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高い冷却効率と低遅延なIOWN APN ハイパースケーラーから熱視線

NTT Comが稼働中の液冷サーバー初公開 高発熱なGPUサーバーのコロケーションも可能に

2024年05月28日 10時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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 NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、神奈川県川崎市の Nexcenter Lab.において、稼働状態にある液冷サーバーを初めて公開した。生成AIブームで需要がうなぎ登りとなっているGPUサーバーを効率的に冷却できる液冷サーバー。同社では、検証の成果をもとに、国内初となる液冷方式サーバーに対応した超省エネ型コロケーションサービス「Green Nexcenter」を提供する。

液浸方式の実験も披露。サーバーは直接冷却液に浸される

空冷のデータセンターに比べ、消費電力は約30%削減

 NTT Comが展開するGreen Nexcenterは、液冷方式を採用することで、GPUを活用した生成AIなどの高発熱サーバーに対応。高い冷却効果を実現しながらも、国内最高レベルのPUE1.15を実現しているのが特徴だ。空冷方式のデータセンターに比べて、消費電力は約30%の削減が可能になる。1ラックあたり最大80kWの冷却が可能であり、約10倍の冷却性能を実現。さらに再生可能エネルギーの利用により、CO2排出量ゼロも可能になるという。

Green Nexcenterの特徴

 NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部クラウド&ネットワークサービス部第二サービス部門長の松林修氏は、「生成AIなどの利用によって、サーバーの電力消費量の増加や、高発熱化は大きな課題になっている。進化するGPU搭載サーバーは、既存の冷却方法では限界があることがわかっており、インフラ戦略の見直しが求められているほか、GPUクラウドサービスの利用額が上昇し、自らGPUサーバーを持ちたいというオンプレ回帰の動きもある。また、電気料金の高騰により省エネに対する要望が高まっている。Green Nexcenterによって、生成AIの広がりとともに生まれた新たな問題を解決できる」とする。

NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部クラウド&ネットワークサービス部第二サービス部門長 松林修氏

 さらに、2024年3月から提供を開始したIOWN APNサービスを組み合わせて、企業や研究所、工場などと、大容量、低遅延、低消費電力による接続を実現するほか、NTT Comが持つ国内70拠点以上のデータセンターともAPN専用線で接続でき、サービス品質の向上やビジネスの信頼性向上、環境負荷低減といった価値を提供できるとしている。

 想定する主な用途として、最新GPUを業務の高度化に活用したいと考えている企業、遠隔医療や自動運転、映像伝送など低遅延通信を必須とする事業者、効率性に優れた冷却方式の採用や、100%再生可能エネルギーを利用したい企業などを挙げている。

「GPUを用いたEDA(Electronic Design Automation)を活用することで、これまでにできなかった高精度の製品設計ができるようになったり、IOWN APNを活用することで低遅延通信を必須とするビジネスのエリアを拡大できたり、RE100に取り組み、インフラの観点からもサステナビリティ経営への貢献を期待している企業を対象にしていく。高発熱サーバーをデータセンターに設置したいというニーズは高く、いまから強い引き合いがある」という。

GPUを用いたEDA

 なかでも、外資系ハイパースケーラーからの関心が高く、米国を中心に液冷サーバーの活用が進展している現状を捉え、日本でも同様の動きが加速すると想定。松林氏は、「IOWN APNによる低遅延ネットワークに対する評価も高く、そこに加えて、高発熱サーバーへの対応といった新たな価値を提供できる。また、国内企業に比べて、PUEに対する関心も高く、その点でもGreen Nexcenterはメリットを提供できる。ハイパースケーラーからの期待が集まっていることを強く感じる」と述べた。

3カ所のGreen Nexcenter データセンター間通信はIOWN APNで

 Green Nexcenterは、3カ所での稼働が計画されている。2025年3月から、神奈川県横浜市の横浜第1データセンター、大阪府茨木市の大阪第7データセンターで、2026年3月には、京都府相楽郡の京阪奈データセンターで、それぞれ液冷サーバーを利用したGreen Nexcenterを稼働させる。

Green Nexcenterのロードマップ

 神奈川県横浜市の横浜第1データセンターは、既設の設備を1部屋リノベーションし、液冷サーバーを稼働。ステップ1として、2025年3月から0.3MWの規模でサービスを開始し、旺盛な首都圏でのニーズに対応する。同データセンターにおけるGreen Nexcenterの機能は、順次拡張する予定だ。

 大阪府茨木市の大阪第7データセンターも、2025年3月から稼働する。液冷サーバーに標準対応した棟を増改築し、1.8MWの規模で稼働させる。「関西エリアには、製造や製薬に関する企業が多く、AI活用のニーズが高まると考えており、順次拡張することになる」という。

 京都府相楽郡の京阪奈データセンターは、2026年3月に稼働予定であり、現在、液冷サーバーに標準対応したデータセンターを新たに建設しているところである。新棟での稼働となり、3MWの規模を予定している。

 これらのデータセンター間もIOWN APNで接続することになる。

 今後のGreen Nexcenter化については、具体的なに計画は公表していないが、冷却設備の耐荷重の問題などがあるため、既存データセンターのすべてを液冷サーバー対応にすることは難しい。そのため、顧客の需要や最適な場所を選定しながら、今後、新たに開設するデータセンターを中心に、液冷サーバーを前提とした設計を行なうことになりそうだ。

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