最新パーツ性能チェック 第439回
第14世代のSpecial Editionはクセ強め?
暴れ馬すぎる「Core i9-14900KS」、今すぐ使いたい人向けの設定を検証!
2024年03月15日 00時00分更新
Core i9-13900KSとほぼ同じ設定だが
ブーストクロックが増加
検証に使用したASUS製マザーボードに搭載されている機能でSP値(Silicon Prediction)をチェックしたところ、受領したCore i9-14900KSは102ポイントだった。SP値には個体差があることは承知の上だが、6.2GHz動作のために特別に出来の良い個体をCore i9-14900KS用にとっておいた、という説はない気がする
Core i9-14900KSの仕様は1世代前のCore i9-13900KSに近い。即ちPBP(Processor Base Power)はCore i9-14900Kの125Wに対し150Wに増量されている。また、Core i9-14900KSのPコアは最大6.2GHz(TVB発動時)出せるよう設定されている。Eコアのブーストクロックも引き上げられているがこちらは4.5GHz止まりだ。それ以外の要素、即ちキャッシュ周りやメモリーの仕様、内蔵GPU等は変更されていない。
まずは今回の検証環境を紹介しておきたい。マザーボードのBIOSはKなしモデルのパフォーマンス向上が盛り込まれた最新バージョン(2002)を使用している。BIOSはデフォルト設定でスタートしているが、前述の通り安定動作していない。Resizable BARやSecure Boot、Windows HD Color等はこれまでの検証と同様に有効化しているが、メモリー整合性は今回はオフにして検証している(理由は後述)。
| 【検証環境】 | |
|---|---|
| CPU | インテル「Core i9-14900KS」 (24コア/32スレッド、最大6.2GHz) インテル「Core i9-14900K」 (24コア/32スレッド、最大6GHz) インテル「Core i9-13900KS」 (24コア/32スレッド、最大6GHz) |
| CPUクーラー | NZXT「Kraken Elite 360」 (AIO水冷、360mmラジエーター) |
| マザーボード | ASUS「ROG MAXIMUS Z790 HERO」 (Intel Z790、BIOS 2002) |
| メモリー | Micron「CP2K16G56C46U5」 (16GB×2、DDR5-5600動作) |
| ビデオカード | NVIDIA「GeForce RTX 4080 Founders Edition」 |
| ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」 (2TB M.2 SSD、PCIe 5.0、システム用) |
| 電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum) |
| OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(23H2) |
Core i9-14900KSを動かすには特別なBIOSは必要としない。第14世代が動くBIOSであれば問題なくブートするだろう。だが前述の通り、2024年3月上旬時点における最新BIOS、即ち“KなしSKUにおけるパフォーマンス向上”が可能なBIOSを使っていても、不具合が発生した。無論BIOSのデフォルトでは「CINEBENCH 2024」のマルチコアテスト(10分モード)すらも完走しない。さらに、頻度は低いがアイドル状態でフリーズが発生することもある。以上の点から不具合はCPU占有率と関連しているとは考えにくい。負荷が瞬間的に上がり、それに適応しようとブーストをかけた際、何かが追従できずに不具合が出る、という印象を受けた。
以下は筆者がCore i9-14900KSでCINEBENCH 2024を完走できるような条件は何かと探っていた時のメモである。安定性向上BIOSがない状態であるため、見当違いのところを突いている可能性も十分にあるし、個体によって突くべき設定が違う可能性もある。
①LLCのレベルを上げる
CINEBENCH 2024で落ちる瞬間はシーンのレンダリングをしている最中というよりも、シーンのレンダリングが終了した後に多発する。またアイドル時にもフリーズするという点から、何らかの処理が発生した時の電圧変動についていけないのでは? という点が疑われる。
そこでLLC(CPU Load-line Calibration)が悪さをしている可能性がある。ASUS製マザーボードの場合、自動(Auto)のほか、レベル1〜8までの設定があり、高レベルにするほど電圧変動が抑制される。ASUS製マザーボードではOC用としてレベル4を推奨(BIOS内表記による)している。LLCのレベルを上げれば解決するかと思ったが、レベル6や8にしてもCINEBENCH 2024テストで不具合が出た。
②Performance Power Delivery Profile(PPP)を利用する
Core i9-14900Kレビュー(https://ascii.jp/elem/000/004/163/4163402/)では、消費電力の非常に大きいCore i9-14900Kにおいて、消費電力とパフォーマンスのバランスをとる(とインテルが謳っている)「Performance Power Delivery Profile」、略して“PPP”を使用して検証した。
無制限運用時よりも若干性能は下がるが、CPUの消費電力は劇的に下がる(無制限時よりも約100W低下)。これをCore i9-14900KSにも応用してみたらどうだろう。PL1/PL2を253W、ICCMax(Core Current Limit)を307Aに設定したが、CINEBENCH 2024のマルチコアテスト10分完走には至らなかった。単純な電力制限の問題ではないと考えられる。
ICCMaxを307Aに、PL1/PL2を253Wにするとインテルが言うところのPerformance Power Delivery Profileとなるが、この設定でもCINEBENCH 2024では完走することなくブルースクリーンが出た
③CPU温度を90℃制限にする
Core i9-14900KSの限界である6.2GHzまでブーストさせようと頑張り続けるから落ちる、という仮説を立てれば、もっと強烈な抑制をかけてみるというのはごく自然なアプローチだ。ASUS製マザーボードの場合「ASUS Multicore Enhancement」設定を「Auto」ないし「Enabled」にすれば、いわゆるMTP(Maximum Turbo Power)無制限状態での運用となる。
筆者がインテル製CPUを検証する場合、近年この設定を使用している。もちろんASUS Multicore Enhancementを「Disabled」にしてPBPやMTPの設定を“CPUの定格通りに”すれば不具合なくCINEBENCH 2024も完走するのは確認できたが、わざわざCore i9-14900KSを買うのに厳密な定格運用はナンセンスだ。
ASUS Multicore Enhancementの設定:AutoないしEnabledにすればCPUの定格を無視してMTP無制限で回すようになる。一方、Disabledにすれば安定性は確実に取れるが性能は激しく落ちる。ならば最後の選択は一番下の「Enalbed - Remove All limits (90℃)」となる
そこで第3の選択肢である“CPU温度を90℃を超えない限りにおいてMTP無制限運用”という設定が浮上する。これを使用することで期待通りCINEBENCH 2024が完走するようになったが、それでも低確率でフリーズやブルースクリーンに落ちる。そこでLLCをレベル6に設定したところCINEBENCH 2024は完走し、その他の不具合も“ほぼ改善”できた(100%でないのが腹立たしいが)。これならCINEBENCH 2024でいきなりCPUパッケージ温度が100℃に到達するわけでもなく、360mmAIO水冷の運用には好適だ。

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