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Box AIで“インテリジェンスを加速させる”第3章へ、市場に対応した営業組織改編なども

Boxが新年度戦略を説明、世界売上の21%を占める日本の高成長維持へ

2024年04月22日 16時15分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Box Japanは2024年4月17日、2024年2月からスタートした同社新年度(2025年度)事業方針の記者説明会を開催した。Box Japan 社長の古市克典氏は「日本では、製品、市場、組織の3つの観点で注力する。日本での高い成長を維持していく」と述べた。

Box Japanの新年度の注力ポイントを3つの観点で説明した

(左から)Box Japan代表取締役社長の古市克典氏、米Box SVP兼最高製品責任者(CPO)のディエゴ・デュガキン氏、Box Japan専務執行役員の佐藤範之氏

世界売上の21%を日本が占める、高成長の要因を説明

 古市氏はまず昨年度(2024年度、2024年2月~2024年1月)の取り組みを振り返った。2024年度の日本におけるビジネスは「引き続き好調」であり、全世界のBoxビジネスにおける日本市場の売上構成比は「前年度(2023年度)の19%から21%に上昇した」と報告した。TAV(Total Account Value、年間契約金額)も「右肩上がりで、ぐいぐい伸びている」(古市氏)。

 Boxは日本単独の売上高を公表していないが、2024年度の全世界売上高は10億3800万ドル(前年度比5%増)であり、ここから逆算すると日本の売上高は約2180万ドルとなる。同様に、2023年度の売上高は1883万ドルと推定されるため、2024年度の日本の売上高は「前年度比16%増」という高い伸びになったことがわかる。

 「私が知る限り、外資系IT企業において日本の売上構成比が20%に達しているケースはない。しかも円安の環境下であり、円高に振れればさらに比率が高まる。これは、Boxにおいて日本のお客様の存在が大きいということだ。そのため、日本のお客様が何を求めているのかということに対して(Boxは)敏感に反応している」(古市氏)

Boxのグローバル売上高推移。日本の売上構成比は21%に達した

 日本での高成長を支えている要因は、ARR(年間新規受注高)におけるアップセルの比率が7~8割と高い点、そして最上位プランの「Box Enterprise Plus」の販売が急成長している点だという。Box Enterprise Plusには、Boxで最もよく利用される製品/サービスがすべて含まれており、エンタープライズレベルのセキュリティ対策も可能になると、古市氏は説明する。

 「とくに、高度な脅威検知とインテリジェントなアクセス制御によってデータの損失を防止する『Box Shield』に対する評価が高く、これが日本でBox Enterprise Plusが好調な理由になっている。ランサムウェア対策に困っている企業からの評価も高い。また、追加料金なしで『Box AI』が利用できる点も評価されている。多くのお客様に満足してもらっている」(古市氏)

 さらに「Box Consultingサービス」の受注が好調なことも、日本での高い成長要因のひとつにあげる。

 「Box Consultingサービスは、2021年度からグッと伸びている。もともとは購入企業に対する導入支援を中心に、チェンジマネジメントやBox Transform、Platformアプリ開発支援などを通じて、定着化や活用高度化、ビジネスプロセスの高度化といった観点からの長期的サポートを提供していた。日本では、受注前の活用ケースの開拓に多くの力を注ぐとともに、文書管理コンサルティングも提供している。ポストセールスだけでなく、プレセールスにおいてもBox Consultingサービスが高い成果をあげている」(古市氏)

導入支援だけでなく、受注前から導入後の長期支援までをカバー

新年度の戦略は? 製品/市場/組織の3つの観点から

 今年度(2025年度、2023年2月~2024年1月)の事業戦略については、「製品」「市場」「組織」という3つの観点から説明した。

 ひとつめの「製品」では、インテリジェンスを加速させて「Box AI元年」として事業拡大に取り組む考えを示した。

 古市氏は、Box AIによって「Boxは2023年度からインテリジェンスを加速させる“第3章”に入った」と語る。現在は、単一のドキュメントをベースにAI活用を行う「Box AI for Document」に加えて、複数のファイルに対応した「Box AI in Hubs」も製品化している。今後は、Boxに格納されたすべてのデータに容量無制限で対応する方針も打ち出している。

 「だが、大量にデータを抱えると“ノイズ”も大きくなる。必要情報だけを抽出してノイズを排除し、複数ドキュメントにAIを活用するほうが有効だと考えている。これにより、ハルシネーションを極力起こさないようにできる」(古市氏)

「インテリジェンス加速」を目指してAI活用ポートフォリオを構築している

 2つめの「市場」では、「セグメントごとの注力および連携」「金融、公共、地方の強化」「社会貢献」の3点に取り組む。今年度からは、6つのセグメント別営業体制(大企業、中堅企業、中小企業、地方企業、金融、公共)を軸に、プレセールスやポストセールスの関連部署(マーケティング、事業提携、リード生成、コンサルティング、チャネルなど)との緊密な連携を進めるという。

 「従来からセグメントごとの営業体制を敷いていたが、大企業が中心となっていた。中堅企業や中小企業、地方企業、金融、公共にも注力したいと考えている。だが、これらの領域では、営業体制の強化だけでなく、マーケティングの強化が必要であり、業界に精通したチャネルパートナーとの連携も必要になる」(古市氏)

6つのセグメント営業組織とプレ/ポストセールス関連部署が密に連携してビジネスを進める

 また社会貢献においては、大阪・関西万博の運営参加サプライヤーとして参画したり、能登半島地震災害に対する災害支援プログラムを無償で提供したりといった取り組みを紹介した。「日本社会の成長なくして、Boxの成長なしと考えている」(古市氏)。

 3つめの「組織」については、「いいとこ取りの追求」と「働きがいの向上」の2点を挙げた。「いいとこ取り」とは、迅速な意思決定やフラットな上下関係、ダイバーシティといったシリコンバレー企業としての特徴と、横連携を促すレポートライン、専門分野にたけたチャネルパートナー、リストラのない経営といった日本企業としての特徴の双方を生かすことを指している。

 「働きがい」については、社員が“Be an Owner”の意識(会社に対する当事者意識)を持ち、働きがいがあり、働きやすい会社を目指すとする。ちなみにBox Japanは、2024年度版の「働きがいのある会社」に初めて参加し、3位にランクされている。

「Box Enterprise Plus」導入の国内4社事例を紹介

 Box Japan 専務執行役員の佐藤範之氏は、国内におけるBox導入事例として、前述したBox Enterprise Plusを導入した4社の事例を紹介した。

 現在、国内では1万7000社以上がBoxを導入しているが、なかでも日経225企業の73%が利用するなど、製造、流通サービス、メディア、建設、金融、官公庁などの幅広い業種で大規模な導入が相次いでいるという。昨年度の新規大規模導入企業として、日本郵政、パーソルホールディングス、AGC、NTTコミュニケーションズ、大東建託などがある。

 Box Enterprise Plusを導入した産業技術総合研究所では、2300人の研究員が、社外の4000人とコミュニケーションを行っており、Boxの活用によってコンテンツ管理基盤の一元化とセキュリティ強化を実現したという。

 農林中央金庫では、国内外の6000人の社員が利用するシステムで“データのサイロ化”という課題に直面。コンテンツ管理基盤としてBoxを導入するとともに、さまざまなシステムと連携するコンテンツハブとしての活用を進めている。Box Consultingサービスを大規模に導入して難易度の高いセキュリティ要件を迅速に実現した事例でもあり、今後はBox AIの活用も積極化するという。

 パーソルは、5万人の社員の働き方の高度化にBoxを採用。コンテンツ管理基盤として導入し、容量無制限で利用できるため、ストレージコストを削減できたり、個人情報を扱うための情報セキュリティに優れたりしている点などを評価したという。

 マックスでは、海外拠点ごとにサイロ化していた基幹システムやコミュニケーション基盤を刷新。7部門200人がPoCに参加して、Boxの採用を決定したという。グローバルレベルでの知の一元管理のほか、人材獲得競争においても優位性を発揮できる環境が整ったという。

 佐藤氏は、これらの導入企業が共通して評価している点として「容量無制限で利用できるコストメリット」「コンテンツをサイロ化しない一元管理」「ワールドクラスのセキュリティ機能」を挙げた。さらに、サービスレイヤー機能の活用による蓄積コンテンツ活用の自動化、生成AIとの連携なども評価されているという。「日本のお客様の要望をしっかりと吸い上げて、製品に実装できるようにしたい」とまとめた。

「ワークフローの自動化とインテリジェンス」を推進

 米Box SVP兼最高製品責任者(CPO)のディエゴ・デュガキン氏は、Boxが提供する最新の機能群について紹介した。

 「コンテンツの共有」からスタートしたBoxだが、その後に「コンテンツの管理と安全確保」へと歩を進め、現在は「ワークフローの自動化とインテリジェンス」の段階に至っているという。

 「コンテンツのメタデータを活用するとともに、ダッシュボードを通じてワークロードを理解し、ローコード/ノーコードでアプリケーションが開発できるようになる」「世界で最も先進的なコンテンツクラウドを実現する」(デュガキン氏)

現在のBoxが目指すのは「ワークフローの自動化とインテリジェンス」

 ここでは、それを実現する新たな機能/サービス群を紹介した。効率性が高いレビューの実現とともに、承認プロセスを自動化する「Box Relay」、ドキュメントを送信して署名を依頼する「Box Sign」、ドキュメントをダイナミックに生成する「Box Doc Gen」、ビジネスプロセスを構築するノーコードアプリビルダーである「Crooze」、ドキュメントビジネスプロセスを容易に開始できる「Box Forms」、コンテンツとプロセスを自動で拡充する「Box AI for Metadata」などだ。

ワークフロー自動化に向けたさまざまなツールに投資

 また、デジタルに関して組織が直面する課題として、「業務のデジタル化と自動化」「AI導入による企業のスピード向上」「最重要データの保護」の3点を挙げた。

 Box AIについては、Boxが独自に開発するLLM(大規模言語モデル)だけでなく、IBMのwatsonx、Open AIのGPT-4、Microsoft Copilot、GoogleのGeminiといった他社の最新LLMも利用可能であることを強調した。「中立性と柔軟性を大切にし、AIの能力を最大限に活用できる世界を実現したい」(デュガキン氏)。

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