丸の内LOVEWalker総編集長・玉置泰紀の「丸の内びとに会ってみた」 第14回
“好きな服”がある大人にこそ行ってほしい!丸の内ファッションの殿堂「ビームス ハウス 丸の内」の齊藤さんと森さんに会ってみた
丸の内LOVEWalker総編集長の玉置泰紀が、丸の内エリアのキーパーソンに丸の内という地への思い、今そこで実現しようとしていること、それらを通じて得た貴重なエピソードなどを聞いていく本連載。第14回は丸ビル、そして丸の内ファッションの殿堂である「ビームス ハウス 丸の内」のサービスマスター・齊藤浩樹氏と、サブショップマネージャー・森友美氏に、店のコンセプト、仕事内容ややりがいについてうかがった。
「ビームス ハウス 丸の内」って
どんなお店?
――「ビームス ハウス 丸の内」のコンセプトを教えてください
齊藤「まさに大人向けのお店ですね。ビームスにはそれまでも大人向けのレーベルはありましたが、丸の内って圧倒的に大人の街じゃないですか。世界でお仕事されている方たちに、本物を、僕らが本当にかっこいいと思うものをかっこよく伝えたいなと。
トレンドに飛びついてもらうんじゃなくて、自分のスタイルをすでに持っていらっしゃる方に『トレンドをちょっと楽しんでもらう』というエッセンスのご提案。そんなことをやっていきたいなっていうのがコンセプトです。
お客様にも分かりやすいように『ビームス ハウス』という屋号を立てて、空間自体も今までのカジュアルショップよりたっぷり広々とした空間にして、値段もちょっと高いものを多めにそろえています。オーダーサロンも設えて、それまでやっていなかったレンタルドレスサービスなどフォーマルのサービスも充実させ、街の需要に見合った商品構成に特化させています」
――森さんは、「ビームス ハウス」梅田店、神戸店、新宿店を経て、昨年丸の内に来られましたが、丸の内店の印象はいかがですか?
森「私は出身も初勤務地も大阪なので、入社1年目の2010年に、関西に初めて『ビームス ハウス』というスタイルのお店ができたときも、“大人のビームス”ができるって大騒ぎになったのを覚えています。その中核がこの丸の内なので、ウィメンズドレスのスタッフとしても一度は働いてみたい、憧れのお店でした」
――「ビームス ハウス 丸の内」は、2002年の丸ビルのリニューアルオープンと同時に誕生しました。丸ビルのリニューアル自体が、丸の内の再生プランの先駆けの1つで、三菱地所やリガーレ(NPO法人大丸有エリアマネジメント協会)などが、平日15時以降と土日は人通りがなくなる金融街を人が集まる街に変えようとしたんですよね
齊藤「開業前にリサーチに来た銀座店のスタッフが、やはり15時を過ぎると人通りがなくて、『あの街でどう商売していくんだ』みたいな話をしていました。当時は競合店のトゥモローランドさんだけがポツンとある状況だったし、人の流れを考えるとうちの店にもお客さんが来るのかなと心配していたんですが、蓋を開けたら驚くほどの集客で。あっという間にここがビームスの中でも大人向けショップのナンバーワンになりました。
僕はオープン3年目の2004年に配属されたんですが、当時も反響はまだまだ大きかったですね。買い物をするお客様だけでなく、観光客の方というか、新しく変わった丸の内を見に来られる方がどんどん店内に入ってきて、店内中央の通路の向こう側に渡れないぐらい混雑していました。オープン当初は入口にコンシェルジュ的な人に立ってもらって、お客様を案内していたそうですよ」
開店以来ほぼ変わらない
洗練されたレイアウト
――「ビームス ハウス 丸の内」は丸ビルの1つのイメージを担っていると思いますが、店づくりやレイアウトについてのこだわりは?
森「ぜいたくな広さで、圧倒的な商品量があるというのが特徴ですが、お店のつくりはすごく分かりやすいと思います。お店の入口側はカジュアルなものがあって、奥に行くとスーツなどピシッとしたものが並んでいるので」
齊藤「区画ごとに区切りがあって、お客様が通りすがりにパッと見ても、ここはカジュアル、ここからドレスだなと変化を自然に感じていただけるような空間づくり、見せ方をしています。実はこのレイアウトは2002年のオープンから20年以上ほとんど変わっていないんです」
――今でも全然古く感じないし、最初から完成形を作り上げた。すごいことですね
意外と多いファミリー層。
今後は新展開もあり!?
――現在の客層はどんな感じですか。年齢層は幅広い?
森「女性だとマダム層の方が多くて、年齢を重ねてもおしゃれを楽しんでいきたいというお客様や、時間に余裕のある方が、お休みの日にゆっくりお買い物をしに来られるという印象がありますね。ご家族でいらして大学生のお子さんの洋服を一緒に選んだりされる方もいらっしゃいますし、店舗向かいのマルキューブでクリスマスなどいろいろなイベントが開催されているので、季節やイベント期間によって来られる方の層も変わります」
齊藤「意外とファミリーが多いんですよ。たぶん10年ぐらい前だと思いますが、ベビーカーを押しながら来店される方の数が増え始めて。それまではむしろ年配のご夫婦の方などが目立っていて、若い方、特にお子さん連れはいない印象だったのに。歩きやすい街だからですかね」
――今後はお子さん向けの展開も考えていらっしゃる? ファミリー層に受ける可能性はありますよね
齊藤「ビームスのレーべルとしてはありますが、丸の内ではやっていないんですよ。実は僕、丸の内でもヒットする可能性はあるなと思って何度か声を上げているんです。2階などのほかのフロアでもいいよねって。
お子さん連れの方はもちろん働いていらっしゃる方にもご家庭がありますし、実はものすごく需要があるんじゃないかと思っています。お子さんに何を買おうかなってときに、忙しくてほかに見に行けなかったりする方がほとんどだから、そういうときに身近なところで良いものを選べたらいいなと」
接客ひと筋20年
サービスマスターという仕事
――齊藤さんが担当されているサービスマスターとは、どんなお仕事ですか
齊藤「20年前から変わらず、接客と販売です。店頭に立ってお客様をお迎えして、商品をご紹介して気に入ったものを買っていただけるようにアドバイスする仕事ですね。男性スタッフはメンズのコーナー、女性スタッフはほとんどウィメンズコーナーにいます。
丸の内での特徴でいえば、お得意様がアポイントをとってご来店される場合は、その方のお好みに合わせたスーツなどをオーダーサロンにズラッと並べて、完全提案をします。売り場をご覧になっていただく場合もありますが、基本的にはこちらでご提案したものから選んでいただいています」
――丸の内で20年接客マスターとしてお仕事をしてきた齊藤さんが、最も大切にしていることは?
齊藤「サービスはお客様次第なんですよね。こういうやり方が一番いいということはないんです。たとえば、お店に入ってきたときに足早な方は、急いでいるから的確な商品をすぐに用意し、選んでいただけるようご提案をする。逆にゆっくり見たい感じの方には、どんどん試していただいて構いませんよという対応をする。そんなふうにお客様が醸し出す空気を感じての接客を心がけています。
また、今はすごくサイクルの速い市場で、使い捨てじゃないですけど、どんどん新しいものを、みたいな風潮がありますよね。特に僕らのようなセレクトショップでは、それが正しいという感覚に捉えられることが多いんですけど、トレンドの鮮度もその方のスタイルがベースにあってこそ生きる。だから服や持ち物を全部新しくすればかっこいいかというと、そうではない。人それぞれのかっこよさを引き立てるお手伝いをするのが一番楽しいですし、やりがいを感じますね」
居心地のよい環境を整え、愛されるスタッフを育てる
サブショップマネージャーの仕事
――森さんのサブショップマネージャーというお仕事について教えてください
森「私は、ウィメンズのサブショップマネージャーとVMD(Visual Merchandising/ビジュアルマーチャンダイジング)業務を主にやっています。
サブショップマネージャーは、働きやすい環境を整える、お客様に居心地がいいと思っていただけるお店を作る仕事です。個性を活かしつつ、お客様から“また会いたい”と思っていただけるようなスタッフを育てることが目標です。
VMD業務は、店内のレイアウトを作る仕事です。先ほど全体のレイアウトについてもお話ししましたが、丸の内はビームスの中でも面積が広く品ぞろえもすごく多いので、お客様が選びやすいようにということや、カジュアルとドレスのテイストを分けてということを意識しています。
また丸の内は上質なもの、シンプルでベーシックな洋服を美しく着こなすというスタイルのお客様が多いので、そういうことも大切にしています。マネキンに着せ付けるときも、『お客様にこういうファッションで丸の内を歩いてもらえたらな』と思ってコーディネートしています」
それぞれの「好き」を大切に
自由な社風が新しい発想を生む
――ホームページなどで新商品の情報発信を熱心にされていますが、それは意識して行っているんですか?
齊藤「スタッフが自発的にやっているんですよ。教えられて、ではなくて。商品が“好き”なスタッフがすごく多いのでね」
――まさに“好き”が伝わってきます。自由な社風なのでしょうか
齊藤「コロナのタイミングもあって、そういう活動は積極的にと、社としても後押ししているところもあります。もちろんある程度のルールはありますが、情報発信はお客様のためにやっていることですし、あまりルールで縛ってしまうと新しいアイディアも出てこなくなってしまう。だからそこは結構自由にやってもらっています」
――ブログでの情報発信も、お客さん、とくにビームスファンとのコミュニケーションの一つですね
齊藤「情報発信の仕方も時代とともに変わってきています。以前は雑誌など紙媒体だったものが、ネットでいろいろ検索して予約してから足を運ぶという流れになっているので、今やっている情報発信は的を射ているという手応えをしっかりと感じています」
この夏おすすめの
丸の内ファッションはコレ!
――せっかくの機会なので、この夏おすすめの丸の内ファッションをご提案いただけますか
齊藤「この夏は、ペールトーンのような柔らかい色合いのアイテムを取り入れていただいたスタイリングがおすすめです。一見派手なジャケットを取り入れていますが、グレーストライプのシャツやグレーのニットを合わせ、上品で落ち着いた雰囲気にしております。丸の内の綺麗な街並みに馴染む大人なスタイリングです」
森「ウィメンズでは、爽やかなサックスブルーのワンピースをおすすめします。コットン素材で涼しく着られ、美しいシルエットが特徴です。丸の内の街並みをイメージして、小物はきれいめなものを選びました。ゴールドやパールのアクセサリーで上品さと華やかさをプラス、パンプスのパテントのツヤ感もポイントです」
――どちらも上品で涼しげなコーディネートで、丸の内の街にぴったりですね!
丸の内の印象と
この街で働く意義とは
――齊藤さんは約20年、森さんは1年というお付き合いの丸の内ですが、この街の印象をお聞かせください
森「大阪から出てきた私にとっては、憧れの街です。お洒落な大人の街だし、美術館も好きなので。丸の内仲通りから東京駅を見ると、自分がここで働いていることが信じられないぐらい特別な場所だと感じています」
――丸の内グルメも楽しんでいますか
森「ランチは丸ビルや新丸ビルのお店でいただくことが多いんですが、仲通りのお店のテラスで食事をしたときは、ぜいたくな気分に浸って『あぁ、もう仕事に戻りたくないな』と思ったこともあります(笑)」
――齊藤さんはいかがですか
齊藤「本当に居心地がいいというか、大人の街だなと感じますね。誠実な方が多いからなのか、“あ・うん”の呼吸で街の秩序が保たれているというか。街はきれいだし、信号がないところでも車がきちんと停まるんです。“ルールがあるからそうしている”というのではなくて、皆さんが自然とそういうことができる“いい街”だと思います。
また最近だと、どこに行ってもスマホを見て下を向いている人が多いですが、丸の内には顔を上げて歩いている人が多い、ゆとりがあるという印象がありますね」
――改めて、丸の内で働く意義やその思いを聞かせてください
森「丸の内にお勤めの方だけでなく、関東近郊から、北海道や沖縄など遠方からもさまざまなお客様がいらっしゃいます。最近はインバウンドのお客様も多いですし、丸の内で働いているからこそ、出会えるお客様がすごく多いんです。その出会いの面白さを、ここに来てからいちばんダイレクトに感じているので、せっかくお店に来ていただいたら、どんな小さなことでもお気軽に声をかけていただき、ご相談いただけたらうれしいですね。自分に似合うコーディネートをしてほしいなんて言われたら、スタッフ全員張り切っちゃいますよ」
齊藤「ここで働いていて、“いいな”と思うのは、お客様からの情報や生のリアクションをいただけることですね。ここでは圧倒的にスーツが売れ筋なので、丸の内のお客様に向けた商品をデザインしたり、ご提案をさせていただいたり。お客様からも、『ビームスはこういう提案をしているけど、実際に着ていたらこうだよ』などとフィードバックをいただいて、こちらもまた新たなご提案をさせていただく。お客様とのそういうコミュニケーションは、とてもやりがいがありますし、ここで働く醍醐味ですね」
「ビームス ハウス 丸の内」は、世界を股にかけるビジネスパーソンが働く、丸の内という街を象徴するファッションの殿堂だ。トレンドをいち早くつかみながらも、それに流されるのでも押し付けるのでもなく、その人のスタイルや生き方に合わせた鮮度の高い着こなしのエッセンスを提案する。スタッフそれぞれの“好き”があふれる自由な職場だからこそ、お客さんの“好き”も大切にできるのではないだろうか。
ぜひ一度、目利きのスタッフに、自分の魅力やスタイルをランクアップさせてくれるファッションを見立てていただいてはいかがだろうか。
森友美(もり・ともみ)●2009年12月「ビームス 阿倍野」にアルバイト勤務。2012年9月に社員登用、2013年3月「ビームス ハウス 梅田」に、2014年9月「ビームス ハウス 神戸」に異動。2020年3月「デミルクス ビームス 新宿」へ異動し、2023年3月より「ビームス ハウス 丸の内」サブショップマネージャーに就任、現在に至る
齊藤浩樹(さいとう・ひろき)●1996年9月 販売代行店である「ビームス 福岡」入社。 2004年8月、株式会社ビームスへ転職。「ビームス ハウス 丸の内」配属。2006年、サービスマスター制度が発足した半年後よりサービスマスターに就任。2015年「ビームス 銀座」へ異動し、2017年より「ビームス ハウス 丸の内」で勤務中
聞き手=玉置泰紀(たまき・やすのり)●1961年生まれ、大阪府出身。株式会社角川アスキー総合研究所・戦略推進室。丸の内LOVEWalker総編集長。国際大学GLOCOM客員研究員。一般社団法人メタ観光推進機構理事。京都市埋蔵文化財研究所理事。大阪府日本万国博覧会記念公園運営審議会会長代行。産経新聞~福武書店~角川4誌編集長
6月28日(金)~7月15日(月)の期間中、〈EFFE BEAMS〉にて〈EMMETI〉のオーダーイベントを開催。詳しくはお知らせページをチェック。(https://www.beams.co.jp/news/3131/)
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