1000万に迫る国内の暗号資産口座数 近い将来に決済手段となるか
「TEAMZ WEB3/AI SUMMIT 2024」セッションレポート
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ステーブルコイン解禁でデジタル通貨、決済サービスはどう変わるか?
パネルディスカッション「ステーブルコイン、デジタル通貨、将来のpaymentはどのようになるのか」には、『Web3: Charting the Internet’s Next Economic and Cultural Frontier』(ハーパーコリンズ刊)の著者であるAlex Tapscott氏、一般社団法人 日本暗号資産取引業協会(JBVEA)会長 小田 玄紀氏、SBI VCトレード株式会社 近藤 智彦氏、Tianyu Yang氏の4名が登壇し、Yang氏が進行役を務めた。日本のステーブルコイン(法定通貨を担保に裏付けする暗号資産)の発行と流通へ向けた業界動向、今後の市場拡大への課題について意見を交わした。
最初のトピックは、「2024年、ステーブルコインの日本の現状と展望について」
2023年6月に改正資金決済法が施行され、日本でもステーブルコインの発行ができるようになった。小田氏によると、2024年6月頃から実際に発行され、流通が始まる見込みという。発行できるのは銀行、資金移動業者、信託銀行の3事業者のみ。電子決済等取扱業者(電取業)は、電子決済手段としてステーブルコインを扱えるが、1回の移転上限額が100万円と制限されている。
民間での流通へ向けた取り組みとして、近藤氏が説明。SBIホールディングスは、米Circle Internet Financialと提携し、USD Coin(USDC)の取り扱いを2023年11月に発表している。海外発行ステーブルコインはすでに流通しているのがメリットだが、100万円の制限があるため、法人決済などには不向きだ。SBIグループには、暗号資産取引業であるSBI VCトレード、銀行、信託銀行があり、今回の提携は、将来の独自コインの発行を見越した布石と言えそうだ。現在は、電取業の登録手続きを進め、流通に向けて推進している状況だそう。
Tapscott氏によると、USDTやUSDCなど米国のステーブルコイン流通総量は約1500億~1600億ドル規模に成長している。もともと暗号通貨は、国や銀行に管理されず、自由に流通できる通貨として開発されたが、ステーブルコインの場合、政府の方針は大きく影響する。米政府は、米ドル通貨の国外流出を防ぐためにステーブルコインの発行と流通を促進しており、中東では国内通貨の代わりに米ドルのステーブルコインが多く使われているという。
2つ目のトピックは、「将来のPaymentについて」。
近藤氏は、「国内発行のステーブルコインの場合、これから使える場所を開拓する必要になる。我々はUSDCを選択したので、すぐに使える場所が多数あるのが強み」と話す。SBI VCトレードの扱うUSDCの用途としては、海外ECなど取引決済が主流となると予想しているそうだ。
小田氏も日本国内でのステーブルコインの利用はあまりイメージしていないという。「日本国内で普及するには、Payサービスのように、ポイントがたまるなどの付加価値を付ける必要がある」と話す。一方で、「ビットコインなどの暗号資産も2016年は4万円台だったのが、今は1000万円(2024年4月時点)に迫ろうとしており、日本国内の暗号資産口座数は950万口座(2024年2月時点)を超えるほどに発展している。ステーブルコインも現段階で我々が考えてもいないような使われ方をして発展していくのでは」と期待を寄せる。
Tapscott氏は、「決済サービスだけでなく、あらゆる業界でパブリックブロックチェーンやトークンが使われるようになるだろう」と話す。また、ステーブルコインによる決済が拡大すると伝統的な銀行のビジネスモデルを揺るがす恐れがあることから、ステーブルコインのリスクを管理するため、米国議会では決済ステーブルコイン法案が議論されていることにも言及した。
最後のトピックは、「Web3業界での課題、それをどのように解決していくべきか」。
小田氏が課題として挙げたのは税金。「1000万口座は大変なこと。税制改正の実現に向けて取り組んでいきたい」と語った。
近藤氏は、「この3月は過去最高の口座開設数となったが、まだ暗号通貨への認知は低い。多くの人にステーブルコインに興味を持ってもらえるように、新しい用途を広げていければ」とコメント。
Tapscott氏は「一言でいうと政策(policy)。新しい技術が生まれたときはルールを再考し、適切な規制を定めるのは必要なこと。今回の滞在中には日本の有識者と話をして日本の方針と狙いを理解したい。今は金融サービスの転換期であり、世界中のどの国にもイノベーションの中心になれるチャンスはまだある」と語った。
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