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ベータマックスからPS5まで! ソニー製品栄枯盛衰物語 第35回

ケータイとウォークマン合体させようぜ! 尖りすぎていたソニーのケータイ戦略

2024年05月29日 12時00分更新

文● 君国泰将 編集● ASCII

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ソニーといえばやっぱりウォークマン!
同じ持ち運ぶならケータイとくっつけちゃえ!

 ソニーはポータブルオーディオプレーヤーは「WALKMAN」、テレビは「BRAVIA」、カメラは「Cyber-shot」といった具合に、カテゴリーごとにサブブランドがあります。このあたりはソニーを好む人たちにとっては当たり前のように認知されていて、結構強い吸引力というか、呪縛のようなものを持っています。

SONY

 今から20年も前の2000年中頃は、まだスマートフォンが登場する一歩手前のタイミングで、オーディオプレーヤーにしてもテレビにしてもカメラにしても、それぞれ専用機を使うのが当たり前の時代を引きずっていました。

 ケータイ電話にしてみても、カメラを撮ったり音楽を聴いたりできるとはいえ、本家の専用機とは明らかに性能差があるのは当たり前で、それは別物だよねと割り切れるくらいには両者が共存できる平和な時代でした。とはいえ、日進月歩で進化していくケータイに対する期待はどんどんと高まっていくのも必然の流れ。「こんなケータイがあればいいのに……」の代表格が、本気で音楽を楽しめるケータイの存在でした。

覚えてる? 国内初のウォークマンケータイ「W42S」

 そして、ケータイとオーディオプレーヤーが融合した“ウォークマンケータイ”が日本で初めて登場したのは、2006年にauから発売された、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの「W42S」です。厳密には、海外ではSony Ericssonが先にWALKMANブランドのケータイを出しちゃったので、あくまでも国内初になります。

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W42S

 もちろん、それまでケータイで音楽が聴けなかったわけではなく、メモリースティックが入る「C404(DIVA)」や「SO502iWM」はすでに2000年代初頭には登場していたし、音楽最強ケータイを銘打った「W31S」では、「着うたフル」やFMラジオ、CDの楽曲を聴けるといった機能など備えていたので、正直そんなに珍しいものでもありませんでした。

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C404(DIVA)

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W31S

 それでもウォークマンという名前を冠しただけに、ソニーの意地みたいなものを感じます。専用の3Dサラウンドスピーカーを備えており、新開発の音楽専用チップとして“Mobile Music Enhamcer”を搭載したことで、ケータイ電話では難しい約30時間の連続音楽再生が可能でした。音楽専用として1GBのメモリーを内蔵したおかげで、最大で約630曲(1曲あたり1.5MBの場合)の保存ができるうえ、別売のメモリースティックPRO Duoを挿入すると4GBまで拡張できるため、遠慮なく楽曲データを持ち出せます。

 W42Sは、本体の数字キーの下にある音楽コントローラー「ミュージックシャトルキー」が秀逸で、円形のダイヤルを押すと再生、左右にまわすと早送り・巻き戻しという操作が非常に便利でした。音楽プレーヤーの「シャトルプレイヤー」にある、楽曲に合わせて変化するビジュアライザーは、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズのサイトからダウンロードして追加もできました。

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W42S

 本体を付属するクレードルに乗せると、USBで接続したパソコンにインストールされている音楽転送ソフト「au Music Port」が自動的に起動して音楽転送といった使い方もできます。もちろんソニーの音楽管理ソフト「SonicStage CP」を利用して音楽(ATRAC3形式)を転送することもできます。

 ちょうどこの頃は、auは「着うた」「着うたフル」「LISMO」と、続々新しい音楽サービスを投入したタイミングでもあって、音楽に特化したウォークマンケータイとの相性がとても良かったのでしょう。

ソニーのオーディオテクノロジーが
ふんだんに投入された「W52S」

 その1年後の2007年に発売された2代目のウォークマンケータイ「W52S」は、前モデルと比べてひとまわり大きく、重くなったものの、機能はさらに強化。ディスプレーは2.7型(240×432ドット)へとサイズアップして解像度も上がり、カメラは有効200万画素カメラにオートフォーカスを備えて、外部メモリーはメモリースティックマイクロに加えて、microSDカードにも対応するといった機能の向上、そしてキモとなるオーディオ機能はさらに進化しました。

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W52S

 「ミュージックキー」は、本体サイド面に配置が変わったことで操作のしやすさはもちろんのこと、いつでも音楽が操作できるようになってより実用的に。原音を忠実に再現する、クリアな音質を目指したソニーの高音質技術「クリアオーディオテクノロジー」を採用したり、ソニー製のステレオイヤホンを同梱するなど、今までのケータイにはない音楽重視の機能が魅力的でした。

 内蔵メモリーは前モデルの2倍、2GBへとアップしただけでなく、楽曲データの保存先としてmicroSDカードや本体内のATRACフォルダーが選べるようになりました。ほかにも、音楽の連続再生時間がW42Sの約4倍である110時間になったり、FMトランスミッターを内蔵して音声をカーステレオに転送して聴くといった使い勝手の良さもアップしました。

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W52S

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W52S

 若干面倒なのは、着うたフルとATRAC形式の楽曲データのどちらも聞きたい場合には「au Music Port」と「SonicStage」の2つのPCソフトを使い分けないといけないということ。細かい事を言えば、ATRAC形式の曲データを本体メモリーにも保存できるようになったのは良かったものの、ATRAC形式の曲データをプレイリストに登録できないといった仕様もあって、ソニーファンとしては痒いところに手が届かなもどかしさのようなものもありました。

小型化して今にも通じる技術を搭載した
「Walkman Phone, Xmini」

 2008年もauのウォークマンケータイ戦略は続きます。けれど、従来の2モデルはすべてを詰め込んだハイエンドモデルという立ち位置だったのに対して、「Walkman Phone, Xmini」は一転して超コンパクトなボディーに機能はオーディオだけに特化するという割り切り。カメラもワンセグもおサイフケータイもGPSもありません。

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Walkman Phone, Xmini

 かつてのドコモ「Premini」を思い出させるコンパクトサイズで、その見た目にはオーディオプレーヤーそのもの。小さいにもかかわらずディスプレーをスライドさせて、物理キーが現れるギミックもありました。ディスプレーは、約1.8型(240×400ドット)という小ささで、その真下にタッチセンサーを備えていて、閉じたままでもメニューを操作したり音楽をコントロールできるといった使い方ができます。

 auの新サービスとして、320kbpsの高ビットレートのAAC形式で配信される「着うたフルプラス」にも対応。内蔵メモリは4GBの容量のうち、データ用として約3.5GBが利用できるので、たくさんの楽曲が保存できます。ただし、この小ささゆえに外部メモリースロットは備えずバッサリと割り切られています。

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Walkman Phone, Xmini

 音楽に特化した機能として、クリアステレオ、クリアベースに加えて、高音域補間技術「DSEE」といったソニーならではの高音質化技術を採用していたり、ソニー製のインナーイヤータイプのイヤホンが同梱されているなど、ウォークマンケータイとしてのこだわりに抜かりはありませんでした。

 また、従来モデルには搭載されていなかったBluetoothを備えているので、ワイヤレスのヘッドセットやスピーカーとも組み合わせて使える自由さがありました。カラバリについても定番のブラック以外に、グリーン×ブルー、パープル×ピンク、ホワイト×ターコイズといった、ビビットなカラーを積極的に採用しているあたり、デザインやコンパクトなスタイルを重視する“若者”へ向けた端末でした。

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Walkman Phone, Xmini

 こうしたソニーの専用機が持つ機能をケータイに融合されると、ファンとしては嬉々として買ってしまうというか罠にハマりがちです。もちろんこれだけにとどまらず、サイバーショットケータイもブラビアケータイも出てきて、面白いことになっていた楽しい時代でした。

■関連サイト

筆者紹介───君国泰将

ソニー(とガンダム)をこよなく愛し、ソニーに生きる男・君国泰将氏

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