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生成AIにより重要性が高まるデータマネジメント

Box AIのベータ版、11月より提供開始 ― 生成AI活用を促す一元管理のアプローチ

2023年11月13日 11時45分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 あらゆる企業が業務効率化において生成AIの活用を模索している中、AIでより良い成果を出すためには、参照元となるデータの扱いが重要になる。Boxは、企業内の非構造データ=コンテンツの管理に注力してサービスを展開しており、コンテンツをセキュアに管理し、コラボレーションを促進するこれまでの取り組みを、生成AIの活用に繋げていくという。

 本記事では、2023年11月2日にBoxがジョーシス、クラウドネイティブと開催した「ジョーシストーーク#12 出張版!」のセッションを基に、Boxの提供するAI機能の詳細や、生成AI活用におけるデータマネジメントの課題について紹介する。

コンテンツ活用の各フェイズで活躍するBox AI

 Boxは、2023年5月にBoxにシームレスに生成AIを組み込んだAI機能群「Box AI」を発表、2023年11月より順次ベータ版の機能を提供開始している。Box AIは、文章やプレゼンテーションといったコンテンツの活用における各フェイズにおいて生成AIがサポートする。

 まず、コンテンツの要約・理解のフェイズにおいては「Box AI for Documents」が役に立つ。Boxのプレビュー画面からBox AIに指示することで、対象ドキュメントの要約や、ドキュメントの内容に関する質問を返してくれる。

 Box AIが、対象のドキュメントにアクセス権限があるか確認、指示に該当する箇所を抽出し、プロンプトを最適化する情報を追加して生成AIに投げ、生成AIが回答を返すという流れで実現する。

プレビュー画面上部のBox AIボタンからBox AI for Documentsに指示をする

Box AI for Documentsの仕組み

 コンテンツの作成は「Box AI for Notes」が支援する。Box Notesは、Box上で利用できるドキュメント作成ツールで、Boxにログインしながらのメモ取りや、複数人でのリアルタイムな議事録編集などに利用される。Box NotesにBox AIが追加されることで、AIが概要の下書きやアジェンダを作成したり、チームに加わったかのようにアイディア出しをすることで、コンテンツ作成の手間を省くことができる。

Box Notes内でのコンテンツ作成を支援するBox AI for Notes

 コンテンツの検索を中心に、Box AIによるコンテンツ活用の中核的な役目を果たすのが「Box Hubs with AI」だ。Box Hubsは、組織内や外部パートナー向けに、Box内のコンテンツを集約したポータルを作成できる機能で、2024年に提供予定。ノーコードで作成が可能で、ファイルを移動する必要なく、Box内のコンテンツを容易に整理・公開できる。社員や外部パートナーは、Box Hubギャラリーから自身のアクセス権限に合わせたコンテンツのみにアクセスできる。

 Box Hubs with AIは、Box AIがBox Hubs内のコンテンツを参照して、検索や要約、作成を支援する。特徴的なのは、Box Bubsのアクセス権限のあるコンテンツのみを対象として指示に応えることだ。

2024年に提供予定のコンテンツを集約したポータルBox Hubs

Box Hubs with AIはアクセス権限内のコンテンツから指示に応える

 Box AI for DocumentsとBox AI for Notesは、BoxのEnterprise Plusユーザー向けに2023年11月よりベータ版の提供が開始されている(ユーザーあたり月20クエリ、企業レベルで2000クエリまで)。Box Hubs with AIは、2024年のベータ版の提供を予定している。ちなみにこれらのサービスは、OpenAIのAIモデルが利用されているが、Google Cloudの「Vertex AI」を利用したメタデータ抽出機能の提供を予定するなど、AIモデルは使い分けていく方針だ。

データマネジメントの先にある生成AIの活用

 セミナーでは、生成AI活用におけるデータマネジメントの課題についても触れられた。

 生成AIによる業務効率化や情報共有でよくある、Azure OpenAI Serviceを活用して、Azure Cognitive Serviceが横断検索して社内のコンテンツを取得するといった構成では、組織が所有するコンテンツが外部サービスも含めてあちこちに散らばっており、“検索ノイズ”が発生しやすいという。

 「情報がバラバラになっているからこそ、生成AIに探しにいかせたいという発想が元にある。無造作にまとめても、似たようなコンテンツが列挙され、すぐに活用できない」と、Box Japanのプロダクト&パートナーマーケティング部 エバンジェリストである浅見顕祐氏はその問題点を説明する。

Box Japan プロダクト&パートナーマーケティング部 エバンジェリスト 浅見顕祐氏

 一方でBoxは、生成AIの登場前からコンテンツを一元管理するアプローチでサービスを展開してきた。豊富なコネクターで他のクラウドサービスのデータを集約し、コンテンツを中心したコラボレーションの推進により複数のコンテンツやバージョンが乱立することもなく、そもそもがBoxに行けば情報が見つかるという環境を用意してきた。

 今後登場するBox Hubs with AIにより、Box内に集約したコンテンツを基に、よりノイズが少ない生成AIの活用を推進できるという。

横断検索の生成AI活用は検索ノイズが発生しやすい

 また生成AIの活用における重大な問題として、“アクセス権限”がある。生成AIと連携するクローラー型の検索エンジンは、生成AIにコンテンツを投げる前に横断的にデータのインデックスを作成する必要があり、権限に合わせたユーザー単位でのインデックス作成は難易度が高い。結果、秘匿された情報を含む回答が返ってくることがあり、“セキュア”な生成AIの活用ができない。

 Box Hubs with AIでは、上述の通りアクセス権限に沿ったコンテンツを対象に参照するため、狭くて深いコンテンツ活用を可能にする。

横断検索の生成AI活用はアクセス制限の配慮が難しい

 とはいえ、Box AIにもできないことがあり、データベースのデータやインターネット上の情報などは対象としていない。横断検索型の生成AI活用とBox AIのよいとこ取りとして、生成AIがFunction callingでBox APIを呼び出し、Boxからアクセス権限の情報をもらって回答を最適化するといったハイブリッド構成をとる選択肢もある。

横断検索と一元管理のハイブリッド構成

 「Box AIでBoxが目指す世界は、コンテンツが散在して探す手間がかかり、理解に至るまで要していた時間を、一元管理のアプローチで短縮すること」と浅井氏は強調する。今後生成AIの活用が進むにつれて、Boxをはじめとするデータマネジメント、コンテンツマネージメントに注力してきたベンダーの存在感が増してくるだろう。

※注:本稿掲載後、Boxより機能名の修正が行われた旨の連絡があったため、以下のとおり本文の修正を行いました。(2023年11月13日 21:30 編集部)
Documents with AI → Box AI for Documents、Box Notes with AI → Box AI for Notes

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