タブを使って表示を切り替えるアプリは
Windowsの歴史では比較的“最近”登場した
ウェブブラウザなど、タブを使って複数の表示を切り替えるタイプのアプリケーションは、Windowsでは“最近”登場したものだ。初期のWindowsから2010年あたりまでは、複数のウィンドウを開くアプリケーションは、MDI(Multiple Document Interface)と呼ばれるWindows標準のスタイルが使われていた。
これは、親ウィンドウの中で複数の子ウィンドウが開くものだった。画面解像度が低く、メモリ容量も少ない時代には、MDIはそれなりにメリットがあったのだ。しかし、ハードウェア性能が向上するにつれ、画面解像度も上がり、マルチディスプレイも可能になった。さらには多数のウィンドウを表示してもシステムが耐えられるようになった。
こうして、MDIではなくSDI(Single Document Interface、文書ごとにウィンドウを開く)のアプリケーションが増えてきた。Excelも以前からMDIとSDIの切り替えが可能だったが、2013あたりでSDIが標準になったと記憶している。こうした背景を持つため、現在でもExcelなどは、複数ウィンドウを表示していても、アプリケーションのプロセスとしては1つになっている(設定により個別プロセスでの起動も可能)。
個別にウィンドウを開くことが可能になると、こんどはウィンドウが多すぎて見失うことも多くなった。そこで普及し始めたのが、タブ(TDI、Tabbed Document Interface)だ。1992年のBorlandのQuatro Pro for Windowsは、複数のワークシートをタブで切り替えて扱えるようになっていた。ExcelもVer.5.0(1993年)からタブを導入した。しかし、この時点では、タブはMDIのウィンドウの中にあった。タブの導入により、ワークシートを個別にウィンドウで開かなくてもよくなった。
IE7やChromeなどのウェブブラウザがタブ操作を共通化
一方、ウェブブラウザは、2000年頃からSDIアプリケーションでタブを導入し、ウィンドウが多数になることを抑制した。表計算アプリケーションのタブは、1つの文書ファイルを複数のワークシートに分割しているだけだったが、ウェブブラウザのタブは、異なる独立したページをタブで表示している。
初期には「タブブラウザ」などと呼んで、SDIのブラウザと区別していたが、現在ではほとんどのブラウザがTDIになった。現在のタブアプリケーションの祖先はこのタブブラウザと言えるだろう。
マイクロソフトのInternet Explorer 7にタブが導入された2006年あたりから、タブを操作するためのキーボードショートカットが整備され始めた。現在の多くのウェブブラウザは、ほぼ共通のタブ用キーボードショートカットを持つ。そのいくつかは、Windowsの標準キーボードショートカットとしても紹介されている。しかし、タブを持っていてもExcelなどのアプリケーションは、異なる経過を辿ったため、キーボードショートカットも異なっている。
2000年以降に登場した新しいタブアプリケーションでは“操作”も共通化された。タブをドラッグしてのウィンドウ内での移動が可能で、他のウィンドウにドロップすることでタブを移動でき、ウィンドウ外にドロップすれば新規ウィンドウにタブが表示される。基本的な部分を押さえておけば、タブアプリケーションの操作に困らないはずだ。
ウェブブラウザを始め、エクスプローラーやメモ帳などの
タブ操作について今回調べた
本記事ではWindowsで使えるウェブブラウザ3つ(Chrome、Edge、Firefox)とエクスプローラー、メモ帳、そしてターミナル(Windows Terminal)の6つのアプリケーションで、タブ操作について調べた。
基本的なキーボードショートカットは共通で、ブラウザ3つは操作もほぼ共通、エクスプローラーは、最後に登場したためか“未実装”の機能が多い。
実際にWindows 11 Ver.24H2のプレビュー版BetaチャンネルのBuild 22635.3570から、タブメニューに「Duplicate tab」(タブの複製)が搭載されている。このことから考えると、タブ機能の実装は、まだ途上なのであろう。なお、この機能自体の配布は段階的なので、すべてのWindows Insider Program参加者で有効なわけではないことに注意してほしい。
メモ帳は同一ファイルをウィンドウ内の複数タブで開くことはできないが、別ウィンドウでは開くことができる。ただし、メモ帳として同一ファイルをアクセスしていることは認識していないので、最後に保存した内容が有効になる。そのためにタブを複製させないようにしているのだと考えられる。
メモ帳のキーボード割り当てはブラウザに準ずるが、なぜか、「Ctrl+N」と「Ctrl+T」が新規タブ作成で、新規ウィンドウを開くキーボードショートカットが「Ctrl+Shift+N」になっている。
続いてターミナルは、相手がシェルのプロセスであるため、動作が少し異なる。プロセスであるため、同じシェルを起動できても、過去のコマンド実行によるプロセスの状態まではコピーすることができない。
このため、タブの複製や閉じたタブを開くといったものに関しては異なる動作となる。また、ターミナルはキー割り当てを変更することが可能であり、キーが割り当てられていない機能も多数ある。キー割り当ての変更で、ブラウザなどとキーボードショートカットを同じにすることも可能だ。
しかし、ターミナルの場合、シェルやエディタで使うキーボードショートカットもあり迂闊に割り当てができない。たとえば、新規タブで使われる「Ctrl+T」は、Emacsでは2つの文字を入れ替えるキーストロークとして使われている。
キーボードショートカット以外に、標準的なWindowsのTDIとしては、タブのコンテキストメニュー(右クリックメニュー)やタブのドラッグ&ドロップなどがある。タブの位置を入れ替える、他のウィンドウに移動させる、新規ウィンドウでタブを開く、といった動作は、タブのドラッグ&ドロップで可能。ドロップ先が同一ウィンドウ内のタブバーであれば、位置の変更、他のウィンドウならば移動、ウィンドウ外ならば新規ウィンドウでタブを開くといった動作はほぼ共通だ。
また、タブ上での右クリックメニュー(コンテキストメニュー)の項目も3つのブラウザは基本的な内容が似ている。他のタブをすべて閉じる、右側のタブをすべて閉じるといった操作や、タブのドラッグ&ドロップでできる操作などが含まれている。
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