持っている周波数帯をすべて投入し、分散させるのが有効
ソフトバンク エリア建設本部九州ネットワーク技術部の津野和己氏と塚木健太郎氏によると、ドーム球場のような人が大量に集まる場所においては、とにかく持っている周波数帯をすべて投入し、できるだけ分散させることがトラフィック対策において最も有効だという。素人考えだと、基地局をたくさん設置すればいいように感じるが、それでは電波が干渉を起こしてしまい、性能がうまく発揮されない。トラフィックをうまく裁くには干渉を起こさないよう、パラメーターを調整しつつ、絶妙なバランスが求められるようだ。
彼らが最も緊張するのがシーズンの開幕戦なのだという。秋にシーズンが終了したのち、ユーザーによるスマホの使い方が変化していくが、実際にドーム球場でどれくらいのトラフィックが増えるのかは予想ができない。シーズンオフの間、対策を強化するものの、本当に効果を発揮するかはオープン戦ぐらいでなんとなくわかるものの、やはり「開幕戦」を乗り切れるかどうかが重要になるとのことだ。
ドーム球場の対策において、比較的、安定するようになったのが2020年ころからだという。5Gサービスが開始となり、新しい周波数帯を割り当てられたことで、トラフィックを裁きやすくなったとのことだ。ちなみに、この春にソフトバンクは3Gサービスを停波したが(石川県を除く)、ドーム球場においては特に影響はなかったとのことだ。そもそも、3Gはほとんどがケータイでの利用となっているため、トラフィックはほとんど流れていなかったというのが理由のようだ。
一方、世間的には「ミリ波」のアンテナをもっと増やしてほしいという声が大きく、総務省もミリ波端末の割引額を増やす施策を導入するなど、ミリ波のてこ入れが期待されている。
ただ実際、ドーム球場で取材してみると、スタンドでミリ波端末を持っていても、人が多く、人の影に入ってしまうとアンテナから電波を受信できなくなるなど相当シビアで、安定してミリ波を活用するというのはかなり困難だとわかった。現状、ミリ波対応端末も少ないことから、ドーム球場でミリ波が活躍するのはかなり先のことになりそうだ。
実際に4キャリアの回線を持ち込み、試合中に通信速度をチェックしてみたが、当然のことながらソフトバンクの回線が最も速く安定していた。ソフトバンクの地元なんだから当然といえば当然であり、特に褒める必要はないと思うが、ソフトバンクホークスファンが多い中、数十Mbps以上が出ていたのは立派といえそうだ(他社のなかには全くデータが流れてこないキャリアもあった)。
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