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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第287回

東京都の「マッチングアプリ」登録のハードルは高そうだ

2024年06月11日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 東京都が、結婚を考えている人たちを対象に、いわゆる出会いの場を提供するマッチングサービスを始めた。2024年6月8日の時点で、都のマッチングサイトは、都の交流イベントに参加した人などを対象に限定公開されており、2024年度中に本格的な運用を始めるという。

 日本最大の自治体である東京都が、マッチングサービスを始める背景は、深刻な少子化の進行だ。6月5日には、厚生労働省が出生や死亡、婚姻など人口に関する2023年の統計を発表している。東京都で1人の女性が一生のうちに産む子どもの数を示す合計特殊出生率は0.99で、全国の都道府県で最低だった。

 コロナ禍以降、世界的に物価が上昇し、東京のマンション価格が高騰するなど、東京で結婚して子どもを持ち、育てていくのは決して簡単なことではなくなっている。こうした状況を踏まえると、東京の合計特殊出生率の低下は当面の間さらに続く可能性がある。少子化に歯止めをかけようと東京都が打ち出した政策のひとつが、マッチングサービスだ。

年収証明書の提出が義務

 東京都のマッチングサービスをめぐって話題になったのは、身元確認の徹底ぶりだ。「TOKYOふたりSTORY AIマッチングシステム」のサイトに掲載されている利用規約を確認すると、登録には以下の書類の提出が求められる。

●独身証明書または戸籍抄本
●運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど写真付きの本人確認書類
●所得証明書または源泉徴収票
●写真2枚
●誓約書

 独身証明書は、端的に言って既婚者が紛れ込むのを防止することが狙いだろう。むしろ所得証明書が気になった。AIマッチングサービスを利用する以上、正確なデータが必要となるのは当然だろう。しかし参加者は「大手IT企業に勤めていて、こんなに年収があります」などとウソを言って自分を盛ることはできない仕組みでもある。登録フォームには、50万円刻みで年収を申告する欄もある。ウェブでの登録の後には、事務局の担当者とのオンライン面談まである。

見た目、条件よりも「価値観」を重視

 都のマッチングサービスでは、まず参加者どうしが「お見合い」をする。お見合いの段階では、SNSや電話番号などの連絡先は相手に知らせない。気に入らなければ、お見合いでストップさせてしまえばいい。相手は連絡先を知らないため、連絡したくても、システム上は連絡ができない仕組みになっている。

 お見合いでお互いが「いいな」と思ったら、「お友だち期間」に移行する。相手と連絡先を交換し、一緒に出かけたりするのだが、お友だち期間中は、他の人とお見合いもできる。その後、お互いが合意したときは事務局に伝え、「真剣交際」に移行し、他の人とのお見合いはできなくなる。

 都のAIマッチングシステムが重視するのは「価値観」だ。登録者は、あらかじめ価値観診断テストへの回答が求められる。自分の価値観と、相手に求める価値観を記入し、学歴や年収、趣味、仕事などのデータとともに、マッチングの際の参考データとする。このシステムでマッチングをすることで、「見た目や条件にとどまらない新たな出会い」が生まれるかもしれない、というのが都側の設計だ。

登録のハードルは高そう

 東京都のマッチングサービスの仕組みを詳しく確認すると、まず参加者の登録のハードルが高そうに見える。

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