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ユーザー企業とパートナーをワンチームに、内製化の“実践力と自信”が得られるワークショッププログラム

“日本に合った内製化”の第1歩、今年も始動した「AWS ANGEL Dojo」の意義

2024年08月21日 15時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 AWSジャパンのハッカソンプログラムである「AWS ANGEL Dojo」のキックオフイベントが2024年7月11日、目黒の同社オフィスで開催された。

 同プログラムの対象がユーザー企業にも拡大して、内製化のノウハウを学ぶ“道場”として展開されるようになって、今回で4回目。参加するのは、ユーザー企業12社とパートナー企業18社となり、各企業からAWS未経験者や若手社員が集まった。

 本記事では、キックオフイベントでの活動説明を通して、同プログラムの狙いや歩みを紹介する。

キックオフイベントの様子

日本の環境に合った内製化の浸透をパートナーと共に

 ANGEL Dojoは、ユーザー企業が内製化を推進する上での「どう取り組んでいいか分からない」「自社にIT人材がいない」といった悩みに応える、日本法人独自の取り組みである。元々はパートナーの若手エンジニア向けのハッカソンプログラムであったが、2021年からユーザー企業向けに拡大している。

 AWSジャパンの執行役員 パートナーアライアンス事業統括本部⻑である渡邉宗行氏は、「加速するビジネスの変化に追いつき、追い越すためには、ITの俊敏性を最大限に活かす必要がある。この俊敏性を確保するには、テクノロジーでは“クラウド”、方法論では“BizDevOps”、そして実装においては“内製化”が重要」と強調する。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 パートナーアライアンス事業統括本部⻑ 渡邉宗行氏

 一方で、日本のユーザー企業は他国と比べて特殊な環境に置かれている。IPAの「DX白書2023」によると、米国では“IT企業以外”のユーザー企業に所属するIT人材が「64.9%」(2021年の職業雇用統計)なのに対して、日本では「26.4%」(2020年国勢調査)と、ユーザー企業側のIT人材が不足する状況だ。渡邉氏は、「日本のユーザー企業は、システムインテグレーターからのエンドツーエンドのサポートを期待しているケースが多いのが事実」と述べたうえで「(Slerに頼ることは)システムの完全性や安定性においてメリットがある一方で、俊敏性には課題を残す」とする。

 こうした課題を解決するのが、スモールチームに全ての権限を委譲するBizDevOpsの考え方だ。ここでは「決して一社だけで取り組む必要はなく、パートナーの助けを得ることも問題ない」と渡邉氏。このBizDevOpsという“共通言語”でユーザー企業とやり取りができ、かつAWSの知見も備えたパートナーが、「内製化支援推進 AWS パートナー(以下、内製化支援パートナー)」である。

 内製化支援パートナーは日本独自のプログラムであり、開始当初は10社であったのが、今では38社にまで増え、2024年秋には更に拡大する予定だ。ANGEL Dojoは、この内製化支援パートナーの協力のもとで進められる。渡邉氏は、「米国とは異なる、“日本の環境に合った内製化”の答えが、パートナーとユーザー企業がワンチームになることであり、ANGEL Dojoである」と語る。

内製化支援推進 AWS パートナー

当初は物議をかもしたANGEL Dojo、参加企業は内製化を推進できているのか?

 ANGEL Dojoに参加するのは、内製化に取り組みたいユーザー企業と、内製化支援パートナーの若手社員だ。「ユーザー企業チーム」、「パートナー混合チーム」、「ユーザー・パートナー混合チーム」の3つの参加形式があり、各参加チームには、内製化支援パートナーからサポーターやメンターが付く。

ANGEL Dojoの位置づけ

 ANGEL Dojoの実施期間は、3ヶ月間。“実際に動くサービス”の開発を目指して、サービスのコンセプトを決める“企画フェーズ”の1か月と、サービスを動く状態へ持っていく“設計・開発フェーズ”の2か月に分かれる。

 その後、全てのチームがプレゼンテーションを披露して、そこで表彰された4チームが、頂上決戦として再度プレゼンをし、最優秀チームを決める。なお、10月25日に開催される今回の頂上決戦は、YouTubeでも配信予定だ。

 各チームは、プレゼンの披露まで毎週木・金曜日に終日、AWSから実践的なワークショップや講義を受けながら、チーム開発を進める。ワークショップの要となるのが、“Working Backwards”と呼ぶ、Amazon流のものづくりの考え方だ。顧客にアピールする価値が詰め込まれたプレスリリースの文章を、“サービスを作る前に”書くという顧客中心のサービスデザインであり、全てのチームが企画フェーズでWorking Backwardsを体験する。

Working Backwardsの考え方

 こうして、ユーザー企業は、内製化のための実践力と自信を身につけ、内製化支援パートナーの若手社員は、ユーザー企業の対話を通じて伴走する力をつけていく。「どうやって内製化できるかを、身をもって体験してもらいたい。そして会社に戻った際には、カルチャーの変革も含めた伝道師として、適用領域で内製化を進めてもらいたい」と渡邉氏。

 実際に戸田建設は、2021年のANGEL Dojo参加後に、内製化支援パートナーであるServerless Operationsの協力のもとに内製化を推進。現場の残業を減らすためのソリューションを、最前線の社員が開発している(参考記事:ゼネコン現場社員が3年でここまで開発、戸田建設の内製化は「外部頼みでいいのか」から始まった)。

 2023年の最優秀チームとなった食品トレー容器メーカーのエフピコは、ANGEL Dojoを通じて、営業日報の作成補助・分析アプリケーションを開発。日報分析にかかる時間を月700時間以上削減しているという。

 ANGEL Dojoの開始当初は、「『内製化』をパートナーに手伝ってもらうのか」と物議をかもしたという。一方、参加したユーザー企業からのフィードバックは好評で、今回参加のユーザー企業は過去最大の12社まで増えた。

2024年の参加チーム

 ANGEL Dojoは、パートナーやAWSの支援を受けられるが、あくまで参加者がとにかく手を動かし、沢山の失敗とチャレンジを通して、内製化を実践する機会だという。渡邉氏は参加企業に対して、「好奇心を持って、失敗を恐れず、どんどん新しいことに挑戦して、成果を生み出すことを期待している」と呼びかけた。

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