AIは音楽クリエイターの楽器やセッション仲間にもなれる
グーグルは今年の開発者会議でMusic AI Sandboxのほかにも、テキストプロンプトからフルHD品質のムービーを生成する「Veo」や、同じくテキストプロンプトから静止画をつくる最新の「Imagen 3」など、様々なタイプのコンテンツ生成AIを発表しました。これらが「クリエイティブ・コミュニティとの密接な協力により開発されているもので、生成AIをクリエイティブ・プロセスの支援に役立てることが目的」なのだとグーグルは伝えています。
ワイクリフ・ジョンがムービーの中で実演しながら示したように、クリエイターがMusic AI Sandboxを上手に使いこなせば、AIはアーティストの新しい「楽器」になったり、一緒に音楽を演奏する「ミュージシャン」にも成り得るでしょう。一方では人間顔負けのテクニックで音楽を完璧に演奏したり、作曲・編曲を素速くこなすAIがクリエイターの尊厳を脅かし、著作権を侵害する危険性についても注意深く目を向ける必要があります。
グーグルではAIが生成した画像、音声、テキスト、ビデオなどのコンテンツファイルに独自の電子透かしを埋め込む「SynthID」というツールの開発にも注力しています。動画生成ツールの「VideoFX」に実装されるVeoには、生成するすべてのビデオにSynthIDが組み込まれます。
クリエーションに関わるプロフェッショナルの「常識」や「暗黙のルール」の上に、電子透かしのテクノロジーが加わることによってフェアで安全なコンテンツ生成AIの利用が促進されるのでしょうか。Music AI Sandboxをはじめ、グーグルによるツールは今後もより多くのクリエイターから注目を集めることになりそうです。
筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。