伴走と変革支援を展開する総合デジタルファームである。基調講演では、同社のAIサービスブランドである「∞AI(ムゲンエーアイ)」の取り組みが語られた。

 ∞AIブランドにおいて、デジタル広告の制作プロセスを総合的にサポートするのが「∞AI Ads」だ。訴求軸の発見からCR(クリエイティブ)の作成、CRの効果予測や効果改善まで、すべての作業をAIの力で支援する。特にCRの効果予測は、従来のインプレッションやクリック数に基づくものとは異なり、100人の「AIペルソナ」の判断に基づくDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)指標を用いる。

 例えば、“マッチョな男性”を描いたフィットネスジムの広告に対して、Z世代・女性のAIペルソナから「表現の多様性が低いのではないか」というフィードバックが得られ、AWSの画像生成モデル「Titan Image Generator」が新たな広告画像を提案してくれる、といった流れだ。

∞AI Ads

100人のAIペルソナがCRを評価

 電通デジタルの執行役員 データ&AI部門長である山本覚氏は、「広告の制作プロセスが、自動化や効率化されるだけではなく、より人に優しい表現になる。これも、マーケティングの次世代化の方向性のひとつではないか」と説明する。

電通デジタル 執行役員 データ&AI部門長 山本覚氏

 一方、マーケティングを対話化するのが「∞AI Chat」だ。これは、企業の独自データを活用したチャットAIを作成できるツールである。「Amazon Bedrock」を通じて、Anthropicの「Claude 3」を含む多様なLLMを選択できるほか、対話精度を改善する「OpenSearch」などの技術も用いている。

∞AI Chat

 また電通デジタルでは、AWSのプロトタイピングプログラムを利用して、電通グループの独自データを活用したセールスDXソリューション「∞AI Chat for Sales」を2か月で開発したという。これは、ユーザーからのチャットでの問い合わせをAIが要約し、そのデータと電通グループが構築する生活者データを統合して、高品質なペルソナを生成。それを基にトークスクリプトを作り出すサービスだ。

∞AI Chat for Sales

 こうした対話型AIの活用は、今後、eコマースにも展開予定だ。商品やサービスに対するユーザーのレビュー作成を対話型AIが支援して、さらにレビュー内容を分析して商品情報、広告などに反映させるといった仕組みを開発中だという。

 山本氏は、「対話型AIによってリッチなデータを蓄積させて、それをメディアやセールス、広告などで、人が使えるものにしていく。これがマーケティングの本質的な次世代化ではないか」と語った。

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